SPケーブルが効果絶大
ケーブル交換、“上流”と“出口”どちらのほうが効果的? CHORD COMPANYの最高峰「CHORD MUSIC」で徹底検証!
英国を代表するケーブルブランドのひとつであるCHORD COMPANY(コード・カンパニー)。その高い音質と最新のノイズ対策技術を駆使したケーブルは、日本でも圧倒的な支持を得ており、ユーザーも増えてきている。そこで本企画ではコード・ケーブルを使用するユーザーのためのグレードアップ計画を提唱する。
その際にインターコネクトケーブルとスピーカーケーブル、どちらを先に交換した方がより効果的なのか? アンダンテラルゴの試聴室にて比較試聴を行い、CHORD COMPANYのケーブルの魅力とグレードアップのポイントを鈴木 裕氏が検証する。
■入力が大事か? 出口側か? 永遠のテーマを実体験する
CDプレーヤー、プリアンプ、パワーアンプ、スピーカーというシステムを思い浮かべてほしい。CDとプリ、プリとパワーの間にはインターコネクトケーブルが必要だ。そして、パワーとスピーカーの間にはスピーカーケーブルを接続する。
ではこの時、CDとプリの間のケーブルをグレードアップするのと、パワーとスピーカーの間をグレードアップするのと、どちらがより効果的か? いわゆる「入力側」が大事なのか、「出口側」が大事なのかという、昔からいろいろな機会に議論されたり、実際に試してきた問題だ。
今回の結論を先に書くと、「出口側」であるスピーカーケーブルをグレードアップした方が効果が大きかった。その推測される理由はなかなか現代的だ。
テストはアンダンテラルゴの試聴室で行なった。スピーカーはウェスタン・エレクトリック社の713ドライバー+KS12024ホーン(これが高域)と754Aウーファー×2(もちろん低域)をバッフルボードに装着したもの。パッシブネットワークはオリジナルだ。今回のスピーカーケーブルとは、パワーアンプからパッシブネットワークまでのことを指す。パワーアンプ、プリアンプ、CDプレーヤーはリンの製品。
■CHORD MUSICとSarumTはここが違う!
両モデルはともに最新素材の絶縁体「タイロン」を採用していながらも、その違いは厳重なシールド対策にある。「CHORD MUSIC」は編み線シールドやアルミ製ラップホイルシールドなども併せて7レイヤー構造。ケーブル1本の組み立てにはベテランでも1時間44分かかるとのこと。一方の「SarumT」はシールドを3レイヤー構造と「タイロン」で絶縁した銅線を大量に作ることでコストダウンを実現している。
(1)オール「SarumT」の状態 音楽そのものが付帯音なく鳴る
最初の状態としては、初めにプリ-パワー間を「CHORD MUSIC」で固定した上で、入力側のインターコネクトと、スピーカーケーブルはすべてSarumTで統一。まずこれを聴く。その音の印象を書けば基本的にリアルな音である。サウンドステージには歪んだ場所がなく、前後左右にきれいに展開。大きめの音像が生々しく定位している。何も不足は感じない実に高いクオリティの音。音楽そのものが付帯音なく鳴っている感じ。
(2)CD-プリ間を「CHORD MUSIC XLR」に変更
個々の音像が完全独立しさらに濃密な世界が出現
変化は明確だった。スピーカーからの音離れが良くなり、個々の音像が独立して、定位というよりも生身のミュージシャンが“そこにいる感じ”が強くなる。基本的に音の密度が上がり、エネルギーが増しているので、たとえば定位の前後の描きわけひとつとってもより濃密で、深々とした感じが出てくる。
SarumTのことをリファレンス的な音と表現したことがあるが、CHORD MUSICはさらに踏み込んだ濃密な世界を出現させる力を持っている。ハイエンドのケーブルは他のメーカーのもそうした固有の世界を持っているが、はっとするほどリアルでありつつ濃密というのがCHORD COMPANYの真骨頂に感じる。
(3)パワー-スピーカー間を「CHORD MUSIC SP」に変更
ミュージシャンの一人一人の実在感がさらに高まる
CDとプリ間をSarumTに戻し、スピーカーケーブルをCHORD MUSICに変更してみる。結果、スピーカーケーブルの方が音の変化量は大きかった。
ライヴ盤でのオーディエンスの手数が多くなり、ミュージシャンの一人一人の実在感がさらに高まっている。アコースティックギターの音ひとつとってもその艶や輝かしさといった複雑な要素が増えているのだ。
サウンドステージの見通しの良さは高まっているのに、ライヴの空間自体の濃密さは増す、という不思議な感覚もきわめて特徴的だ。率直に言ってスピーカーケーブルを替えた方が音の変化量は大きい。顕著だった。
(4)「CHORD MUSIC」のスピーカーケーブルを最新プラグに変更
数pの対策で絶大な効果 電磁波の影響力は恐ろしい
導体であるとかシールド、被覆といった本体は変更ないが、その端末のプラグ(端子)が新しいバージョンではアルミのケースによるシールド付きのものに進化。その仕様のものに交換してみる。アンプ側とスピーカー側の数センチの2カ所だが、変化量は小さくない。
比較すると分かってしまうのだが、空間自体の小さな暴れがなくなり、細かい情報がさらに緻密に生き生きと見えてくる。音の凝縮力みたいな要素が高まっている。試しにアンプ側のアルミのケースを外してみると、拍手の生き生きした音に混濁した要素が交じり、音楽をやっている場にあった深い空気感が薄れてしまう。恐ろしい。こんなに電磁波の影響を受けていたのか。音のトランジェントさえ鈍くなってしまうのだ。
コード・カンパニー社の説明によると、スピーカーケーブルのコールドから侵入する電磁波ノイズは、パワーアンプのシャーシのグラウンド(コールド)に高周波ノイズとして入り、プリからさかのぼってCDプレーヤーにまで伝わり、デジタル信号のゼロレベルを変調させてしまうとのこと。それがひいてはデジタルの波形さえ悪くしているという説である。実際、その再生音を比較すると説得力の高い説明に感じたのだが。
CHORD MUSICとSarumTの一番の違いはシールドの厳重さということだが、いかに現代のオーディオが空中を飛び交う電磁波に悪い影響を受けているかを痛感させるテストになった。
スピーカーケーブルの端子のところのシールドの「ある無し」も同様だ。デジタルの高周波の電磁波が飛び交う現代ならではの問題だと思う。スピーカーもアンプもどんどん広帯域化し、SN比も向上。さらにアンダンテラルゴのTMDによって接点でのエネルギーや情報量が伝わる割合が決定的に良くなっているのに電磁波の環境は悪くなる一方だ。対策した音を聴くと元のCDには驚くほどの情報量と、音楽の愉悦が入っているというのに。難しい時代だ。
「CHORD COMPANY」のケーブルを自宅システムで体験できる、無料貸し出しサービスも実施中
本記事は季刊・analog vol.61 Autumnからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから
その際にインターコネクトケーブルとスピーカーケーブル、どちらを先に交換した方がより効果的なのか? アンダンテラルゴの試聴室にて比較試聴を行い、CHORD COMPANYのケーブルの魅力とグレードアップのポイントを鈴木 裕氏が検証する。
■入力が大事か? 出口側か? 永遠のテーマを実体験する
CDプレーヤー、プリアンプ、パワーアンプ、スピーカーというシステムを思い浮かべてほしい。CDとプリ、プリとパワーの間にはインターコネクトケーブルが必要だ。そして、パワーとスピーカーの間にはスピーカーケーブルを接続する。
ではこの時、CDとプリの間のケーブルをグレードアップするのと、パワーとスピーカーの間をグレードアップするのと、どちらがより効果的か? いわゆる「入力側」が大事なのか、「出口側」が大事なのかという、昔からいろいろな機会に議論されたり、実際に試してきた問題だ。
今回の結論を先に書くと、「出口側」であるスピーカーケーブルをグレードアップした方が効果が大きかった。その推測される理由はなかなか現代的だ。
テストはアンダンテラルゴの試聴室で行なった。スピーカーはウェスタン・エレクトリック社の713ドライバー+KS12024ホーン(これが高域)と754Aウーファー×2(もちろん低域)をバッフルボードに装着したもの。パッシブネットワークはオリジナルだ。今回のスピーカーケーブルとは、パワーアンプからパッシブネットワークまでのことを指す。パワーアンプ、プリアンプ、CDプレーヤーはリンの製品。
■CHORD MUSICとSarumTはここが違う!
両モデルはともに最新素材の絶縁体「タイロン」を採用していながらも、その違いは厳重なシールド対策にある。「CHORD MUSIC」は編み線シールドやアルミ製ラップホイルシールドなども併せて7レイヤー構造。ケーブル1本の組み立てにはベテランでも1時間44分かかるとのこと。一方の「SarumT」はシールドを3レイヤー構造と「タイロン」で絶縁した銅線を大量に作ることでコストダウンを実現している。
(1)オール「SarumT」の状態 音楽そのものが付帯音なく鳴る
最初の状態としては、初めにプリ-パワー間を「CHORD MUSIC」で固定した上で、入力側のインターコネクトと、スピーカーケーブルはすべてSarumTで統一。まずこれを聴く。その音の印象を書けば基本的にリアルな音である。サウンドステージには歪んだ場所がなく、前後左右にきれいに展開。大きめの音像が生々しく定位している。何も不足は感じない実に高いクオリティの音。音楽そのものが付帯音なく鳴っている感じ。
(2)CD-プリ間を「CHORD MUSIC XLR」に変更
個々の音像が完全独立しさらに濃密な世界が出現
変化は明確だった。スピーカーからの音離れが良くなり、個々の音像が独立して、定位というよりも生身のミュージシャンが“そこにいる感じ”が強くなる。基本的に音の密度が上がり、エネルギーが増しているので、たとえば定位の前後の描きわけひとつとってもより濃密で、深々とした感じが出てくる。
SarumTのことをリファレンス的な音と表現したことがあるが、CHORD MUSICはさらに踏み込んだ濃密な世界を出現させる力を持っている。ハイエンドのケーブルは他のメーカーのもそうした固有の世界を持っているが、はっとするほどリアルでありつつ濃密というのがCHORD COMPANYの真骨頂に感じる。
(3)パワー-スピーカー間を「CHORD MUSIC SP」に変更
ミュージシャンの一人一人の実在感がさらに高まる
CDとプリ間をSarumTに戻し、スピーカーケーブルをCHORD MUSICに変更してみる。結果、スピーカーケーブルの方が音の変化量は大きかった。
ライヴ盤でのオーディエンスの手数が多くなり、ミュージシャンの一人一人の実在感がさらに高まっている。アコースティックギターの音ひとつとってもその艶や輝かしさといった複雑な要素が増えているのだ。
サウンドステージの見通しの良さは高まっているのに、ライヴの空間自体の濃密さは増す、という不思議な感覚もきわめて特徴的だ。率直に言ってスピーカーケーブルを替えた方が音の変化量は大きい。顕著だった。
(4)「CHORD MUSIC」のスピーカーケーブルを最新プラグに変更
数pの対策で絶大な効果 電磁波の影響力は恐ろしい
導体であるとかシールド、被覆といった本体は変更ないが、その端末のプラグ(端子)が新しいバージョンではアルミのケースによるシールド付きのものに進化。その仕様のものに交換してみる。アンプ側とスピーカー側の数センチの2カ所だが、変化量は小さくない。
比較すると分かってしまうのだが、空間自体の小さな暴れがなくなり、細かい情報がさらに緻密に生き生きと見えてくる。音の凝縮力みたいな要素が高まっている。試しにアンプ側のアルミのケースを外してみると、拍手の生き生きした音に混濁した要素が交じり、音楽をやっている場にあった深い空気感が薄れてしまう。恐ろしい。こんなに電磁波の影響を受けていたのか。音のトランジェントさえ鈍くなってしまうのだ。
コード・カンパニー社の説明によると、スピーカーケーブルのコールドから侵入する電磁波ノイズは、パワーアンプのシャーシのグラウンド(コールド)に高周波ノイズとして入り、プリからさかのぼってCDプレーヤーにまで伝わり、デジタル信号のゼロレベルを変調させてしまうとのこと。それがひいてはデジタルの波形さえ悪くしているという説である。実際、その再生音を比較すると説得力の高い説明に感じたのだが。
CHORD MUSICとSarumTの一番の違いはシールドの厳重さということだが、いかに現代のオーディオが空中を飛び交う電磁波に悪い影響を受けているかを痛感させるテストになった。
スピーカーケーブルの端子のところのシールドの「ある無し」も同様だ。デジタルの高周波の電磁波が飛び交う現代ならではの問題だと思う。スピーカーもアンプもどんどん広帯域化し、SN比も向上。さらにアンダンテラルゴのTMDによって接点でのエネルギーや情報量が伝わる割合が決定的に良くなっているのに電磁波の環境は悪くなる一方だ。対策した音を聴くと元のCDには驚くほどの情報量と、音楽の愉悦が入っているというのに。難しい時代だ。
「CHORD COMPANY」のケーブルを自宅システムで体験できる、無料貸し出しサービスも実施中
本記事は季刊・analog vol.61 Autumnからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから