ノートPCからの移行もOK?
新「iPad Pro」レビュー。LiDARや2カメラ、マウス対応など大きく進化
iPadとして初めてダブルレンズカメラが搭載された。そして、自動車の安全走行をサポートする新世代のテクノロジーとしても注目されている「LiDAR(Light Detection and Ranging)スキャナ」を、アップルのデバイスとして初めて採用した。
LiDARスキャナは、カメラを向けた方向に目に見えない光の粒子を照射し、跳ね返ってくる光の到達時間を計算して距離を測るためのセンサーだ。iPadのような薄型のモバイルデバイスに組み込むため、アップルはLiDARスキャナの小型化に腐心した。このスキャナは、屋内外で最大5メートルまでの被写体の距離を、素速く正確に測距できるという。
このiPad Proの新しいLiDARスキャナは、ARコンテンツの再現性を高めるために搭載されている。ほかの2基のRGBカメラによる暗所での静止画・動画撮影に連動して、測距精度を高めるといった用途は想定されていないようだ。
そしてiOS 13.4/iPadOS 13.4と同じタイミングで、アップルは独自のARフレームワークであるARKitの最新APIを公開する。これからLiDARスキャナを活用するARアプリが続々と増えそうだ。
新しいiPad ProでいくつかのARアプリを試してみた。速度や精度については今のところ、筆者が所有するiPad Proのパフォーマンスも十分に高いため、あまり大きな差は出なかった。ただ、ARオブジェクトの中に人物が入り込んだときは違いが出た。新しいiPad Proはそれぞれの前後位置関係を計算しながら、境界線を正確に描き分けた。
■スムーズな画像編集を実感。Wi-Fi 6対応にも期待
最新のA12Z Bionicチップは4Kビデオの編集や3Dグラフィックスによるクリエイティブワークを強力にサポートできるパフォーマンスを備えた。
8コアのCPUとGPUを統合する最新のSoCには、アップルが独自に設計したパフォーマンスコントローラーと、CPU/GPUの熱を効率よく逃がすための放熱レイアウトを採用する。2017年に発売された第2世代のiPad Proが搭載していたA10X Fusionチップと比べると約2.6倍、2018年発売の第3世代モデルが搭載するA12X Bionicチップとの比較でも、より優れたグラフィック処理性能を発揮できるという。
デジタルカメラで撮影した静止画のデータをiPad Proに読み込み、画像編集アプリの「Pixelmator Photo」でレタッチ作業を行ってみた。筆者がふだん使っている第3世代の12.9インチiPad Proよりも修正処理のスピードが明らかに速い。作業の効率アップが期待できそうだ。
ワイヤレス通信は新しいiPad Proから初めてWi-Fi 6(11ax)にも対応する。同じWi-Fi 6対応のルーター機器などを導入すれば映像・音楽配信コンテンツがよりスムーズに視聴できるだけでなく、テレワーク系ツールの安定感も高まりそうだ。なおiPad Proには、メインカメラによるビデオ撮影時の音声や、ビデオ通話の音声もクリアになる、スタジオグレードのマイクが計5基内蔵されている。
新しいiPad ProのWi-Fi+Cellularモデルについては、ギガビット級LTEの対応バンドが29から30に増えた。データ通信のみだがnanoSIMとeSIMによる通信が使えるので、移動の多いビジネスパーソンにとっては、常時オンライン接続が可能なiPad Proが、ノートPCより心強いデバイスになることもありそうだ。
■ダブルレンズカメラはiPad Proのため独自に設計
アップルのデバイスには、iPhone 11シリーズから超広角レンズが搭載されたあ。筆者もiPhone 11 Proで、展示会場の全景を撮りたい場面などに超広角レンズを活用している。超広角レンズが搭載されたことで、今後iPad Proで写真を撮る機会も増えそうだ。なお広角・超広角レンズの両方で最大4K/60pの動画撮影も楽しめる。
広角と超広角を組み合わせたマルチレンズカメラというユニット構成はiPhone 11と同じだが、新しいiPad Proの超広角側カメラユニットはセンサーの解像度が10メガピクセルで、視野角はiPhone 11よりも少し広い125度となる。それぞれに仕様が少し違っているのだ。
カメラアプリでポートレートカメラを選択すると、フロント側のTrueDepthカメラに切り替わる仕様もiPad Proならではのもの。iPhone 11シリーズとは異なっている。センサー解像度が12メガピクセル、明るさがF1.8という広角レンズの仕様は、2018年秋に発売されたiPad Proと同じものとなる。
夕暮れ時の風景をiPhone 11 Proと新しいiPad Proの超広角レンズで撮り比べてみた。解像感はやはりiPhone 11 Proの方がやや勝るものの、夕焼け空のきめ細かなグラデーションの階調感、雲の陰影の立体感などはiPad Proもしっかり丁寧に描けている。