音質やノイキャンなど様々な面を比べた
アップル「AirPods Pro」の凄いところ、残念なところ。ソニー「WF-1000XM3」と比較レビュー
■AirPodsの手軽さとノイキャンの静寂を1台で両立
AirPods Proはカナル型イヤホンである。カナル型イヤホンは、耳の穴にイヤーチップを押し込むというその性質上、外音を遮蔽してしまう。密閉度が高まり、ノイズを遮断する効果が得られる一方、着けたまま話したりするには、集音マイクで拾った音を再生する必要がある。
アップルが長年、EarPodsやAirPodsをオープン型としてきたのも、このカナル型イヤホンならではの特徴と、気軽に着けられるカジュアルさを天秤に掛け、後者を選択したからだろう。
だがAirPods Proは、カナル型であるにも関わらず、これまでのAirPodsの感覚に近い開放感が得られる。それを可能にしているのが「外部音取り込みモード」だ。この外部音取り込みモードの仕上がりは、他の製品と比べものにならないほどのレベルに達している。
外部音取り込みモードを選択すると、カナル型イヤホンを着けていることが信じられないほど、周りの音がクリアに聞こえる。当然、着けたまま自然に周囲と会話することもできる。驚くのは、自分の声や咳払いまで、まるでイヤホンがあいだに存在しないかのように聞こえることだ。サーッというノイズは聞こえるものの、それ以外はイヤホンを外した状態とあまり変わらない。
ここまで凄いと実験してみたくなり、外部音取り込みモードオンでAirPods Proを装着しながら、日高屋でラーメンを食べてみた。普通のカナル型イヤホンなら、咀嚼音が頭の中に響いて、不快きわまりないシチュエーションだ。AirPods Proでも当然ながら、咀嚼音が頭の中で響くのだが、それほど不快ではないレベルに収まっていた。信じられないほどの性能だ。
ソニーのWF-1000XM3は、外音取り込み量を調整できるのだが、マックスの「20」にすると、周りの声や音はたしかに自然に聞こえてくるが、自分の声はくぐもり、ほとんど聞こえない。だから外音取り込みモードでも、周囲と自然に会話するのは困難だ。自分の声のボリュームが適正かどうかがわからないのだ。また、咳払いをしたり唾を飲み込んだりすると、その音も不快に響く。
この違いは、マイク性能やその音声を処理する能力もさることながら、イヤーチップの違いによるところも大きそうだ。ソニーのWF-1000XM3には複数の種類のイヤーチップが付属するが、いずれもかなり奥まで、ぐっと押し込むタイプ。それに対してAirPods Proのイヤーチップは、奥行きが半分程度しかない。あまり奥に押し込む必要はなく、これも装着時の圧迫感を軽減できている理由の一つだろう。
そのほか、風切り音の対策もAirPods Proの方が優れている。うちわで風を起こして実験したが、WF-1000XM3では風切り音ノイズが発生する強さで扇いでも、AirPods Proではまったくノイズが出なかった。
またAirPods Proにはベント(通気孔)が設けられており、「圧力を均一にする」とアップルは説明している。このベントも、「イヤホンを着けていない感覚」のために役立っていそうだ。
なお、このベントが奏功しているのか、ノイキャンをオンにして歩いているとき、着地した際の振動が頭の中に響かないのが、個人的にはとても気に入った。自分の歩き方が悪いのかもしれないが、WF-1000XM3では、普通に歩いていてもズンズンと頭の中で音が響くのが気になっていたのだ。