逆位相でピークノイズを打ち消す「T.F.A.T」が鍵
新技術で三度飛躍! Unique Melodyのハイブリッド型カスタム「MAVERICK III」レビュー
Unique Melodyとミックスウェーブの共同開発によって生まれたカスタム/ユニバーサルインイヤーモニター(IEM)“MAVERICKシリーズ”。2014年に初代「MAVERICK」が登場してから5年目を迎えた今年、カスタムモデルが第3世代の「MAVERICK III」へとアップグレードした。
これまでにもPHILE WEBでは、初代「MAVERICK」、第2世代「MAVERICK II」と続けて実際に編集部員がカスタムIEMを制作し、その音質をレポートしてきた。今回もまた、さらなる進化を遂げた「MAVERICK III」の魅力を、企画/音作りの中心を担ってきたミックスウェーブ宮永氏のコメントを交えつつお届けしたい。
■5年の間、支持されつづけるハイブリッド型カスタムの名機「MAVERICK」
まずは、これまでのMAVERICKシリーズに受け継がれてきた特徴と、MAVERICK IIIで盛り込まれた新しい特徴について整理してみたい。
2014年、Unique Melodyの技術力と、日本代理店であるミックスウェーブのチューニングのあわせ技にて、日本市場向けの地域限定モデルとして登場したMAVERICK。以来、カスタムモデル2機種/ユニバーサルモデル4機種で貫かれてきた特徴のひとつが、ダイナミックドライバーとBAドライバーのハイブリッド構成だ。
このドライバー構成自体は、開発のベースとなったUnique Melodyのハイブリッドモデルから受け継がれたものだが、音作りに関しては大きく変わっている。チューニングの中心人物である宮永氏に話を伺うと、「“ハイブリッド型と思えないようなハイブリッド型を作ろう” というのが、MAVERICKの音作りにおけるコンセプトのひとつ」だったと当時を振り返る。
「2014年当時のハイブリッド型イヤホンの音作りと言えば、低域のダイナミックドライバーと中高域BAドライバーをそれぞれ強調するようなものが主流でした。これはメリハリの効いたユニークな音が楽しめる一方、ドライバーの種類キャラクターが大きく違うので、帯域間の繋がりや全体の統一感に欠けていると感じていました」(宮永氏)
このため、MAVERICKはハイブリッド型でありながらメリハリ重視ではなく、どちらかと言えば “モニターライク” な音作りにまとめられることになった。
ちなみに、宮永氏はMAVERICKのチューニングを行うとき、「スタジオのような10畳くらいの空間に、ニアフィールドモニターを立てて音楽を聴いている」イメージを思い浮かべて、音作りの基準にしているそうだ。宮永氏がチューニングに携わった他のモデルに関しても、それぞれ武道館くらい、ジャズクラブくらいといったイメージを設定しているとのことで、“空間” が音作りのキーワードと言えそうだ。
さて、非常に完成度の高かった初代MAVERICKだが、年月と共に新しい技術が登場するにつれ、さらに性能向上を図れる伸びしろが出てきた。そこで、基本コンセプトはそのままに、細部の改善を狙って後継モデル/バリエーションモデルが開発された。
数量限定で販売されたユニバーサルモデル第2作目「MAVERICK+」では、ダイナミックドライバー用ベントを2つに増やしたことで、ダイナミックドライバーの振動板がより伸び伸びと駆動できるようになり、音のヌケも向上している。
また、カスタムモデル第2作目/ユニバーサルモデル第3作目の「MAVERICK II」では、音の出口にあたる音導管を金属製とした。イヤホン内部に複数の音導管を通すような設計でも、金属の音導管ならば潰れて音の通り方が変わったりすることもない。カナル部の強度も高まる工夫だ。
他にも、使用するダイナミックドライバーのモデル変更やそれに応じたチューニングの最適化など、細部のブラッシュアップを重ねながら、“MAVERICKシリーズ” はハイブリッド型IEMの名機として5年間支持されてきた。
■新技術「T.F.A.T」を得て、シリーズの特徴がさらに先鋭化
それでは、第3世代となったMAVERICK IIIで、どのような特徴が加わったのだろう。
最も大きな特徴が、「Targeting Frequency Adjustment Technology」、略して「T.F.A.T」という技術だ。チタニウム製ハウジングのユニバーサルモデル「MAVEN」で初搭載されたこの技術は、宮永氏が「T.F.A.T が無ければMAVERICK IIIは誕生しなかった」と太鼓判を押すほどの、チューニングの核である。
これまでにもPHILE WEBでは、初代「MAVERICK」、第2世代「MAVERICK II」と続けて実際に編集部員がカスタムIEMを制作し、その音質をレポートしてきた。今回もまた、さらなる進化を遂げた「MAVERICK III」の魅力を、企画/音作りの中心を担ってきたミックスウェーブ宮永氏のコメントを交えつつお届けしたい。
■5年の間、支持されつづけるハイブリッド型カスタムの名機「MAVERICK」
まずは、これまでのMAVERICKシリーズに受け継がれてきた特徴と、MAVERICK IIIで盛り込まれた新しい特徴について整理してみたい。
2014年、Unique Melodyの技術力と、日本代理店であるミックスウェーブのチューニングのあわせ技にて、日本市場向けの地域限定モデルとして登場したMAVERICK。以来、カスタムモデル2機種/ユニバーサルモデル4機種で貫かれてきた特徴のひとつが、ダイナミックドライバーとBAドライバーのハイブリッド構成だ。
このドライバー構成自体は、開発のベースとなったUnique Melodyのハイブリッドモデルから受け継がれたものだが、音作りに関しては大きく変わっている。チューニングの中心人物である宮永氏に話を伺うと、「“ハイブリッド型と思えないようなハイブリッド型を作ろう” というのが、MAVERICKの音作りにおけるコンセプトのひとつ」だったと当時を振り返る。
「2014年当時のハイブリッド型イヤホンの音作りと言えば、低域のダイナミックドライバーと中高域BAドライバーをそれぞれ強調するようなものが主流でした。これはメリハリの効いたユニークな音が楽しめる一方、ドライバーの種類キャラクターが大きく違うので、帯域間の繋がりや全体の統一感に欠けていると感じていました」(宮永氏)
このため、MAVERICKはハイブリッド型でありながらメリハリ重視ではなく、どちらかと言えば “モニターライク” な音作りにまとめられることになった。
ちなみに、宮永氏はMAVERICKのチューニングを行うとき、「スタジオのような10畳くらいの空間に、ニアフィールドモニターを立てて音楽を聴いている」イメージを思い浮かべて、音作りの基準にしているそうだ。宮永氏がチューニングに携わった他のモデルに関しても、それぞれ武道館くらい、ジャズクラブくらいといったイメージを設定しているとのことで、“空間” が音作りのキーワードと言えそうだ。
さて、非常に完成度の高かった初代MAVERICKだが、年月と共に新しい技術が登場するにつれ、さらに性能向上を図れる伸びしろが出てきた。そこで、基本コンセプトはそのままに、細部の改善を狙って後継モデル/バリエーションモデルが開発された。
数量限定で販売されたユニバーサルモデル第2作目「MAVERICK+」では、ダイナミックドライバー用ベントを2つに増やしたことで、ダイナミックドライバーの振動板がより伸び伸びと駆動できるようになり、音のヌケも向上している。
また、カスタムモデル第2作目/ユニバーサルモデル第3作目の「MAVERICK II」では、音の出口にあたる音導管を金属製とした。イヤホン内部に複数の音導管を通すような設計でも、金属の音導管ならば潰れて音の通り方が変わったりすることもない。カナル部の強度も高まる工夫だ。
他にも、使用するダイナミックドライバーのモデル変更やそれに応じたチューニングの最適化など、細部のブラッシュアップを重ねながら、“MAVERICKシリーズ” はハイブリッド型IEMの名機として5年間支持されてきた。
■新技術「T.F.A.T」を得て、シリーズの特徴がさらに先鋭化
それでは、第3世代となったMAVERICK IIIで、どのような特徴が加わったのだろう。
最も大きな特徴が、「Targeting Frequency Adjustment Technology」、略して「T.F.A.T」という技術だ。チタニウム製ハウジングのユニバーサルモデル「MAVEN」で初搭載されたこの技術は、宮永氏が「T.F.A.T が無ければMAVERICK IIIは誕生しなかった」と太鼓判を押すほどの、チューニングの核である。
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