ついに登場
アップル「AirTag」レビュー。便利なところ、不満なところは?
AirTagを装着した大切なアイテムを身の回りで探してはみたものの、いよいよ見当たらない時には、「探す」アプリのアイテムページを開いて「紛失モード」を有効にして、見つけてくれた誰かから連絡がもらえるように電話番号を登録しておこう。
AirTagは他のアップルのデバイスと同様に、アイテムの持ち主から遠く離れたBluetooth圏外にある場合でも、世界中にあるアップルのデバイスどうしが安全なBluetooth信号により互いに通信を交わしながらつながる広大な「探す」ネットワークの網に検知された時に、位置情報を伝えてくれる。
「探す」アプリの設定から「検出時に通知」をオンにすると、紛失したアイテムが近くにある場合、または誰かが近づいた時に位置情報とともに通知が届く。
ユーザーのAirTagには位置情報とその履歴は記録されない。また「探す」ネットワークとの通信はEnd to Endで暗号化されている。結果、AirTagのユーザーだけが「探す」アプリのマップから探し物の現在地がわかるようになっており、探す手伝いをしたデバイスの情報はアップルを含む誰にも知られることがないようプライバシーは厳重に保護される。
■AirTagが付いた落とし物らしきものを見つけた時の対処方法
もし誰かが紛失したと思われるアイテムにAirTagが装着されていた場合は、NFC機能を内蔵するiPhone、またはAndroidスマホをかざすと、ブラウザに持ち主が紛失モードを有効にする時に登録した電話番号が表示される。
もちろんこちらに電話をかけて、見つけたことを直接伝えてあげることが親切だと思うが、電話をかけることに抵抗感があるという方もいるだろう。紛失モードに切り換える際、電話番号以外にメールアドレスも登録できれば、海外旅行の際に紛失、あるいは盗まれたものが返ってくる可能性も高くなりそうな気がする。
「落とし物にAirTagが付いていたら、NFC搭載スマホをかざすと連絡先が調べられる」ということを、アップルが自社のデバイスに関心のない人にもウェブサイトや、コマーシャルなど媒体を通じて広く知らせることも大切だと思う。「探す」ネットワークのことを把握してサポートしてくれる仲間はなるべく多い方が良いからだ。
■AirTagは「悪い事」のために使えない
AirTagは、ユーザー自身が大切な持ち物の紛失に備えて使うためのスマートトラッカーだ。ところが悪意を持つユーザーが他者の行動を追跡・監視したり、不正な用途に使おうとすることもあり得なくはない。
AirTagは不要な追跡に使われないように設計されている。iPhoneなどiOSデバイスの側にもまた、ユーザーのApple IDにひも付けられていないAirTagを検知できる機能がある。例えば知らぬ間に服のポケットやバッグの中にAirTagを入れられて、行動を監視されていたということが発生しないように、自分のものではないAirTagを身に着けて一定時間移動するとユーザーのiPhoneに通知が届く。もしユーザーがiOSデバイスを持っていない場合は、AirTagが音を鳴らして注意を喚起する。
不審なAirTagにNFC機能を搭載するスマホをかざすと、ブラウザが立ち上がってデバイス固有のシリアル番号と、即座にAirTagを無効にするための対処方法として「電池の外し方」のガイダンスが画面に表示される。不審なAirTagが自分に付けられていることを知った瞬間は気が動転して本体ごと捨ててしまうかもしれない。後に警察等に届け出る際に犯人を探すための貴重な資料にもなるので、いったん落ち着いてシリアル番号が表示されている画面をキャプチャしたり、メモを取ってから近くの交番に持ち込んで相談しよう。
このように登録されているユーザーの側を離れてAirTagが動き回った場合にビープ音が鳴ってしまうことからも、ペットなど動物の現在位置を把握したり、離れて暮らす高齢の家族を見守るための用途にはAirTagが不向きということになる。家族を見守る用途であればApple Watchのファミリー共有機能を使うか、またはiPhoneなどスマホを使って連絡を取り合う手段がベターだ。
■AirTagに感じた不満点
AirTagは「シンプル・イズ・ザ・ベスト」をコンセプトとする製品なので、これ以上の機能追加は本来望むべきではないかもしれない。わかったうえで、あえてひとつリクエストしたいことは、せっかく音が鳴らせるデバイスなのだからビープ音を複数のパターンから選べるようにしてほしい。
「探す」アプリからユーザーが自身で「サウンドを再生」を選択すると、現在はかわいらしいビープ音が数回鳴って止む仕様になっている。例えばAirTagを付けたハンドバッグをひったくられてしまった場合、もっと大音量でけたたましい音のブザーを素速く鳴らせればもしものとき役に立ちそうだ。
■今後は「探す」対応のアクセサリーも増える
アップルは今年の春、Made for iPhone(MFi)プログラムの一環として『「探す」ネットワーク対応アクセサリプログラム(The Find My Network Accessory Program)』を立ち上げる。「探す」ネットワークに対応するサードパーティのデバイスやアクセサリーを増やすためだ。アップルが定める厳しいプライバシー保護の基準を満たす製品であれば、外部パートナーのメーカーはカテゴリーを問わず、「探す」アプリによるトラッキングが可能な製品を作って販売できるようになる。対応する製品はパッケージ等に「Works with Apple Find Myバッジ」を付けることもできる。
既にサードパーティの製品ではChipoloのスマートトラッカー「Chipolo ONE Spot」や、VanMoofの電動自転車「S3」、Belkinのワイヤレスイヤホン「SOUNDFORM Freedom True Wireless Earbuds」が「探す」ネットワークのエコシステムに対応する機能をビルトインした製品の発売を予告している。
世界にはiPhoneをはじめとするアップルのデバイスを使う多くのユーザーがいる。また特に日本にはiPhoneユーザーの人口比率が多いと言われているだけに、密度の濃い「探す」ネットワークによって、AirTagを装着した大切な持ち物が見つかりやすいかもしれない。
そもそもアップルの「探す」アプリは便利なのに、自分はモノを紛失する心配はないと高をくくって、アプリの実力を引き出せていない人も多くいるだろう。3,800円から購入できるAirTagが、アップルのデバイスを使うユーザーに「探す」ネットワークの価値を再認識させる役目も担うことになりそうだ。