自然かつワイドレンジなサウンドを実現
どんな美辞麗句も足りない、イヤホンの最高到達点! Meze Audio「RAI PENTA」レビュー
■独自「PENTA HYBRID DRIVER TECHNOLOGY」で音質チューニング
ドライバー数は「Penta=5」の名前が表す通り、低域側にダイナミック、中域と高域にBAを各2基の計5基を搭載するマルチハイブリッド構成だ。全てのドライバーをどのように調和させ、いかに一体感のあるサウンドを生み出すかというのが、設計の大きなポイントになる。
彼らはこのRai Pentaにおいて、プラスチック製の音導管の長さや太さと吸音材を組み合わせて位相や音調を整えるという一般的な手法は採らなかった。そのやり方は彼らから見ると不完全なのだという。
代わりに採用したのが、見るからに精密な金属製のサウンドチューブであり、そこに設けられた音導孔だ。その内部も緻密に設計され製造されているであろうことは、前述のように想像に難くない。そのサウンドチューブ、そしてハウジング全体の設計の最適化を合わせて、Rai Pentaはマルチドライバーの完全な調和を得ている。
もうひとつの大きなポイントは「PRESSURE EQUALIZATION SYSTEM=PES」と呼ばれる気圧平準化システム。ハウジングに設けられた特徴的な形状の空気孔は、主にダイナミック型ドライバーに対して設置されたものだと思われるが、ドライバーユニット前後の内部気圧を適切に制御するためのものだ。詳しくは説明されていないが、この形や配置にも大きな意味があるのだろう。また、ケーブルやプラグ、付属イヤーピースといった周辺要素にももちろん妥協は全くない。
■ワイドレンジかつナチュラルな質感で、ミドルレンジも充実
では、高い完成度を誇るRai Pentaの“音”はどんなものだろうか。一聴して、ワイドレンジを確保しつつ両端を強調はせず、ミドルレンジの著しい充実を感じる。超低域や超高域の成分は、その充実のミドルに自然に寄り添い表現をサポートする。帯域バランスの印象は、スペックとしてのフラット&ワイドではなく、聴覚的にナチュラル&ワイドだ。
音の感触は、音色の硬さもしっかりと表現するが、全体としては硬質ではなく、こちらもナチュラルにしなやかといった印象。音像と背景のコントラストも、S/N感を強調して背景を沈めすぎたものではない。背景の粒子感やさざめきも生かし、くっきりさせすぎずに適度な馴染みを残して音像を浮かび上がらせる。
総じて全体に、分かりやすいハイエンド感を演出しすぎることなく、心地の好い自然な音調を維持したままそのクオリティを高度に引き上げたといったサウンドだ。