<山本敦のAV進化論 第185回>
家でも外でもガンガン使えるスピーカー。Sonos「Move」は魅力的な “オールラウンダー”
本体の設定・操作には他のソノス製品と同じ、iOS/Android版が提供されている「Sonos」アプリを使う。アプリからはApple MusicにSpotify、Amazon Music、YouTube Musicなど日本国内でも使える音楽サービスを追加して、MoveがWi-Fi経由で直接ストリーミングを受けながら音楽を再生できる。SonosアプリからAWAを追加することはできなかったが、AIアシスタントにAmazon Alexaを選択してスキルを追加すれば、AWAやdヒッツ、うたパス、radiko.jpなどが音声で呼び出して使えそうだ。
Sonosアプリから登録した音楽配信サービスは、アプリ内で独自に作り込まれたユーザーインターフェースによって操作できるようになっている。複数指定しておけば、気になる楽曲やアーティストを、サービスを横断して検索できるのが便利だ。もちろんApple MusicやSpotifyアプリから、Moveにワイヤレスで音声を飛ばし、使い慣れたそれぞれのアプリの画面から操作してもいい。
さらにアプリからは、複数のソノス製品によるマルチルーム再生のセットアップや、2台のMoveでのステレオペア再生環境の構築なども簡単にできる。音楽再生に直接関連するものでは高域と低域のバランスをそれぞれプラスマイナス10段階で可変できるイコライザーやラウドネス機能もある。夜中に低音の響きを抑えて聴きたい場面で重宝した。
Sonosアプリのユーザーインターフェースは、充実した機能を上手に整理しながら配置しているので、使い慣れるのにさほど時間はかからないだろう。ただしグローバルメニューに「マイSonos」「参照」「部屋」といった具合に並ぶ機能の呼び名が、最初はすっと頭に入ってこなかった。ここに表示する機能の優先順位や並び順については改善の余地があると感じた。
さて、ここからはいよいよMoveのサウンドを確かめてみたい。今回スマホはiPhone 11 Proをリファレンスにした。
Apple MusicでMISIAの「アイノカタチ」を聴いた。ボーカルがとてもクリアで高域もきれいに伸びる。声の質感がシルキーで量感もふくよか。ラウドネスはオンにして聴いてみたが、重心が低くアタックの鋭い低音も心地よい。音像がだぶついて中高域に覆い被さるようなこともなく、立体的なバンドの音楽が部屋にゆったりと満ちていった。
ピアノや金管楽器の音色に不要な色づけがなく、トランペットなど金管楽器はビブラートのきめ細かな音の輪郭をていねいに再現する。ドラムスのハイハット、シンバルの余韻はふわっと香りを漂わせるような儚さがいい。縦横方向の音場の広がりも都度リアルにイメージできた。
ベースラインも軽やかだ。少しアグレッシブなロックやEDMを再生してみると、楽曲によっては音の鳴りっぷりはおおらかなのだが、カラッと乾いていて少し淡泊に聴こえる印象もあった。Reiの「Territory Blues」の豪快なエレキとは相性がピタリとはまった。楽曲によってEQもある程度積極的に動かしてみてもいいかもしれない。
Moveは円筒形のデザインだが、無指向性スピーカーではないので、本機の正面側でガツンと力強い音のシャワーを浴びて楽しむ聴き方が正解だと思う。屋外でBluetooth再生も試してみたが、伸びやかでパワフルなサウンドが満喫できた。筆者なら家の中でWi-Fiに接続して使うケースの方が圧倒的に多いと思うが、Bluetooth再生機能があれば、何かと便利に感じられることもあると思う。
まとまりのあるサウンドもさることながら、スムーズな使い勝手も期待以上の出来映えだった。AIアシスタントも搭載するワイヤレススピーカーとして、まずまずの手頃な価格を実現できていると思うし、長く使い込めば愛着が湧きそうだ。若い音楽ファンにも使い倒せるオールラウンダーとしておすすめしたい。
(山本 敦)