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“ナチュラルで高解像度のブラック”と“シルキーで聴き心地のよいブロンズ”

オルトフォンから新世代の最高峰スピーカーケーブルが誕生。「Premiumグレード」2モデルを試す

公開日 2020/04/06 06:30 福田雅光
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オルトフォンには、老舗のケーブルブランドというカートリッジに次ぐもうひとつの顔がある。そんな同ブランドが、長年にわたって培った技術を余すことなく投入した最高峰ケーブル「Premiumグレード」が誕生した。同シリーズから発売されるのは「Reference SPK-Black Premium/Bronze Premium」の2モデルで、“ナチュラルで高解像度のブラック”と“シルキーで聴き心地のよいブロンズ”となっている。本項では福田雅光氏が、オルトフォンによる新世代の最高峰ケーブルをレポートする。

・「Reference SPK-Black Premium」(写真上)
2mペア=¥94,000/2.5mペア=¥103,000/3mペア=¥116,000(ともに税抜)

・「Reference SPK-Bronze Premium」(写真下)
2mペア=¥78,000/2.5mペア=¥86,000/3mペア=¥94,000(ともに税抜)


好みで2種類が選べる完全受注生産ケーブル

オルトフォンはこれまでに“リファレンス・シリーズ”と呼ばれるケーブルを展開。上位ランクから順に「ブラック」「ブロンズ」「ブルー」「レッド」の4色展開で、各モデルともに非常に高い再現性を備えている。そんな中で筆者の好みは「ブロンズ」で、AA誌の連載“福田屋セレクション”でも、ことあるごとに推奨してきた。

そんな同社、リファレンス・シリーズのラインナップのなかから、上位の2モデルにあたる「ブラック」と「ブロンズ」のスピーカーケーブルがさらに進化。「Reference SPK-Black Premium」「Reference SPK-Bronze Premium」という、“プレミアム”の名を冠した最高峰シリーズとして登場した。

この2モデルの共通点はPCUHDとHiOFC、OFCの3種類の導体を採用した4芯構造である点。ブラック・プレミアムは2.5mm径導体を4本、プレミアム・ブロンズは1.28mm×2本と1.27mm×2本という異なる径のハイブリッド構成となっている。

端子のバナナプラグとYラグはともに真鍮の棒材の切削で、ブラック・プレミアムはロジウムメッキ、ブロンズ・プレミアムは金メッキ仕上げとなっている。その他、両モデルともにケーブルスプリッターが装備され、いずれも完全受注生産専用モデルとなっている。

ブロンズは解像度一直線ではない傾向。量感たっぷりの温かい音質

「Reference SPK-Bronze Premium」は同社のMC・MMカートリッジと同じサウンドイメージで設計。PCUHD、HiFC、OFCの3種類からなる導体の4芯配置は共通で、導体を構成する線材の太さを2種類にわけてハイブリッド。真鍮棒材切削によるバナナ、Yラグは金メッキ仕様となっている

ブロンズ・プレミアムは、なめらかさのある透明度の高い音質が特色である。高解像度、鮮明さを適度にコントロールしながら、一種の柔らかな温かさを含ませた音質が追求されている。

低音弦楽器の陰影、低音リズムの締まりは多少あまくはなるが、中間帯域を主体に輪郭をしっかりさせて、ぼやける程のことはない。中低域は量感を引き出し、全体に帯域の広さ出している。また、明るく抜けよくリズム系の歯切れも良好である。ヴォーカル帯域の音質は優しく温かいニュアンスがある。いい雰囲気の出るケーブルである。

このような高解像度一直線ではないタイプのケーブルを求めるユーザーが存在することは理解している。そのようなマニアに適しているだろう。サウンド全体がゆるくあまくなったのでは不満も発生するが、このケーブルは音像感や歯切れもしっかりと引き出せているのがいい。

ブラックは繊細、高精度で広帯域が特徴。純度の高い写実系サウンド

「Reference SPK-Black Premium」はPCUHD、HiFC、OFCの3種類からなる導体の4芯配置。さらにこれを幾何学的に配置し、それぞれの芯ごとにハイブリッドされている各導体の動きを均一化させる仕組み。真鍮棒材切削によるバナナ、Yラグはロジウムメッキ仕様

プレミアムシリーズの最高級となるブラック・プレミアムは、繊細に精度の高い広帯域を特徴にする設計がされている。全体的にニュートラルかつ高S/Nで、帯域バランスはいたってフラットに展開される。均質な表現力と洗練された気品ある音質を追求している印象だ。

低音は力にダンピングを効かせ分解力が高い。低音弦楽器のチェロの旋律になると、ブロンズ・プレミアムとは大きな違いがある。難題の中低音の旋律がはっきりと描かれる。高域特性は繊細な倍音スペクトラムまで冴えて美しい。すっきりと澄んだ空間と女性ヴォーカルは濁り、くもりのない純度の高い質感で楽しめる。このケーブルはどちらかといえば写実系といえるが、ぎこちなさや硬質感を感じることはない。

比較的手の届く価格範囲で完成度の高いケーブルが設計されているのは魅力だ。音質傾向の異なるモデルを揃え、ユーザーの好みに対応させる企画なのだろう。
<Specification>
【Reference SPK-Black Premium】●導体種類:PCUHD、HiFC、OFC●導体面積:2.5mm2×4本●ケーブル径:Φ14.5o●導体抵抗:8mΩ/m●耐電圧:AC500V/1分間●シールド:アルミテープ●端子部導体種類:ロジウムメッキ真鍮材●絶縁材:高弾性エラストマー、ポリエチレン、ポリエステル
【Reference SPK-Bronze Premium】●導体種類:PCUHD、HiFC、OFC●導体面積:1.28mm2×2本、1.27mm2×2本●ケーブル径:Φ13.0o●導体抵抗:15mΩ/m●耐電圧:AC500V /1分間●シールド: 銅編線、0.12o×9本を16組●端子部導体種類:金メッキ真鍮材●絶縁材:高弾性エラストマー、ポリエチレン、ポリエステル●取り扱い:オルトフォンジャパン(株)
本記事は季刊オーディオアクセサリー Vol.176からの転載です。本誌の詳細及び購入はこちらから

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