【特別企画】デザインと性能を両立
スピーカーも完全ワイヤレス時代、しかも驚きの音質。KEF「LSX」の値付けは安すぎる!
音質調整機能はアプリから操作できるのだが、「ベーシックモード」と「エキスパートモード」という2つの機能に分かれている。
ベーシックモードでは、最初にスタンド設置(On a Stand)/デスクトップ(On a Desk)という2つから設置モードを選択。スタンド設置では壁からの距離・部屋の響き・部屋の広さ、デスクトップ設置では、テーブルの前端からの視聴者までの距離・部屋の響き・部屋の広さを指定できる。
このパラメーター変更による音質向上効果はかなり強力だ。低域以外の要素の調整も行っているようで、スピーカーの物理的な位置を綿密に調整してやっと得られるような音が簡単に出せてしまう。もはやこういう時代なのだ。たいへん実用的な機能である。なお現在のところ、KEF Control Appは日本語表記に対応していないので、ここはアップデートに期待したい。
■話題のroonに対応したRoon Ready対応機
LSXは、話題の音楽再生ソフト「Roon」にもRoon Readyとして対応する。Roonは、「音楽を再生する作法」と「音楽を知る作法」を融合した、今注目のソリューションが利用可能だ。
iPadからRoonのアプリを立ち上げ、クラシックの交響曲、アンドリス・ネルソンス『ショスタコーヴィチ:交響曲 第4番&第11番「1905年」/ボストン交響楽団』を聴いた。サウンドステージは広大で、オーケストラを構成する1つ1つの楽器も明瞭に表現、小型スピーカーとは思えないスケールの大きな音に感心した。
ちなみにLSXはSpotify Connectにも対応しており、Spotifyの音楽も簡単に再生できる。一般ユーザーにおいては、まずこれが主な再生方式になるだろう。このように、手軽な試聴スタイルからマニアも納得のコアなスタイルまで全方位的に対応するのが、LSXの大きなアドバンテージだ。
多くのワイヤレススピーカーをレビューしてきた筆者から見て、LSXの先進的な内容と音質を考えると、正直この値付けは安すぎるくらいなのではと感じた。
LS50 Wirelessに比べて大幅にコンパクトになりデザイン性も向上しているし、左右スピーカーを接続するケーブルさえも廃したことで、LSXはこれまで以上に、生活空間の様々な場所に設置できるようになった。
そして驚くべきはその音質。キャビネットはコンパクトに仕上がっているにもかかわわらず、十分な低音再生能力がある。そしてUni-Qドライバーと独自のDSP技術を組み合わせることで、位相特性に優れた素晴らしい音が出てくる。今回聴いたような音像やサウンドを、パッシブ型スピーカーとアンプの組合せで得るとしたら、LSXの価格よりずっと大きな予算が必要になるはずだ。
また、アプリの仕上がりも良く、設置環境に合わせた音質チューニングもできる。LSXは音質・設置性・デザインと3拍子揃った、新世代の幕開けを告げる素晴らしいスピーカーだと断言したい。
(土方久明)