民生機初8K入力対応プロジェクターの実力は?
ビクター新8Kプロジェクター「DLA-V90R」レビュー。その映像は「肉眼で見た現実世界のように自然な描写」
第一印象は、なにげなく風景を眺めているという印象。しかしこれは、プロジェクター映像としては非常に優れていることを意味する。ヒトが肉眼で現実世界を見た時のように、投写映像でありながら、自然で違和感を覚えさせないのだ。
その要素としては、高密度で画素を感じさせない滑らかな映像。120インチサイズでも画素の粗が目立たないばかりか、映像処理技術も伴い、モアレやジャギーといった人工物が目に付くことが皆無。ゼロと言えば嘘になるが、8Kの良さを素直に体感できる部分である。
また、ノイズ感が以前にも増して低減し、スッキリと見通しが良く、自然な奥行きが感じられるのも大きな進化。これはネイティブ8Kコンテンツに限らず、4Kコンテンツのアップスケーリング映像にも共通し、「8K/e-shiftX」の効用だろう。
映像の明るさの感じ方には相対的なものもあるが、3,000lm級の明るさは本物でHDR映像はピークが力強く、コントラストアップが解像感の向上にもつながっているようだ。
4Kはブルーレイ映画作品で確認。新シリーズでは、「HDR10」と「HLG」に加え、「HDR10+」への対応が新しい。V90Rは「HDR10+」に含まれるダイナミックメタデータの使いこなしも秀逸。特に平均輝度が低いシーンでは暗部階調が潰れてしまいがちなところ、シーンの印象を変えることなく、D-ILAデバイスのネイティブコントラストの高さを活かし、黒が沈んでナチュラルであることはもちろん、立体感を維持。これは、同社が以前から手掛けてきた「Frame Adapt HDR」と通じるものがある。
実際に比較すると、「Frame Adapt HDR」の偉大さを感じつつも、ピーク輝度の表現においては、メタデータを含む「HDR10+」がより力強く心に響く。コントラスト性能が向上した本機にとって、「HDR10+」への対応は意義を感じる。
8K映像は、ハイエンドグラフィックカードRTX3090搭載のPCで、「Bulgaria 8K HDR 60P」(ハイビットレートファイル)を再生して確認。デジタル撮影コンテンツでノイズとは無縁の美しい景色が出現。映像装置による解像度や残像などによる違和感が無く、映像の明るさも手伝い、いつの間にか惹き込まれ、リアルな風景に感じてしまうほど。8Kが当初目標としていた超臨場が理解できる部分で、4Kとの差は歴然だ。
スクリーンの間近でも映像を観察したが、画素は見当たらない。レンズが優秀なのか、画素が小さいからか、色収差も見当たらない。常識的な視聴距離では、視力の限界から、4Kも8Kも解像度面で大きな違いが無いと思われるかもしれないが、実際に目の当たりにすると、画力というか、リアリティーの差は大きい。
8Kネイティブコンテンツに関しては、既にYouTubeでも見つけることができ、今後も動画配信で増加が期待できる。また、コンソールゲーム機も進化を続けるに違いない。8K入力と表示に対応したビクターブランドの新プロジェクターシリーズ。久々の大物映像装置として注目だ。