【特別企画】音場の立体感に効果あり
ディスクリート技術を初投入した「Grandioso G1X」。安定したクロック供給で空間描写をさらに追い込む
エソテリックより最高峰のマスタークロック・ジェネレーター「Grandioso G1X」が登場した。最大サイズのSCカット・クリスタル振動子を採用し、独自のディスクリート技術によって生まれたクロック・モジュール「Master Sound Discrete Clock」を搭載。その効果を確認しよう。
■独自のディスクリート構成をクロックジェネレーターにも導入
エソテリックから登場した「Grandioso G1X」は、同社のクロックジェネレーターの最上位モデルだ。シリーズ共通の優美かつ堅牢な筐体、電源も回路ごとに細分化するなど、前作のG1ですでに外部クロックとしての性能を極めたかに思われたが、これまでとは異なる発想で性能をさらに改善することに成功したという。いったいどんな方法を使ったのだろうか。
エソテリックのディスク再生システムにおける近年の技術的な成果の一つが自社開発のMaster Sound Discrete DACだ。理想の音に近付くために独自設計のDA変換回路を開発したわけだが、実は今回の「G1X」もその設計思想をある意味で継承している。
今回はクロックジェネレーターの心臓部にあたる発振ユニットそのものを見直した。従来は専業メーカーが設計した良質な発振器を用いて独自設計の周辺回路と組み合わせていたのだが、それをすべて自社設計の新しいシステム「Master Sound Discrete Clock」に置き換えたのだ。大型のクリスタル振動子と組み合わせる温度制御システムや周辺回路を独自に設計。安定したクロック供給を実現するために基本設計を一から見直し、性能改善に成功したという。
大型のクリスタル振動子は専用設計の金属製大型チャンバーに格納し、真空断熱技術によって高精度な温度制御を行う。恒温槽を採用する例はこれまでもあったが、真空断熱処理を適用する専用チャンバーを導入することで、「G1X」では桁違いにきめ細かい温度制御ができるという。温度は約85度に設定されるが、最適な温度は水晶振動子ごとに微妙な違いがあり、ひとつひとつに個別の温度を設定して管理するそうだ。
振動子、制御回路、ヒーターそれぞれに電源回路を独立させ、クロックには大型のトロイダルコア、回路用にはEI型トランスを組み合わせるなど、電源回路の徹底したセパレート化はGrandiosoシリーズならでは。出力は10MHzを5系統用意し、グラウンドを0Vにドライブするアダプティブ・ゼログラウンドのオン・オフを出力ごとに切り替える機能も積む。今回は一体型CDプレーヤーの最上位機種であるGrandioso K1Xと組み合わせ、再生音を確認した。
■音場の立体感の差に大きな違いを確認。なめらかさや潤いも加わる
最初にK1Xの再生音を内蔵クロックで確認し、1曲ごとに「G1X」からのクロック供給に切り替え、音の違いを検証する。参考のためにルビジウム発振器を内蔵する「G-01X」との組み合わせでも音を確認している。
まずはシンプルなデュオの音源「ムジカ・ヌーダ」を聴いた。クロックの違いはベースのピチカートの定位と立ち上がりの音色に現れ、外部クロックでは音場が左右に広がってステージの深さが出るようになった。フラジオ(ハーモニクス)は内蔵クロックやG-01Xに比べて澄んだ響きになるが、その違いは極端なものではない。一方、音場の立体感の差はすぐ聴き分けることができた。
少人数のアンサンブルで男声2人が歌うペルゴレージ《スターバト・マーテル》では二重唱のハーモニーと男声ソプラノ最高音域の音色が聴きどころで、声のなめらかさやビブラートのゆらぎにクロックの違いを聴き取れる。「G1X」は内蔵クロックに比べてなめらかさに潤いが加わり、しかも男声ソプラノならではの密度の高さも忠実に引き出す。この曲ではアダプティブ・ゼログラウンドをオンにすることで通奏低音の立体感が向上する効果を確認、再生環境によっては活用する価値のある機能である。
K1X単独での再生音も緻密に追い込んだもので、不満を感じることはない。一方、「G1X」を組み合わせた時の空間描写やなめらかな質感は一度聴いたら耳から離れなくなる。クロック改善の効果はけっして小さくないことを実感した。
なお、既発売の「Grandioso G1」の心臓部のクロック・モジュールと出力基板を含むすべての回路基板を交換し、「Grandioso G1X」仕様にするバージョンアップサービスも提供する。バージョンアップ価格は880,000円(税込)。
(提供:エソテリック)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.181』からの転載です
■独自のディスクリート構成をクロックジェネレーターにも導入
エソテリックから登場した「Grandioso G1X」は、同社のクロックジェネレーターの最上位モデルだ。シリーズ共通の優美かつ堅牢な筐体、電源も回路ごとに細分化するなど、前作のG1ですでに外部クロックとしての性能を極めたかに思われたが、これまでとは異なる発想で性能をさらに改善することに成功したという。いったいどんな方法を使ったのだろうか。
エソテリックのディスク再生システムにおける近年の技術的な成果の一つが自社開発のMaster Sound Discrete DACだ。理想の音に近付くために独自設計のDA変換回路を開発したわけだが、実は今回の「G1X」もその設計思想をある意味で継承している。
今回はクロックジェネレーターの心臓部にあたる発振ユニットそのものを見直した。従来は専業メーカーが設計した良質な発振器を用いて独自設計の周辺回路と組み合わせていたのだが、それをすべて自社設計の新しいシステム「Master Sound Discrete Clock」に置き換えたのだ。大型のクリスタル振動子と組み合わせる温度制御システムや周辺回路を独自に設計。安定したクロック供給を実現するために基本設計を一から見直し、性能改善に成功したという。
大型のクリスタル振動子は専用設計の金属製大型チャンバーに格納し、真空断熱技術によって高精度な温度制御を行う。恒温槽を採用する例はこれまでもあったが、真空断熱処理を適用する専用チャンバーを導入することで、「G1X」では桁違いにきめ細かい温度制御ができるという。温度は約85度に設定されるが、最適な温度は水晶振動子ごとに微妙な違いがあり、ひとつひとつに個別の温度を設定して管理するそうだ。
振動子、制御回路、ヒーターそれぞれに電源回路を独立させ、クロックには大型のトロイダルコア、回路用にはEI型トランスを組み合わせるなど、電源回路の徹底したセパレート化はGrandiosoシリーズならでは。出力は10MHzを5系統用意し、グラウンドを0Vにドライブするアダプティブ・ゼログラウンドのオン・オフを出力ごとに切り替える機能も積む。今回は一体型CDプレーヤーの最上位機種であるGrandioso K1Xと組み合わせ、再生音を確認した。
■音場の立体感の差に大きな違いを確認。なめらかさや潤いも加わる
最初にK1Xの再生音を内蔵クロックで確認し、1曲ごとに「G1X」からのクロック供給に切り替え、音の違いを検証する。参考のためにルビジウム発振器を内蔵する「G-01X」との組み合わせでも音を確認している。
まずはシンプルなデュオの音源「ムジカ・ヌーダ」を聴いた。クロックの違いはベースのピチカートの定位と立ち上がりの音色に現れ、外部クロックでは音場が左右に広がってステージの深さが出るようになった。フラジオ(ハーモニクス)は内蔵クロックやG-01Xに比べて澄んだ響きになるが、その違いは極端なものではない。一方、音場の立体感の差はすぐ聴き分けることができた。
少人数のアンサンブルで男声2人が歌うペルゴレージ《スターバト・マーテル》では二重唱のハーモニーと男声ソプラノ最高音域の音色が聴きどころで、声のなめらかさやビブラートのゆらぎにクロックの違いを聴き取れる。「G1X」は内蔵クロックに比べてなめらかさに潤いが加わり、しかも男声ソプラノならではの密度の高さも忠実に引き出す。この曲ではアダプティブ・ゼログラウンドをオンにすることで通奏低音の立体感が向上する効果を確認、再生環境によっては活用する価値のある機能である。
K1X単独での再生音も緻密に追い込んだもので、不満を感じることはない。一方、「G1X」を組み合わせた時の空間描写やなめらかな質感は一度聴いたら耳から離れなくなる。クロック改善の効果はけっして小さくないことを実感した。
なお、既発売の「Grandioso G1」の心臓部のクロック・モジュールと出力基板を含むすべての回路基板を交換し、「Grandioso G1X」仕様にするバージョンアップサービスも提供する。バージョンアップ価格は880,000円(税込)。
(提供:エソテリック)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.181』からの転載です