【特別企画】専用フルレンジAMTドライバー搭載
“AMTの伝道師”が発明したヘッドホンの革命児、「HEDDphone」の実力に迫る
HEDDは、クラウス・ハインツ氏がオーナー兼チーフエンジニアを務める新興ブランドだ。そしてAMTの可能性を30年以上に渡って追求し続けるクラウス氏が設計した「HEDDphone」は、ヘッドホンのために新たに開発されたフルレンジAMTドライバーを搭載した、同ブランドの意欲作となる。技術的なブレイクスルーが生んだ革新的ヘッドホンの実力をチェックしたい。
AMTの伝道師が発明したまったく新しいヘッドホン
非常に多くのブランドが乱立しているプロ用アクティブモニターの世界で、特別な眼差しを向けられているのがHEDD(Heinz Electro Dynamic Designs)である。そのオーナー兼チーフエンジニアであるクラウス・ハインツ氏は「ハイル型ドライバー」、いわゆる「AMT(Air Motion Transformer)」を用いたアクティブモニターを開発し、一世を風靡したADAM Audioの創業者でもあるからだ。
ADAM Audioは5年前に破産し、現在は新たな経営陣のもとで再出発を図っている。低価格モデルの導入などによる会社規模の急拡大と引き換えに様々な歪みも生まれてしまったのだろう。クラウス氏はその際にADAM Audioから去り、HEDDを創業。改めて自身が望む信念のもと、新たなAMTを用いたスピーカー作りを始めたのだ。
筆者は10年以上前にクラウス氏に取材を行い、そのビジョンとサウンドに惚れ込み、ADAM Audioのコンシューマー向け製品の第一弾「HM2」を購入している。ADAM Audioでは「X-ARTドライバー」と呼んでいたが、非常に立ち上がりがスピーディーで、再生帯域も広い優れたトゥイーターであり、AMTのよさを認識したのである。一方、ハイエンドオーディオの世界でも、ELACがJETトゥイーターとしてAMTを取り入れたが、その基本となる設計にも実はクラウス氏が関わっていたという。クラウス氏はまさに現代におけるAMTの伝道師ともいえる存在だ。
AMTは1960年代、オスカー・ハイル博士によって発明された手法であり、スピーカーの世界ではトゥイーターに用いられることが多い。またヘッドホン用としても、古くから採用例があり、近年は小型化され、イヤホンに用いられたケースもある。クラウス氏は1985年にハイル博士と邂逅を果たし、以前から興味のあったAMTについて、直接ハイル博士から学んだという。発明者直伝の技術や思想、あくなきサウンドへの探求がHEDDの原動力になっていることは間違いないだろう。
折り畳まれたダイヤフラムが空気の動作を速くする
それでは、AMTとはどういったドライバーなのか。その構造は弾力あるフィルム素材のダイアフラムに音声信号が流れるコイルパターンを貼り付け、蛇腹状に折り畳んで磁界のなかに置いたものだ。ダイアフラムに音声信号が流れると折り畳まれたことで隣り合うプリーツがローレンス力によって吸引・反発作用を起こし、空気を放出・吸引することで音波が発生。このプリーツによって圧縮された空気は一般的なドーム状のダイアフラムと比較し、外気を3倍以上の比率でドライブできる。ゆえに空気の動作スピードが何倍にも加速するため立ち上がり・立ち下がり時間が大幅に短縮できるのだ。
このハイスピードな反応特性を持つハイル型ドライバーだけでスピーカーを構成しようとするとウーファーが巨大なものとなるため、近年ではミッドレンジまでの製品化に留まっていた。かつてADAM AudioではAMTのミッドレンジを載せたモデルがあったものの、製造工程に多大なコストがかかるため、現在は実現が難しいといわれている。
前述のように、これまでにもヘッドホンにAMTを使った例がいくつもあったが、なかなか評価されないのはドライバーユニットと鼓膜の距離が極めて近いこと、さらに低域から高域までのフルレンジを駆動できるAMTが必要なことなど、ヘッドホンならではの環境に則した設計が必要であるからだ。そのことをクラウス氏は認識しており、HEDDならではのAMT技術を応用したヘッドホン「HEDDphone」を発表。愛好家のあいだで、大きな話題となっている。
AMTの伝道師が発明したまったく新しいヘッドホン
非常に多くのブランドが乱立しているプロ用アクティブモニターの世界で、特別な眼差しを向けられているのがHEDD(Heinz Electro Dynamic Designs)である。そのオーナー兼チーフエンジニアであるクラウス・ハインツ氏は「ハイル型ドライバー」、いわゆる「AMT(Air Motion Transformer)」を用いたアクティブモニターを開発し、一世を風靡したADAM Audioの創業者でもあるからだ。
ADAM Audioは5年前に破産し、現在は新たな経営陣のもとで再出発を図っている。低価格モデルの導入などによる会社規模の急拡大と引き換えに様々な歪みも生まれてしまったのだろう。クラウス氏はその際にADAM Audioから去り、HEDDを創業。改めて自身が望む信念のもと、新たなAMTを用いたスピーカー作りを始めたのだ。
筆者は10年以上前にクラウス氏に取材を行い、そのビジョンとサウンドに惚れ込み、ADAM Audioのコンシューマー向け製品の第一弾「HM2」を購入している。ADAM Audioでは「X-ARTドライバー」と呼んでいたが、非常に立ち上がりがスピーディーで、再生帯域も広い優れたトゥイーターであり、AMTのよさを認識したのである。一方、ハイエンドオーディオの世界でも、ELACがJETトゥイーターとしてAMTを取り入れたが、その基本となる設計にも実はクラウス氏が関わっていたという。クラウス氏はまさに現代におけるAMTの伝道師ともいえる存在だ。
AMTは1960年代、オスカー・ハイル博士によって発明された手法であり、スピーカーの世界ではトゥイーターに用いられることが多い。またヘッドホン用としても、古くから採用例があり、近年は小型化され、イヤホンに用いられたケースもある。クラウス氏は1985年にハイル博士と邂逅を果たし、以前から興味のあったAMTについて、直接ハイル博士から学んだという。発明者直伝の技術や思想、あくなきサウンドへの探求がHEDDの原動力になっていることは間違いないだろう。
折り畳まれたダイヤフラムが空気の動作を速くする
それでは、AMTとはどういったドライバーなのか。その構造は弾力あるフィルム素材のダイアフラムに音声信号が流れるコイルパターンを貼り付け、蛇腹状に折り畳んで磁界のなかに置いたものだ。ダイアフラムに音声信号が流れると折り畳まれたことで隣り合うプリーツがローレンス力によって吸引・反発作用を起こし、空気を放出・吸引することで音波が発生。このプリーツによって圧縮された空気は一般的なドーム状のダイアフラムと比較し、外気を3倍以上の比率でドライブできる。ゆえに空気の動作スピードが何倍にも加速するため立ち上がり・立ち下がり時間が大幅に短縮できるのだ。
このハイスピードな反応特性を持つハイル型ドライバーだけでスピーカーを構成しようとするとウーファーが巨大なものとなるため、近年ではミッドレンジまでの製品化に留まっていた。かつてADAM AudioではAMTのミッドレンジを載せたモデルがあったものの、製造工程に多大なコストがかかるため、現在は実現が難しいといわれている。
前述のように、これまでにもヘッドホンにAMTを使った例がいくつもあったが、なかなか評価されないのはドライバーユニットと鼓膜の距離が極めて近いこと、さらに低域から高域までのフルレンジを駆動できるAMTが必要なことなど、ヘッドホンならではの環境に則した設計が必要であるからだ。そのことをクラウス氏は認識しており、HEDDならではのAMT技術を応用したヘッドホン「HEDDphone」を発表。愛好家のあいだで、大きな話題となっている。