【特別企画】DSPの進化とAuro-3D対応がもたらすサウンド
デノン新旧AVアンプを比較。最新モデル「AVR-X4700H」に買い換える意義とは
映像音響の変化のスピードは早い。2020年頃に登場した新規格は、オーディオフォーマットだけでIMAX ENHANCED、DTS:X Pro、MPEG-4 AACが挙げられる。そのようにさまざまな規格が混在するオーディオビジュアルにおいて、システムのハブ的な存在となるのがAVアンプだ。
これらの規格には互換性が担保されているので、旧製品のAVアンプでも最新の映像作品を見て聴いて楽しむことはできる。しかし、作り手が精魂傾けて生まれたコンテンツを最新最良の100%のクオリティで享受したいというのは、私たちオーディオビジュアルファイルの性(さが)であり、大げさにいえば、AVという“感性への贈り物”を全身全霊で受け止めたい人間の審美的な本能でもあるのだ。
筆者のリファレンスAVアンプであるデノン「AVR-X6300H」は、2016年秋発売のイマーシブサウンド(ドルビーアトモス、DTS:X)に対応した第二世代機で、自宅システムへの導入から約4年が経過した。雑誌やウェブ記事の視聴に大車輪で活躍してきたが、この2、3年のAuro-3Dはじめとする新フォーマット登場で、機能の不足がぼちぼち目立ってきた。
決定打が、高速大容量のHDMI2.1の登場。新世代ゲーム機の好調を背景に、8Kコンテンツの流通も間近だ。Auro-3Dエンコードソフトも少なくなく、その対応も急がれる。正直なところ「気もそぞろ」だった。
「デノンのHDMI2.1に対応する最新世代のサラウンドアンプと、大橋さんが使用するものと同世代のモデル同士を聴き比べて、進歩の度合いを確かめてみませんか?」ファイルウェブ編集部からこんな提案がきたのは、視聴の折にモヤモヤと好奇心が溜まっていった、そんな毎日のさなかだった。二つ返事で引き受けたのはいうまでもない。
今回の視聴の主役は、昨秋発売された現役バリバリのサラウンドアンプ「AVR-X4700H」である。9.2chパワーアンプ内蔵(プリアウトは11.2chまで処理可能)の一体型で、HDMI2.1対応機。AVアンプのシェアで独走するデノンの、ラインナップの中核をなす製品である。
比較対象となるのは、2世代前の同社同ランクのアンプ。実は筆者が使用中のサラウンドアンプは、これの上位機種にあたる。つまり今回のX4700Hと旧世代機との比較結果が、そのまま筆者所有のX6300Hから最新世代「AVC-X6700H」への音質と機能の伸びしろとなるわけだ。期待と不安を抱いて、川崎市日進町のD&Mホールディングス内デノン試聴室へ赴いたのであった。
■8K・HDMI2.1など新規格への対応のみならず、音質面も着実に進化
まずはAVR-X4700Hが、およそ4年前のモデルと比較して、どれだけの進化を達成したのか跡づけてみよう。デジタル面では、DSPに最上位機種と同等のデバイスを採用したことが特筆大書に値する。2世代前はファルコンのシングルコアだったが、「AVC-X8500H」と同等であるグリフィンライトのクワッドコアタイプの2個使いになり、基板も新しく起こし、コンデンサも要所要所で高音質なものに変更されている。
デノンの考えでは「DACはアナログ回路」であり、地道な音質の追求がものをいう。例えばD/A変換過程では必ずノイズが発生するため、DAC内部のフィルターで取り除くが、取り切れず出力される分は後段のオペアンプでノイズを取り除く。そのオペアンプの動作(ポストフィルター)を、スイッチングのないA級動作とした。ハイファイの常道である。ほか、9ch同時出力に備え電源部を強化、15000μFのカスタムコンデンサ、カスタムELコアトランスを搭載している。
デノンはパワーアンプの搭載数によってアンプブロックとヒートシンクのレイアウトを変えているが、最適化もさらに進んだ。パワーアンプ基板の垂直レイアウトがType3(5ch+4ch)に発展し、接続したヒートシンクを2枚に分離、クロストークを低減した。他にカスタム電子ボリュームの採用、1.0mm(シャーシ厚)+1.2mm(トランスベース厚)のダブルレイヤーシャーシ採用など、世代を重ねることで性能を向上させながらも、内部密度はコンパクトになっているのだ。
これらの規格には互換性が担保されているので、旧製品のAVアンプでも最新の映像作品を見て聴いて楽しむことはできる。しかし、作り手が精魂傾けて生まれたコンテンツを最新最良の100%のクオリティで享受したいというのは、私たちオーディオビジュアルファイルの性(さが)であり、大げさにいえば、AVという“感性への贈り物”を全身全霊で受け止めたい人間の審美的な本能でもあるのだ。
筆者のリファレンスAVアンプであるデノン「AVR-X6300H」は、2016年秋発売のイマーシブサウンド(ドルビーアトモス、DTS:X)に対応した第二世代機で、自宅システムへの導入から約4年が経過した。雑誌やウェブ記事の視聴に大車輪で活躍してきたが、この2、3年のAuro-3Dはじめとする新フォーマット登場で、機能の不足がぼちぼち目立ってきた。
決定打が、高速大容量のHDMI2.1の登場。新世代ゲーム機の好調を背景に、8Kコンテンツの流通も間近だ。Auro-3Dエンコードソフトも少なくなく、その対応も急がれる。正直なところ「気もそぞろ」だった。
「デノンのHDMI2.1に対応する最新世代のサラウンドアンプと、大橋さんが使用するものと同世代のモデル同士を聴き比べて、進歩の度合いを確かめてみませんか?」ファイルウェブ編集部からこんな提案がきたのは、視聴の折にモヤモヤと好奇心が溜まっていった、そんな毎日のさなかだった。二つ返事で引き受けたのはいうまでもない。
今回の視聴の主役は、昨秋発売された現役バリバリのサラウンドアンプ「AVR-X4700H」である。9.2chパワーアンプ内蔵(プリアウトは11.2chまで処理可能)の一体型で、HDMI2.1対応機。AVアンプのシェアで独走するデノンの、ラインナップの中核をなす製品である。
比較対象となるのは、2世代前の同社同ランクのアンプ。実は筆者が使用中のサラウンドアンプは、これの上位機種にあたる。つまり今回のX4700Hと旧世代機との比較結果が、そのまま筆者所有のX6300Hから最新世代「AVC-X6700H」への音質と機能の伸びしろとなるわけだ。期待と不安を抱いて、川崎市日進町のD&Mホールディングス内デノン試聴室へ赴いたのであった。
■8K・HDMI2.1など新規格への対応のみならず、音質面も着実に進化
まずはAVR-X4700Hが、およそ4年前のモデルと比較して、どれだけの進化を達成したのか跡づけてみよう。デジタル面では、DSPに最上位機種と同等のデバイスを採用したことが特筆大書に値する。2世代前はファルコンのシングルコアだったが、「AVC-X8500H」と同等であるグリフィンライトのクワッドコアタイプの2個使いになり、基板も新しく起こし、コンデンサも要所要所で高音質なものに変更されている。
デノンの考えでは「DACはアナログ回路」であり、地道な音質の追求がものをいう。例えばD/A変換過程では必ずノイズが発生するため、DAC内部のフィルターで取り除くが、取り切れず出力される分は後段のオペアンプでノイズを取り除く。そのオペアンプの動作(ポストフィルター)を、スイッチングのないA級動作とした。ハイファイの常道である。ほか、9ch同時出力に備え電源部を強化、15000μFのカスタムコンデンサ、カスタムELコアトランスを搭載している。
デノンはパワーアンプの搭載数によってアンプブロックとヒートシンクのレイアウトを変えているが、最適化もさらに進んだ。パワーアンプ基板の垂直レイアウトがType3(5ch+4ch)に発展し、接続したヒートシンクを2枚に分離、クロストークを低減した。他にカスタム電子ボリュームの採用、1.0mm(シャーシ厚)+1.2mm(トランスベース厚)のダブルレイヤーシャーシ採用など、世代を重ねることで性能を向上させながらも、内部密度はコンパクトになっているのだ。
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