多彩なソース対応、オーディオ性能もさらに進化
最小筐体に込めたマランツの誇り。パラレルBTL対応のオールインワン・オーディオ「M-CR612」を聴く
そしてケーブルを追加しバイアンプ駆動も試してみる。音像の締まり感や空間性の豊かさはパラレルBTLドライブとも共通の変化であるが、よりきめ細やかさが増し、しなやかで弾力良いサウンドだ。楽器やヴォーカルの鮮度感やウェットな表現はより高まり、生々しい音像が分離良く浮き立つ。臨場感に溢れ、立体的な音場が広がり、オーケストラの旋律も緻密に描き出す。音離れの良さにおいてはバイアンプ駆動の方が優れる印象だ。
最後にネットワーク環境のサウンドも確認した。USBメモリ再生より穏やかな音調でスッキリとしたニュートラルな音質傾向だ。ストリーミングはSpotifyで試してみたが、ハリ良く明瞭なサウンドで、リズムのアタックもタイト。やや硬質であるが、エッジの粗さが気になるようなことはなく、クリアで耳当たり良い。質感も悪くなく、普段から活用できるレベルのサウンドだ。
M‐CR611でも十分高音質であると感じていたが、改めてM‐CR612を聴いてみると、空間表現力や透明感、質感描写性で一枚も二枚も上手である印象を受けた。パラレルBTLドライブも効果が高く、HEOSによる機能性向上も大きな魅力となっている。より上位のスピーカーと組み合わせてもバランス良く鳴らしてくれそうな、コンパクトモデルの枠に収まらないハイCPシステムだ。
(岩井喬)
<M-CR612 スピーカー組み合せチェック>
■B&W「707S2」 ¥157,000(ピアノブラック/ペア/税抜)
価格バランスとしてはやや高級なチョイスだが、大きさや色のバランス、相性も良い。バイアンプ駆動でより真価を発揮。コンティニュアムコーン・ウーファーが持つ素直さ、カーボンドーム・トゥイーターが生み出す立体的な空間性をより堪能できるだろう。パラレルBTLではパワフルさ、音像の逞しさを軸としたリアルな音を楽しめる(岩井)。
■DALI「OBERON1」 ¥57,000(ペア)
価格的にバランスが取れた組み合わせだ。シングルワイヤ機であり、標準モードではウッドファイバー・コーン・ウーファーの伸び良く豊かな低域を艶やかにまとめ、ハリ良く滑らかな高域と両立。立体的空間が広がる。パラレルBTLでは低域のダンピングが高まり、臨場感が増す。ピアノの低域弦のうねりも明快。S/N良く上品なサウンドだ(岩井)。
本記事は季刊・NetAudio Vol.34所収記事を転載したものです。本誌の購入はこちらから。