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“シャープで厚い”、矛盾を実現したサウンド。ELAC新ラインSOLANO 280「FS 287/BS 283」レビュー
■FS 287:一種オーディオ離れしたような音のリアリティ
まずはフロア型の287から試聴を開始した。最初にシャープで厚いと言ったが、シャープなのは立ち上がりが速いからだし、厚いのは情報量が多いのである。決してエネルギーが低域に寄って、ぼってりしているのではない。
しかし、そんなことよりもっと印象的なのは出てくる音のリアリティ、スピーカーが鳴っているのではないような一種オーディオ離れしたような音の出方である。一般には音離れがいいというのかもしれないが、そんな月並みな言葉で表しきれるものではない。
スピーカーを離れたところに音がある。そこから出てくる音をじかに聴いている感覚。音場そのものがそこにでき上がっている。
アルビノーニのオーボエ協奏曲を聴いてみると、最初はチェロの胴鳴りが大きすぎるかと思ったがそうではない。実際にそういう風に鳴っているのだ。オーボエもヴァイオリンやチェンバロも肉質感が高く、みっしりと中身の詰まった厚手の質感を持つ。それが目の前の空間から出ている。その響きの濃密さと余韻の豊かさが、並大抵のものではない。
ピアノはまたくっきりしたタッチで、やはり質感の締まった力強さを感じる。把握力が高いため腰が据わって手触りががっしりと強く、その感触のまま多彩なニュアンスが明滅して音楽が流れ去ってしまう。曲想のとおりに仄暗い背景が見えるような鳴り方である。
室内楽もまったく同様だが、3つの楽器それぞれが独立した存在感を備えてさらに立体的だ。ヴァイオリンの明晰な線のエッジとチェロの深い量感が、たっぷりとした抑揚を呼んでスケールが大きい。こういった再現が本機の聴きどころのひとつと言っていい。
マドリガルはスピーカー前面のラインよりもっと後方に音場が広がっているため、奥行の出方がいっそうリアルだ。ステージの手前少し下の方から見上げると、こんな感じかという実体感が湧いてくる。響きの豊かさがそう感じさせるのかもしれない。
オーケストラは幅の広いダイナミズムがフル稼働しているイメージで、強弱の対比が非常に鮮やかだ。フォルテの強靭なアタックは終始鮮烈だが、緩やかな中間部は弦楽器と木管のアンサンブルが低音弦の厚い響きに乗ってのどかで色鮮やかだ。エネルギーの厚い躍動感。その余裕と瞬発力が魅惑の源である。
■BS 283:完成度の高さを証明するエネルギー感あるサウンド
続けて小型2ウェイの283…なのだが、困ったことに音調はまったくと言っていいほど変わらないのである。ウーファーは一つになったが、それだけトゥイーターとのつながりが明確でもあるし、空間のサイズによってはこの方が飽和しないということも言える。これだけ音が違わないということは、完成度が極めて高いことの反映でもあるわけだ。
同じ文章を繰り返してもしかたがないので、ブックシェルフ型ならではのところだけかいつまんでおく。ピアノは音場のスケールといいタッチの感触といい287とそっくりそのままだが、音像はむしろまとまりやすいと言えるかもしれない。低域がふやけにくいので、鳴らしやすいということでもある。また室内楽の低域が若干軽快に感じられるのは構成の違いによるものだが、音程は同じように深く沈みエネルギーもきちんと乗っている。余計な量感が乗らないことがポイントである。
マドリガルはかえってピンポイントで声の位置感がよくわかる。音場はスピーカーの前面ライン辺りまで出てくるので少し近くで見ている雰囲気だが、一人一人の存在感はやはりリアルそのものである。オーケストラはまったく違和感がない。そしてジャズの厚手の躍動感も特筆しておきたい。
最後にもうひとつ、アナログの充実した鳴り方にも触れておかないわけにはいかない。ソースにもよるのだろうが、ことによるとアナログの方がいいかもしれないと思った瞬間さえあるのだ。
これほどレコードを思うように鳴らしてしまうスピーカーというのはいったい…!? 少なくともひとつだけ言えるのは、あらゆる性能が極めて高度に磨き上げられているということである。
VELAのコンセプトを受け継ぎながら、部分的にはそれを乗り越えてしまったような気さえする。頼もしいシリーズの今後に強く期待したい。
(協力:株式会社ユキム)