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“トリプルアンプ“で楽しさ無限!Astell&Kernの新DAP「A&ultima SP2000T」をイヤホン5機種で聴き比べ
さて、「トリプルアンプシステムの各モードと、シングルエンド駆動/バランス駆動の組み合わせでサウンド傾向を選択する」というのが、使いこなしの基本になるだろう。他にDACフィルターの選択などの要素もあるが、まずはアンプモードと駆動方式で大枠を定めるのがよい。駆動方式ごとの音色については、その印象をまとめた一覧を参照されたい。
■イヤホンとアンプモード×駆動方式の組み合わせ例
最後に、前述したイヤホン各モデル+A&ultima SP2000Tのアンプモード×駆動方式の具体例をいくつか挙げていこう。実際の使いこなしの雰囲気を感じ取ってもらえればと思う。
●Astell&Kern「AK T9iE」+OP-AMP×シングルエンド
AK T9iEはハイエンド機らしいワイドレンジ再生でありつつ、どこの帯域も主張せず、音調も滑らかなイヤホン。この穏やかで癖のない特性こそが持ち味であり、そんな「超ハイレベルに普通」な持ち味を生かすべく、DAP側もスタンダードな組み合わせとして、OP-AMP×シングルエンド駆動をチョイス。
ホセ・ジェイムズ「Just The Two of Us」では、ベースやバスドラムの沈み込みや肉感も出したい。TUBE-AMPモードでローミッドの膨らみを稼ぐのもアリだが、真空管の味わいが乗ってしまうと、このイヤホンの「癖のなさ」が損なわれる。そこでモードはOP-AMPにした上で、あえてのシングルエンド駆動で「中低域を引き締めすぎない」セッティングが、とても相性が良いと感じた。
●final「A8000」+HYBRID-AMP(オペアンプ寄り)×シングルエンド
A8000は “クリスタルでクリア” な音調の硬質さがポイント。その硬質さを、TUBE-AMPモードで少し和らげてみるのは面白そう。だが、するとA8000の超立体的な空間描写は少し損なわれてしまうだろう。A8000らしさも生かすには「オペアンプ側に寄せたハイブリッド」あたりが適当だ。駆動方式はあえて少し甘さを残すべく、シングルエンドにしてみる。
この組み合わせで例えば、ジョー・パスのソロギター名演「How High the Moon」を聴くと、ひとつひとつの音の姿、演奏のタッチなどが、非常にくっきりと見えてくる。それでいて全く遊びのない描写にはならず、演奏のしなやかさも味わえる。この楽曲においては、OP-AMP×バランス駆動だと遊びが全く残らず、緊張感が高まりすぎるように感じられた。
●Acoustune「HS1657CU」+TUBE-AMP×バランス
Acoustuneの真鍮製音響チャンバーを採用したモデルの持ち味は、声や楽器の質感の豊かさ。それを強く生かせるのは、もちろんTUBE-AMPモードだ。しかしそれだけだと、このイヤホンのもうひとつの持ち味である「ローミッドの豊かさ」や「柔軟さ」が、真空管の持ち味と重なって、強まりすぎてしまう感もある。
そこで、TUBE-AMPモードにしつつ、バランス駆動でローミッドの引き締めを狙ったのがこの組み合わせ。「How High the Moon」を聴くと、フルアコースティックギターの弦の鉄の響きと胴の木の響きのどちらもを豊かに届けてくれて、実においしい聴き心地だ。
ギターの生音はアタックが特に速い音色であるので、TUBE-AMPモードでアタックが少しコンプレッションされる感じもわかりやすい。その要素も、古い録音らしい独特の生々しさにうまくフィットする。
●Shure「SE846」+OP-AMP×バランス
SE846の強みは、物理ローパスフィルターから生み出される軽やかな超低域、そして広く透明感のある空間表現である。今回、その強みを引き出すことに特化するべく選んだのが、OP-AMP×バランス駆動のコンビネーションだ。
たとえば、サラウンドミックスした音源をサラウンドスピーカーで再生し、その音をダミーヘッドで録音してステレオ化するという手法で制作された悠木碧「レゼトワール」や、教会の響きと楽器の配置を丸ごと捉えるマイキングで録音されたHoff ensemble「Dronning Fjellrose」では、この組み合わせの魅力が特に発揮された。
OP-AMP×バランス駆動は遊びのない音になりがちな組み合わせだが、このイヤホンとのコンビネーションでは、ガチガチとした硬い印象になりすぎることもなく、聴き心地のよさも確保している。
●FitEar「TG334」+あらゆる組み合わせ
「TG334」では、具体例として一つを挙げるのが難しいほどに、どのモードでもそれぞれ良い感じに再生してくれる。各モードとの間に相性の良し悪しがなく、OP-AMPモードでは素晴らしくナチュラルだし、TUBE-AMPモードでは適度に味わい深いのだ。
TG334とSP2000Tのコンビは、その時々の気分やシチュエーション、聴く曲によってアンプモードを積極的に切り替えて使い倒す利用スタイルにフィットする!と言える。最も自由度の高いコンビネーションである。
今回、A&ultima SP2000Tを紹介するにあたって、イヤホンとアンプモード、駆動方式の具体的な組み合わせ例に特に力を入れて執筆した。
この結果を通して伝えたいのは、「このイヤホンとこのモードの組み合わせがおすすめ」といった使い方の決め打ちではない。感じ取ってほしいのは、「イヤホンの個性に合わせてアンプモードや駆動方式を選ぶ楽しさ」だ。
そこに、A&ultima SP2000Tの大きな価値があり、単なるハイエンド機を超えたポテンシャルを見せつけてくれる。ぜひさまざまなイヤホンと組み合わせて体感してほしい。
(協力:株式会社アユート)