坂本龍一『Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020』体感レポート
坂本龍一による「MUSIC/SLASH」初のハイレゾ配信を、本気のオーディオで聴いてみた
■ハイレゾの難しい条件をクリアしたことは評価できるが、通信環境の課題も
今回、「MUSIC/SLASH Premium」アプリを用いたストリーミング再生という、ハイレゾの器を生かすための手法を初めて用いたライブであったが、サウンド面においてはその効果を十二分に味わうことができたと感じている。ピアノというダイナミックレンジの広い楽器を抑揚良く、繊細にトレースし、余韻も滲みなく、粗のない階調の細やかな響きを的確に聴かせてくれた。この難しい条件をハイレゾの器を持ってクリアしたという点は非常に評価できるポイントである。
一方で、ロスレス圧縮方式MPEG-4 ALSを導入した手法の一例として有意義な体験を得ることができたが、課題も少なくない。
スタンダード版での再生では試聴室のWi-Fiを使っていたが、ライブ後半は何度も停止してしまった。本番前の再生環境テストで問題がなくても、各世帯や地域の通信環境は時間帯によって安定しないことはよくある。もちろんこれはMUSIC/SLASH側のせいではないし、一戸建てで安定した光通信を独り占めできる環境であれば問題はないと思われるが、マンションなどの集合住宅環境では通信速度の変動も大きく、これからのハイレゾストリーミングでは少なからず影響があるのではないか。
その点、モバイル端末であればそのくびきから解き放たれ、「MUSIC/SLASH Premium」アプリ連携で快適にハイレゾストリーミングが楽しめるが、通信量も気にせねばならない。今回は5G対応のハイエンドスマホを使い、通信キャリアの5Gキャンペーンによる「通信データ量使い放題」の恩恵にあずかった。5G時代に突入し、今後料金体系も安くなっていくものと思われるが、フルHD以上の高画質を楽しむのにモバイル端末の小さな画面では物足りない。最終的には4Kテレビを含めた環境でハイレゾストリーミングを楽しめるようになってほしいと感じた次第だ。
<『Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020』セットリスト>
●配信日:2020年12月12日(土)19:30(JST) 開始予定
●配信先:日本、アメリカ、台湾、タイ、韓国、シンガポール、カナダ、オーストラリア
1.「andata」
2.「美貌の青空」
3.「Aqua」
4.「aubade」
5.「青猫のトルソ」
6.「水の中のバガテル」
7.「Before Long」
8.「Perspective」
9.「energy flow」
10.「The Sheltering Sky」
11.「the last emperor」
12.「種子と種を蒔く人」
13.「Merry Christmas Mr.Lawrence」
14.「MUJI2020」