【特別企画】-銀河通信- 前編
レコードから天上の響きを引き出す。オーディオ・ノート究極のアナログプレーヤー「GINGA」の秘密に迫る
オーディオ・ノートの試聴室に鎮座するハイエンドターンテーブルシステム「GINGA」。4極シンクロナスモーターによる糸ドライブで、18キロの重量級プラッターが静粛に回転するさまはアナログファンの関心を喚起する。ゆるぎのない安定感を持つ音。天空で奏でられるような妙なる音楽が流れてきた……。そんな超弩級プレーヤーのルーツを知るために、チーフエンジニア廣川嘉行さんの案内で、さあ銀河の旅に出よう。
AUDIO NOTE
アナログプレーヤー「GINGA」
7,854,000円(税込)
※トーンアーム (KONDO V-12) 付属
■創業者の思いを受け継ぎ、究極のアナログプレーヤー開発に着手
2009年に発表した「GINGA」はどう生まれたのか。開発経緯としては、2006年の1月に他界した近藤公康会長(創業者)が「うちの機材を用いてアナログレコード再生のイベントをやろう」と提案、会場の下見までしていたそうだ。
カリスマ指導者亡き後を危ぶむ声もある中で、スタートしたのが新型ターンテーブルの開発だった。芦澤雅基社長のもと、新体制の堅実さを内外に示すべく、また近藤会長が実現したかったであろう究極のターンテーブルの開発を決定したのだ。
そのオーディオ・ノート初となるターンテーブル開発の指示を受けたのが廣川さんだった。 “未来の銘機” を目指して構想を練ることになる。当時は海外でも一部のメーカーしか高級ターンテーブルが出ていない時代。1970年代のターンテーブル関係の文献や資料を詳細に調べ、また自身のオーディオマニアとしての経験をもとに研究していった。
第1回目の今回は、基本的な構造をどのようなものにするか。それにドライブ方式と動力となるモーターについて探査したい。
■リジッドな重量級キャビネットに、美しさと静寂感をもたらす糸ドライブを採用
まずは基本構造だが、ターンテーブルには、大きく分けてフローティングタイプとリジットタイプがある。当時はデジタルオーディオ機器も熟成が進み、デジタル派かアナログ派かと議論が盛んな頃だったが、ノスタルジックなものでもなく極端に前衛的なものでもない。両派を説得できる “真の音楽派” ともいうべき音をイメージしたそうだ。
そのためには、まず音溝の情報を正確にピックアップする必要がある。音溝の振動を下の方で吸収するのではなく、それをしっかり受け止めて完璧にトレースする。ダイレクトな音と安定した音を得るために重量級リジットタイプを選択したのである。情報量を多く感じる音ではなく、本当に情報量の多い “自然” な音を目指したそうで、脚部は3点スパイク大径ネジ方式として、しっかりした設置と水平の出しやすさが考慮されている。
ドライブの伝達方式は何がよいか。一般的には力強さや躍動感ではアイドラー、美しさと静寂感ではベルトといった印象だが、GINGAでは糸ドライブを選択。逆にいえば重量級プラッターでなければ選べない動作方式だ。軽量級だと中々良さが出てこないやり方である。
さて音質はどうか。糸とベルトを比較試聴すると、糸の方がオープンで素直な音が得られたそうだ。「僕自信も学生のころに色々いじっていましたが、改めて実験してみて、一番素直でオープンな音がする方式ですね。過去の文献にも良く出ていた方式ですが、糸の結び目ができてしまう問題があり、どうすればなくせるのか検討しました」と廣川氏。
■ACかDCか、駆動モーターも検討。躍動感を感じるACシンクロナスモーターを採用
駆動するモーターは、大きく分けてDCサーボとACシンクロナスというタイプがある、DCモーターの場合には回転数維持のために回転数の検出からフィードバックをかけてもう一回ドライブという、アンプでいえばNFBのようなループができあがる。音も強NFBアンプと無帰還のような違いがあるのではないだろうか。これもDCサーボユニットとACシンクロナスモーターで音を比較したそうだ。
廣川氏によると、「DCサーボは、優等生的だけれど面白味に欠けます。ACシンクロナスの方は、有機的かつ躍動感を感じる音だったので、迷いなくACシンクロナスタイプを採用しました」と語る。
だが、ここにも過去の文献を見て引っかかるポイントがあった。ACシンクロナスでは、進相コンデンサーが必要になるが、定数が同じでもコンデンサーの銘柄を変えると音が変わるというのだ。じゃあ進相コンデンサーなしで、モーターを回す方法を考えればいいじゃないか!
これが、進相コンデンサーを使わない2chの発振回路を用いた低歪駆動電源の開発へと繋がっていく訳だが、詳細は次回に譲りたい。
アナログプレーヤー「GINGA」
7,854,000円(税込)
※トーンアーム (KONDO V-12) 付属
■創業者の思いを受け継ぎ、究極のアナログプレーヤー開発に着手
2009年に発表した「GINGA」はどう生まれたのか。開発経緯としては、2006年の1月に他界した近藤公康会長(創業者)が「うちの機材を用いてアナログレコード再生のイベントをやろう」と提案、会場の下見までしていたそうだ。
カリスマ指導者亡き後を危ぶむ声もある中で、スタートしたのが新型ターンテーブルの開発だった。芦澤雅基社長のもと、新体制の堅実さを内外に示すべく、また近藤会長が実現したかったであろう究極のターンテーブルの開発を決定したのだ。
そのオーディオ・ノート初となるターンテーブル開発の指示を受けたのが廣川さんだった。 “未来の銘機” を目指して構想を練ることになる。当時は海外でも一部のメーカーしか高級ターンテーブルが出ていない時代。1970年代のターンテーブル関係の文献や資料を詳細に調べ、また自身のオーディオマニアとしての経験をもとに研究していった。
第1回目の今回は、基本的な構造をどのようなものにするか。それにドライブ方式と動力となるモーターについて探査したい。
■リジッドな重量級キャビネットに、美しさと静寂感をもたらす糸ドライブを採用
まずは基本構造だが、ターンテーブルには、大きく分けてフローティングタイプとリジットタイプがある。当時はデジタルオーディオ機器も熟成が進み、デジタル派かアナログ派かと議論が盛んな頃だったが、ノスタルジックなものでもなく極端に前衛的なものでもない。両派を説得できる “真の音楽派” ともいうべき音をイメージしたそうだ。
そのためには、まず音溝の情報を正確にピックアップする必要がある。音溝の振動を下の方で吸収するのではなく、それをしっかり受け止めて完璧にトレースする。ダイレクトな音と安定した音を得るために重量級リジットタイプを選択したのである。情報量を多く感じる音ではなく、本当に情報量の多い “自然” な音を目指したそうで、脚部は3点スパイク大径ネジ方式として、しっかりした設置と水平の出しやすさが考慮されている。
ドライブの伝達方式は何がよいか。一般的には力強さや躍動感ではアイドラー、美しさと静寂感ではベルトといった印象だが、GINGAでは糸ドライブを選択。逆にいえば重量級プラッターでなければ選べない動作方式だ。軽量級だと中々良さが出てこないやり方である。
さて音質はどうか。糸とベルトを比較試聴すると、糸の方がオープンで素直な音が得られたそうだ。「僕自信も学生のころに色々いじっていましたが、改めて実験してみて、一番素直でオープンな音がする方式ですね。過去の文献にも良く出ていた方式ですが、糸の結び目ができてしまう問題があり、どうすればなくせるのか検討しました」と廣川氏。
■ACかDCか、駆動モーターも検討。躍動感を感じるACシンクロナスモーターを採用
駆動するモーターは、大きく分けてDCサーボとACシンクロナスというタイプがある、DCモーターの場合には回転数維持のために回転数の検出からフィードバックをかけてもう一回ドライブという、アンプでいえばNFBのようなループができあがる。音も強NFBアンプと無帰還のような違いがあるのではないだろうか。これもDCサーボユニットとACシンクロナスモーターで音を比較したそうだ。
廣川氏によると、「DCサーボは、優等生的だけれど面白味に欠けます。ACシンクロナスの方は、有機的かつ躍動感を感じる音だったので、迷いなくACシンクロナスタイプを採用しました」と語る。
だが、ここにも過去の文献を見て引っかかるポイントがあった。ACシンクロナスでは、進相コンデンサーが必要になるが、定数が同じでもコンデンサーの銘柄を変えると音が変わるというのだ。じゃあ進相コンデンサーなしで、モーターを回す方法を考えればいいじゃないか!
これが、進相コンデンサーを使わない2chの発振回路を用いた低歪駆動電源の開発へと繋がっていく訳だが、詳細は次回に譲りたい。