【特別企画】理想のためにDACをすべて自社設計
LINN 新時代のフラグシップ「KLIMAX DSM」登場! ディスクリートDAC「ORGANIK」の実力とは
■本質的な技術革新に挑戦。14年ぶりにフルモデルチェンジされるKLIMAX
リンがKLIMAX DSを発売したのは2007年のことだった。それから14年後のこの4月、初のフルモデルチェンジを敢行。同社の製品はアップグレード前提の設計が基本なので、ソフトウェアや回路技術を更新するごとに最新仕様に生まれ変わる。しかし、今回はそうした変更では対応できないほどの本質的な技術革新に成功し、完全な新規設計に踏み切った。外見だけでなく、中身も完全に生まれ変わっているのだ。
長く親しんできた現行モデルのデザインが消えてしまうのは寂しい気もするが、アルミとガラスが美しく調和した新しい筐体の存在感は圧倒的で、精密に仕上げられたガラス製ダイヤルやフロントパネルの質感の高さに目が釘付けになる。シルバーに加えてブラック仕上げも新たに登場。照明を落とした部屋で文字だけが浮かび上がる光景にハッとさせられた。スクエアでソリッドな意匠は「SELEKT DSM」で初めて導入され、その後に「MAJIK DSM」が受け継いだ。いま思えば、今回のデザインの原型はそのときすでに完成していたのかもしれない。
独自開発のDACアーキテクチャ「ORGANIK(オーガニック)」を導入したことは、筐体のリニューアル以上にインパクトが強く、技術的なブレークスルーの達成を強く印象付ける。まさに今回のモデルチェンジのハイライトである。
KLIMAX DSMの最終形はAKMと歩調を合わせて開発した「KATALYST」を採用し、フラグシップにふさわしい高音質を実現していた。だが、リンの設計陣はそこで満足することなく、さらに上のレベルを目指して開発を進め、既存のDACに頼っていては限界があることを意識するようになったという。理想の音に近付くためには、DA変換回路の入口から出口まで、すべて自社で開発することが不可欠という結論に至ったのだ。
リンはKLIMAX DS初代機の段階で規模の大きなFPGAをいち早く採用し、アップサンプリングをはじめとする周辺回路を独自アルゴリズムで構築して、既存DACチップだけに依存しない回路設計にこだわってきた。各ステージごとに独立した電源供給を行うKATALYSTを開発した理由もそこにある。
ORGANIKはその思想をさらに徹底し、AD変換回路も含めると4個のFPGAを用いて全ステージを一から設計し直すことで独自性を貫いている。ちなみにAD用FPGA以外については、HDMI入力用FPGA、リクロックやスペースオプティマイゼーションの処理を行うコアFPGA、そして主役のORGANIK DAC用FPGAという構成になる。FPGAはプログラムの書き換えに対応する大規模集積回路なので、ファームウェアを更新して内容を一新することもあらかじめ想定済み。従来以上にアップグレードの余地を確保しているのは、いかにもリンらしいアプローチだ。
4つ目のFPGAはDA変換回路の前段に相当し、アップサンプリング、DSD信号の移動平均フィルター、48bit精度のボリューム調整、PWM変調などの処理を担う。その出力がDA変換回路の後段に相当するアナログFIRフィルターに受け渡されるわけだが、同フィルター回路は8層基板の表裏にチャンネルあたり32エレメントを配置した文字通りのディスクリート構成。左右対称に配置された素子群のレイアウトが美しく、信号の流れが目に見えるようだ。ルンダール社の出力トランスはRCAアナログ出力専用の装備とされる。
KLIMAX DSの初代機は純粋なネットワークプレーヤーとして登場したが、その後に外部入力に対応するプリアンプ内蔵のDSMバージョンが発売された。今回の新世代モデルにはプレーヤー専用機は用意されないが、HDMI端子の有無で2種類の仕様が存在する。
アナログ入力はRCAとXLR、デジタルはLAN、光LAN(SFP)、USB-B、Wi-Fi、Bluetooth。S/PDIF(BNC)と多才な入力がそなわる。一台で大半のストリーミングオーディオを網羅するだけでなく、HDMI端子付きのAVモデルならBlu-rayなど映像メディアの音声もORGANIKを介した高音質再生ができることに注目したい。なお、ORGANIKはDSD信号についても対応が進化しており、今回から最大11.2MHzまで再生できるようになった。
リンがKLIMAX DSを発売したのは2007年のことだった。それから14年後のこの4月、初のフルモデルチェンジを敢行。同社の製品はアップグレード前提の設計が基本なので、ソフトウェアや回路技術を更新するごとに最新仕様に生まれ変わる。しかし、今回はそうした変更では対応できないほどの本質的な技術革新に成功し、完全な新規設計に踏み切った。外見だけでなく、中身も完全に生まれ変わっているのだ。
長く親しんできた現行モデルのデザインが消えてしまうのは寂しい気もするが、アルミとガラスが美しく調和した新しい筐体の存在感は圧倒的で、精密に仕上げられたガラス製ダイヤルやフロントパネルの質感の高さに目が釘付けになる。シルバーに加えてブラック仕上げも新たに登場。照明を落とした部屋で文字だけが浮かび上がる光景にハッとさせられた。スクエアでソリッドな意匠は「SELEKT DSM」で初めて導入され、その後に「MAJIK DSM」が受け継いだ。いま思えば、今回のデザインの原型はそのときすでに完成していたのかもしれない。
独自開発のDACアーキテクチャ「ORGANIK(オーガニック)」を導入したことは、筐体のリニューアル以上にインパクトが強く、技術的なブレークスルーの達成を強く印象付ける。まさに今回のモデルチェンジのハイライトである。
KLIMAX DSMの最終形はAKMと歩調を合わせて開発した「KATALYST」を採用し、フラグシップにふさわしい高音質を実現していた。だが、リンの設計陣はそこで満足することなく、さらに上のレベルを目指して開発を進め、既存のDACに頼っていては限界があることを意識するようになったという。理想の音に近付くためには、DA変換回路の入口から出口まで、すべて自社で開発することが不可欠という結論に至ったのだ。
リンはKLIMAX DS初代機の段階で規模の大きなFPGAをいち早く採用し、アップサンプリングをはじめとする周辺回路を独自アルゴリズムで構築して、既存DACチップだけに依存しない回路設計にこだわってきた。各ステージごとに独立した電源供給を行うKATALYSTを開発した理由もそこにある。
ORGANIKはその思想をさらに徹底し、AD変換回路も含めると4個のFPGAを用いて全ステージを一から設計し直すことで独自性を貫いている。ちなみにAD用FPGA以外については、HDMI入力用FPGA、リクロックやスペースオプティマイゼーションの処理を行うコアFPGA、そして主役のORGANIK DAC用FPGAという構成になる。FPGAはプログラムの書き換えに対応する大規模集積回路なので、ファームウェアを更新して内容を一新することもあらかじめ想定済み。従来以上にアップグレードの余地を確保しているのは、いかにもリンらしいアプローチだ。
4つ目のFPGAはDA変換回路の前段に相当し、アップサンプリング、DSD信号の移動平均フィルター、48bit精度のボリューム調整、PWM変調などの処理を担う。その出力がDA変換回路の後段に相当するアナログFIRフィルターに受け渡されるわけだが、同フィルター回路は8層基板の表裏にチャンネルあたり32エレメントを配置した文字通りのディスクリート構成。左右対称に配置された素子群のレイアウトが美しく、信号の流れが目に見えるようだ。ルンダール社の出力トランスはRCAアナログ出力専用の装備とされる。
KLIMAX DSの初代機は純粋なネットワークプレーヤーとして登場したが、その後に外部入力に対応するプリアンプ内蔵のDSMバージョンが発売された。今回の新世代モデルにはプレーヤー専用機は用意されないが、HDMI端子の有無で2種類の仕様が存在する。
アナログ入力はRCAとXLR、デジタルはLAN、光LAN(SFP)、USB-B、Wi-Fi、Bluetooth。S/PDIF(BNC)と多才な入力がそなわる。一台で大半のストリーミングオーディオを網羅するだけでなく、HDMI端子付きのAVモデルならBlu-rayなど映像メディアの音声もORGANIKを介した高音質再生ができることに注目したい。なお、ORGANIKはDSD信号についても対応が進化しており、今回から最大11.2MHzまで再生できるようになった。
次ページ旧KLIMAXと比較試聴。プリアンプとしての音やTIDALも確認