<山本敦のAV進化論 第193回>
ボーズの3万円台サウンドバー「TV Speaker」は“声”が魅力! シンプル&高音質のハイCP機
■飾らない高音質。人の声を浮かび上がらせるダイアログモード
最初に映像コンテンツの音声から聴いた。本体に搭載するスピーカーの構成は、いずれも中心部分に2基のフルレンジドライバーと1基のトゥイーターを装備する。エンクロージャーの背面にバスレフポートを設けて低音再生を増強している。
Netflixで映画を再生してみる。とてもエネルギッシュなサウンドだ。バランスに偏りがなく、クリアで切れ味にも富んでいる。スリムサイズなのに低音もよく伸びて、ダイナミックな起伏の再現性も豊かだ。画面に映し出される映像に自然な立体感と奥行き方向への広がりが増した。
通常の状態でも、人の声に余計な付帯音が乗らないので十分に聴きやすいのだが、ダイアログモードをオンに切り換えると、声の音像がぐんと前に迫り出してくる。スピーカーの少し手前に浮かぶ人の声に、手を伸ばせば触れることができそうな不思議な感覚だ。全体の音のバランスを崩すことはないので、違和感なく視聴できる。
筆者はあえて目をつぶってアニメを再生しながら、聴覚に意識を全集中させて好きな声優の声を愛でたい時にこの機能を重宝した。普通の使い道であれば、テレビでニュースや情報番組などを見るときに声が聞き取りやすくなってよいと思う。
音楽コンテンツはiPhone 11 ProをBluetoothで接続して、Apple Musicからオマーラ・ポルトゥオンドとブエナビスタ・ソシアルクラブの演奏による「Mariposita de Primavera」を聴いた。滑らかで温かみのあるボーカルが心地よい。弦楽器の余韻のふくよかさがボーズのスピーカーらしく、情熱的な楽曲と自然にマッチした。
低音調整はデフォルトのままでも十分に力強く、抑揚感のあるサウンドを楽しめるが、EDMやロックをどっしりと響かせたいときには少し盛ったり、反対に夜に小音量でもスピーカーで音楽を聴きたい時には最小値まで減らすなど、加減を工夫して楽しめるので心強い。
■使い方を発展させることもできる
アクション映画やゲームの音声を再生する時にBose TV Speakerの音だけでは低音再生が物足りなく感じられるのであれば、「Bose Bass Module」シリーズのサブウーファーを有線接続で使う方法がある。
そして実はBose TV Speakerは、ボーズの一部スピーカーにBluetoothでペアリングできる「Bose SimpleSyncテクノロジー」にも対応している。スマホなどBluetoothに対応するオーディオプレーヤーの音声を、ボーズのスピーカーから受けて再生するイメージだ。対応する製品はスマートスピーカーが「Bose Home Speaker 500/Home Speaker 300」、「Bose Portable Home Speaker」。サウンドバーは「Bose Soundbar 700/Soundbar 500」となる。
Bose Home Speaker 300につないで試したところ、Bose Musicアプリからのペアリング設定はとても簡単だった。Bluetoothによるリレー接続になるので、やはりわずかにだが音のタイミングがずれる。家の中の少し離れた部屋で音楽を聴く、マルチルーム再生に有用な機能と言えそうだ。
Bose TV Speakerは、奇をてらうことのないシンプルな高音質と操作性が楽しめるサウンドバーだった。本機が33,000円で購入できるのであれば、やはり朗報というほかないだろう。ぜひ日本の声優文化を愛するファンの方々にも本機のダイアログモードを試してもらいたいと思う。