【特別企画】ターンテーブルマット「SS-300Mk2」&スタビライザー「SRS-9」
往年の銘アナログプレーヤーを現代的サウンドに。サエクの最新アナログアクセサリー2種を試す!
■長く愛用するアナログプレーヤーを、最新のアクセサリーでグレードアップ
現役として使っている手持ちのオーディオ機器のなかで一番古いのがDENONのターンテーブル「DP80」だ。専用キャビネット「DK-300」とサエクのトーンアーム「WE-407/23」も含めて1980年代後半に買ったものなので、少なくとも35年は経っている。
いまも問題なく動作していて、S/Nも優秀。違うアームを使うときにアームボードを交換するぐらいでほとんど手を加えていないし、そのままでも音質に大きな不満はないのだが、これまでほとんど試すことのなかったアクセサリーでどこまで音が変わるのか、試してみることを思い立った。
インシュレーター、ケーブル、電源などいくつか選択肢があるが、気になる存在だったサエクのターンテーブルマット「SS-300Mk2」を候補に絞り込む。末尾がMk2とあることからわかるように、同社が約40年前に発売したSS-300の後継というか、現代版という位置付けだ。素材は半導体製造装置や医療機器など精度を求められる分野で使われる神戸製鋼所の高精度アルミ合金「アルハイス」で、今回のマットは30μmという高い加工精度で仕上げているという。
厚さは5.5mm、質量は845グラムなので、DP-80の純正マットを取り外してSS-300Mk2に交換するだけですぐに使える。アームの高さ調整もわずかで済む。仕上げの質感が高く、半光沢のブラックが光をきれいに反射してDP-80との見た目の相性は抜群。純正マットのように見えるほどだ。ちなみにDP-80付属のマットもレーザーホログラフィーを用いて振動解析を行っているらしく、プラッターの鳴きを止めつつ、レコード盤の振動もかなり効果的に吸収するスグレモノ。聴き比べが楽しみだ。
■サウンドが現代的に生まれ変わり、レコードの音の鮮度が引き立つ
スティーリー・ダン『ガウチョ』は純正マットに比べてパーカッションの粒立ちがクリアで、スピードが聴感では2割か3割ほど速くなる。ベースとキックドラムはアタックのエネルギーが上がると同時に減衰のタイミングが早まるため、音像はタイトだが音圧は大きめに感じる。つまり、基本的には良い方向への変化だ。サウンドが現代的に生まれ変わると言ってもいい。この曲ではギターやトランペットはあくまで脇役なのだが、ほかの楽器に埋もれずに絶妙のバランスで重要なフレーズを奏で、サウンドに立体感を加える。純正マットよりサエクのマットの方がスパイス的な効果が冴えて聴こえるのが面白かった。
加藤訓子が多重録音のマリンバで収録したS.ライヒ『シックス・マリンバ・カウンターポイント』は、純正マットでは中低域に少しだけ残っていた混濁感が一掃されて、見通しが良くなり、ハーモニーの透明度が上がった。どの音域も木が響いている感触が強く実感できるのはSS-300Mk2の方だ。素材としては硬いのにむしろ柔らかい音色を引き出すのはなぜだろう。
カーペンターズ『ア・ソング・フォー・ユー』はヴォーカルの発音が一気にクリアになって、どの音域もヌケが良くなった。付帯音やにじみが消えると声の滑らかさが際立つようになるので、同じレコードでもサウンドの印象はかなり変化したように感じる。ターンテーブルよりもさらに古い時代のレコードなのに音の鮮度がここまで蘇るのは驚きだ。
ダニーデン・コンソートのヘンデル『メサイア』も声の印象が大きく変化した音源の一つだ。もともと各パートを最少人数で歌っている演奏なので響きの透明感が非常に高いのだが、歌の発音が鮮明になる効果で独唱だけでなく合唱の部分も全員の声がわかるほどクリアになった。通奏低音の音形もはっきり聴き取れるようになり、この演奏ならではの爽快なテンポが生きてくる。
■独自構造のスタビライザーも追加。声の音像にきれいにピントが合う
音の変化はマット単独でも予想以上に大きかったが、ここで同じくサエクのスタビライザー「SRS-9」を追加してみることにした。上下に動く円柱状のステンレス製ウェイトを外周部に計9個配置した不思議な構造が目を引くが、これはレコード面の反りの強さに応じてウェイトが盤面に適切な負荷をかけることが目的だという。円周上のどの位置でもスタビライザーと盤面はぴったりと接触し、特定の部分に余分な圧力がかかる心配もない。
仕掛けは単純だが確実な効果が期待できそうだ。重さは298グラムで、845グラムのSS-300Mk2と合わせても1143グラム。DENONのダイレクトドライブ式ターンテーブルは回転トルクがかなり強いので、マットとスタビライザーを同時に使ってもまったく問題ない。SRS-9がプラッターと一緒に回る様子は眺めているだけでも楽しい。
『メサイア』は独唱、合唱、オーケストラの関係がさらに立体的になり、特に独唱は声の音像にピントがきれいに合って、他のパートや低音楽器との関係が精度高く聴き取れるようになった。マットを交換したときもそうだが、これまでどこかに吸収されてしまったか逃げていたエネルギーや情報が元に戻るようなイメージで、余分な振動やたわみがなくなることの効果は非常に大きいことが分かる。
マリンバの六重奏ではアンサンブル全体の音圧感や音の押し出し感が強くなる効果があるが、それ以上に旋律的にハーモニーを主導するパートと伴奏にまわるパートの間の関係が鮮明に浮かび上がって、曲の構造がわかりやすくなる効果が大きい。マットの交換だけではそこまでの違いは聴き取れなかったので、スタビライザーとの相乗効果が生まれたのだろう。
それと同様な効果はスティーリー・ダンの曲でも聴き取ることができた。SRS-9を併用するとサウンド全体の重心が下がり、リズムが安定するし、ドラムとサックスのアタックがピタリと揃って、緩みのない安定したサウンドが蘇るのだ。見かけ上は盤が大きく反っているようには見えないのだが、マットに載せた状態で指で盤を軽く叩いたとき、コツコツという音からコッコッという硬い音に変化した。おそらく肉眼ではわからないほど微妙な浮きがウェイト群の作用で解消されたのだろう。
DP-80の純正マットに戻してSRS-9だけを載せた状態の音も念のために確認してみたところ、レコードによってはスタビライザーだけでも確実な効果が得られることがわかった。
ケンペ指揮ミュンヘン・フィルが演奏したブラームスの交響曲第1番を聴いたのだが、第3楽章では低弦の支えが厚くなってトゥッティの音圧感が上がり、ピチカートの音離れが改善。低弦の動きは少しもやもやとしていたのだが、SRS-9を乗せると明らかにスタッカートの切れが良くなる。時間軸情報に限って言うと、SS-300Mk2とSRS-9を併用した時の効果がオリジナルに対して1.3倍ぐらいだとすると、SRS-9単独では1.2倍ほどの改善効果が得られる感覚だ。
トーンアームケーブルのように信号が通るわけではないのに、マットやスタビライザーが音に及ぼす音質改善効果がかなり大きいと感じるのは、さまざまな周波数で発生する機械振動がカートリッジの微細な振動系に影響を及ぼすからだ。プラッター、レコード盤それぞれの振動モードが変われば音は大きく変化するし、不要な振動を効果的に抑えることができれば、音質にプラスの影響が及ぶのは当然のことなのだ。
サエクがSS-300を発売した当時は、ターンテーブルメーカーやアクセサリーメーカーがじっくり時間をかけて振動対策を吟味し、チューニングを追い込んでいた。40年を経てその当時のノウハウが息を吹き返し、以前よりもさらに効果を高めて現代に蘇ったのは素晴らしいことだと思う。
(提供:サエクコマース)
現役として使っている手持ちのオーディオ機器のなかで一番古いのがDENONのターンテーブル「DP80」だ。専用キャビネット「DK-300」とサエクのトーンアーム「WE-407/23」も含めて1980年代後半に買ったものなので、少なくとも35年は経っている。
いまも問題なく動作していて、S/Nも優秀。違うアームを使うときにアームボードを交換するぐらいでほとんど手を加えていないし、そのままでも音質に大きな不満はないのだが、これまでほとんど試すことのなかったアクセサリーでどこまで音が変わるのか、試してみることを思い立った。
インシュレーター、ケーブル、電源などいくつか選択肢があるが、気になる存在だったサエクのターンテーブルマット「SS-300Mk2」を候補に絞り込む。末尾がMk2とあることからわかるように、同社が約40年前に発売したSS-300の後継というか、現代版という位置付けだ。素材は半導体製造装置や医療機器など精度を求められる分野で使われる神戸製鋼所の高精度アルミ合金「アルハイス」で、今回のマットは30μmという高い加工精度で仕上げているという。
厚さは5.5mm、質量は845グラムなので、DP-80の純正マットを取り外してSS-300Mk2に交換するだけですぐに使える。アームの高さ調整もわずかで済む。仕上げの質感が高く、半光沢のブラックが光をきれいに反射してDP-80との見た目の相性は抜群。純正マットのように見えるほどだ。ちなみにDP-80付属のマットもレーザーホログラフィーを用いて振動解析を行っているらしく、プラッターの鳴きを止めつつ、レコード盤の振動もかなり効果的に吸収するスグレモノ。聴き比べが楽しみだ。
■サウンドが現代的に生まれ変わり、レコードの音の鮮度が引き立つ
スティーリー・ダン『ガウチョ』は純正マットに比べてパーカッションの粒立ちがクリアで、スピードが聴感では2割か3割ほど速くなる。ベースとキックドラムはアタックのエネルギーが上がると同時に減衰のタイミングが早まるため、音像はタイトだが音圧は大きめに感じる。つまり、基本的には良い方向への変化だ。サウンドが現代的に生まれ変わると言ってもいい。この曲ではギターやトランペットはあくまで脇役なのだが、ほかの楽器に埋もれずに絶妙のバランスで重要なフレーズを奏で、サウンドに立体感を加える。純正マットよりサエクのマットの方がスパイス的な効果が冴えて聴こえるのが面白かった。
加藤訓子が多重録音のマリンバで収録したS.ライヒ『シックス・マリンバ・カウンターポイント』は、純正マットでは中低域に少しだけ残っていた混濁感が一掃されて、見通しが良くなり、ハーモニーの透明度が上がった。どの音域も木が響いている感触が強く実感できるのはSS-300Mk2の方だ。素材としては硬いのにむしろ柔らかい音色を引き出すのはなぜだろう。
カーペンターズ『ア・ソング・フォー・ユー』はヴォーカルの発音が一気にクリアになって、どの音域もヌケが良くなった。付帯音やにじみが消えると声の滑らかさが際立つようになるので、同じレコードでもサウンドの印象はかなり変化したように感じる。ターンテーブルよりもさらに古い時代のレコードなのに音の鮮度がここまで蘇るのは驚きだ。
ダニーデン・コンソートのヘンデル『メサイア』も声の印象が大きく変化した音源の一つだ。もともと各パートを最少人数で歌っている演奏なので響きの透明感が非常に高いのだが、歌の発音が鮮明になる効果で独唱だけでなく合唱の部分も全員の声がわかるほどクリアになった。通奏低音の音形もはっきり聴き取れるようになり、この演奏ならではの爽快なテンポが生きてくる。
■独自構造のスタビライザーも追加。声の音像にきれいにピントが合う
音の変化はマット単独でも予想以上に大きかったが、ここで同じくサエクのスタビライザー「SRS-9」を追加してみることにした。上下に動く円柱状のステンレス製ウェイトを外周部に計9個配置した不思議な構造が目を引くが、これはレコード面の反りの強さに応じてウェイトが盤面に適切な負荷をかけることが目的だという。円周上のどの位置でもスタビライザーと盤面はぴったりと接触し、特定の部分に余分な圧力がかかる心配もない。
仕掛けは単純だが確実な効果が期待できそうだ。重さは298グラムで、845グラムのSS-300Mk2と合わせても1143グラム。DENONのダイレクトドライブ式ターンテーブルは回転トルクがかなり強いので、マットとスタビライザーを同時に使ってもまったく問題ない。SRS-9がプラッターと一緒に回る様子は眺めているだけでも楽しい。
『メサイア』は独唱、合唱、オーケストラの関係がさらに立体的になり、特に独唱は声の音像にピントがきれいに合って、他のパートや低音楽器との関係が精度高く聴き取れるようになった。マットを交換したときもそうだが、これまでどこかに吸収されてしまったか逃げていたエネルギーや情報が元に戻るようなイメージで、余分な振動やたわみがなくなることの効果は非常に大きいことが分かる。
マリンバの六重奏ではアンサンブル全体の音圧感や音の押し出し感が強くなる効果があるが、それ以上に旋律的にハーモニーを主導するパートと伴奏にまわるパートの間の関係が鮮明に浮かび上がって、曲の構造がわかりやすくなる効果が大きい。マットの交換だけではそこまでの違いは聴き取れなかったので、スタビライザーとの相乗効果が生まれたのだろう。
それと同様な効果はスティーリー・ダンの曲でも聴き取ることができた。SRS-9を併用するとサウンド全体の重心が下がり、リズムが安定するし、ドラムとサックスのアタックがピタリと揃って、緩みのない安定したサウンドが蘇るのだ。見かけ上は盤が大きく反っているようには見えないのだが、マットに載せた状態で指で盤を軽く叩いたとき、コツコツという音からコッコッという硬い音に変化した。おそらく肉眼ではわからないほど微妙な浮きがウェイト群の作用で解消されたのだろう。
DP-80の純正マットに戻してSRS-9だけを載せた状態の音も念のために確認してみたところ、レコードによってはスタビライザーだけでも確実な効果が得られることがわかった。
ケンペ指揮ミュンヘン・フィルが演奏したブラームスの交響曲第1番を聴いたのだが、第3楽章では低弦の支えが厚くなってトゥッティの音圧感が上がり、ピチカートの音離れが改善。低弦の動きは少しもやもやとしていたのだが、SRS-9を乗せると明らかにスタッカートの切れが良くなる。時間軸情報に限って言うと、SS-300Mk2とSRS-9を併用した時の効果がオリジナルに対して1.3倍ぐらいだとすると、SRS-9単独では1.2倍ほどの改善効果が得られる感覚だ。
トーンアームケーブルのように信号が通るわけではないのに、マットやスタビライザーが音に及ぼす音質改善効果がかなり大きいと感じるのは、さまざまな周波数で発生する機械振動がカートリッジの微細な振動系に影響を及ぼすからだ。プラッター、レコード盤それぞれの振動モードが変われば音は大きく変化するし、不要な振動を効果的に抑えることができれば、音質にプラスの影響が及ぶのは当然のことなのだ。
サエクがSS-300を発売した当時は、ターンテーブルメーカーやアクセサリーメーカーがじっくり時間をかけて振動対策を吟味し、チューニングを追い込んでいた。40年を経てその当時のノウハウが息を吹き返し、以前よりもさらに効果を高めて現代に蘇ったのは素晴らしいことだと思う。
(提供:サエクコマース)