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映像と一体になる幸福な時間を生む名シェフ。エプソン新旗艦プロジェクター「EH-LS12000」レビュー
エプソンから、レーザー光源を搭載した新フラグシッププロジェクター「EH-LS12000」が登場する。この注目機の実力はいかなるものか、早速、大橋伸太郎氏がレビュー。その構成はエプソンの思想を体現するものであり、映し出される映像は高い期待を上回るものだった。
■エプソン流のノウハウと理念を結集した新フラグシップ
EH-LS12000をエプソンは、EH-TW8400の後継と位置付ける。事実、レンズシステム、電動ズームやレンズシフト機能は共通、筐体もEH-TW8400を受け継ぎ、高さがわずかに増しただけ。しかし型番にEH-LS10000/10500に連なる同社ハイエンド機の5桁を受け継ぎレーザー光源を搭載、家庭用のフラグシップであることは間違いない。
EH-LS10000/10500はLCOS(反射型液晶)方式だった。それに対しEH-LS12000はエプソン主流の3LCD(透過型液晶)である。透過型液晶プロジェクターとレーザー光源の組み合わせは、エプソンのハイエンド・ホームプロジェクターとして初である。二つの流れが一つになった。戸惑いを覚える方も多いだろう。
ビジネス用からプロジェクションマッピングまで、エプソンはプロジェクション市場で圧倒的なシェアを誇る。これは家庭用途に限っても同様だ。サミットモデルとして生み出したのが、LCOS方式でレーザー光源のEH-LS10000/10500だった。時を経て新たなフラグシップを手掛けるにあたり、原点に帰って、エプソン流で未開拓の上級セグメントを生み出すことを選んだ。
第一に、デバイスには経験厚い3LCD透過型液晶を使う。透過型の最大の強味は入出力のロスが少なく明るいプロジェクターが作れることだ。プロジェクターの性能上、最初に来るのが明るさだ。
第二に、この明るさでもって専用暗室から抜け出すこと。エプソンはリビングシアターを一貫して先導してきた。EH-LS10000/10500は、専用暗室が前提だったが、今回3LCDで新フラグシップを送り出すにあたり、エプソンが提案するホームシアターのイメージは一貫すべきで、フラグシップであっても専用暗室に閉じ込めるべきでないと考えた。
第三に、デバイスの量産性が高くセットの価格を抑えられる3LCDに新技術の2軸シフトを組み合わせることで、低コストでネイティブ4Kと遜色のない画質を得る。家庭用のハイエンド領域で他社と違った製品像を生み出す。
プロジェクターにも求められるHDR10+はパネルのガンマカーブをダイナミック制御することで対応。明るさを武器に、強靭で柔軟な画質を持ち、リビングから専用室まで広く対応する高画質モデル。新フラグシップの商品像が結実し、かくしてEH-TW8500でなくEH-LS12000という型番が与えられた。
■特性を活かした新機能で豊かな映像表現を獲得
画質の報告の前に、EH-LS12000のプロフィールを紹介しておこう。レンズシステムは2.1倍電動ズームの7群16枚構成、描画デバイスは0.74型液晶パネル(×3)、投写サイズはEH-TW8400と同じ50 - 300インチで、入れ替えは容易。本機は画素ずらしで2Kデバイスから4K解像度を得る。
EH-TW8400の4Kエンハンスメントは入力映像の1ピクセルを縦横0.5ピクセルずらして重ねることで4K解像度の映像を出力したが、EH-LS12000は、ボイスコイルモーターを使用して従来の4Kエンハンスメントの2倍のスピードで1ピクセルを上下左右4方向へずらし、4K映像を出力する。
2軸シフトとも呼ばれるこの方式は半画素ずらして描くので、画が重なって描かれる欠点があるのだが、透過型液晶はブラックマトリックス(格子の部分)の面積が大きいため重複部分が少なく、2軸シフトでこれが有利な方向に働き、ネイティブ4Kに近い映像表現ができるという。
新開発の画像処理チップを採用し、新機能が加わった。「シーン適応ガンマ補正」は、シーンの輝度分布を分析して、輝度が集中している部分のガンマを重点的に伸長する。「自動コントラスト強調」はガンマは変えずに映像の局所部分を解析し被写体のコントラストを高める。「4K対応フレーム補間」として、EH-TW8400は4K信号でフレーム補間に未対応だったが、EH-LS12000では4K60Pまで対応した。
最大2700ルーメンの高出力で、ダイナミックコントラストは2,5000,000対1。ちなみにEH-TW8400はそれぞれ2600ルーメン、1,000,000対1である。
■にわかに信じられないほどの映像美、仕事を忘れ陶然とさせられた
音元出版の視聴室にやってきたEH-LS12000が、HDR10+の4K UHD BD『8K空撮夜景 SKY WALK』冒頭の横浜の映像を映し出すと、にわかに3LCD方式の映像と信じられなかった。
画面の隅々まで透明感に溢れ、細部の潰れ、にじみがなく、情報量にあふれている。胸のすく清澄な映像だ。新たに採用した2軸方式の4Kエンハンスメントの動作は的確で、電気的なエンハンスに伴う疑似信号がみられず、妨害要素のない、細部を慈しむことができる画質だ。階調のきめ細かさ、豊富さも印象的で、新画像処理デバイスの「シーン適応ガンマ補正」が的確に動作していることがわかる。
3LCD方式は厚みのある芳醇な発色が特徴で、よくいうと絵画的で甘美だが、LCOSほど色域が広くなく、中間色のバラエティや透明感で及ばなかった。しかし、ここでも新画像処理デバイスの威力を発揮し、EH-LS12000は階調の改善をベースに、色彩表現が従来の3LCDの認識を一変させるほど、繊細できめ細やかなニュアンスと切れ味がある。
本機の画質をもっと深く見極めようと、EH-LS12000を自宅視聴室に預かった。取扱説明書を見ずとも、投写位置とサイズの調整、フォーカス調整までごく迷わず短時間で終了する。セットアップに手がかからないのは素性に優れる証明である。
■エプソン流のノウハウと理念を結集した新フラグシップ
EH-LS12000をエプソンは、EH-TW8400の後継と位置付ける。事実、レンズシステム、電動ズームやレンズシフト機能は共通、筐体もEH-TW8400を受け継ぎ、高さがわずかに増しただけ。しかし型番にEH-LS10000/10500に連なる同社ハイエンド機の5桁を受け継ぎレーザー光源を搭載、家庭用のフラグシップであることは間違いない。
EH-LS10000/10500はLCOS(反射型液晶)方式だった。それに対しEH-LS12000はエプソン主流の3LCD(透過型液晶)である。透過型液晶プロジェクターとレーザー光源の組み合わせは、エプソンのハイエンド・ホームプロジェクターとして初である。二つの流れが一つになった。戸惑いを覚える方も多いだろう。
ビジネス用からプロジェクションマッピングまで、エプソンはプロジェクション市場で圧倒的なシェアを誇る。これは家庭用途に限っても同様だ。サミットモデルとして生み出したのが、LCOS方式でレーザー光源のEH-LS10000/10500だった。時を経て新たなフラグシップを手掛けるにあたり、原点に帰って、エプソン流で未開拓の上級セグメントを生み出すことを選んだ。
第一に、デバイスには経験厚い3LCD透過型液晶を使う。透過型の最大の強味は入出力のロスが少なく明るいプロジェクターが作れることだ。プロジェクターの性能上、最初に来るのが明るさだ。
第二に、この明るさでもって専用暗室から抜け出すこと。エプソンはリビングシアターを一貫して先導してきた。EH-LS10000/10500は、専用暗室が前提だったが、今回3LCDで新フラグシップを送り出すにあたり、エプソンが提案するホームシアターのイメージは一貫すべきで、フラグシップであっても専用暗室に閉じ込めるべきでないと考えた。
第三に、デバイスの量産性が高くセットの価格を抑えられる3LCDに新技術の2軸シフトを組み合わせることで、低コストでネイティブ4Kと遜色のない画質を得る。家庭用のハイエンド領域で他社と違った製品像を生み出す。
プロジェクターにも求められるHDR10+はパネルのガンマカーブをダイナミック制御することで対応。明るさを武器に、強靭で柔軟な画質を持ち、リビングから専用室まで広く対応する高画質モデル。新フラグシップの商品像が結実し、かくしてEH-TW8500でなくEH-LS12000という型番が与えられた。
■特性を活かした新機能で豊かな映像表現を獲得
画質の報告の前に、EH-LS12000のプロフィールを紹介しておこう。レンズシステムは2.1倍電動ズームの7群16枚構成、描画デバイスは0.74型液晶パネル(×3)、投写サイズはEH-TW8400と同じ50 - 300インチで、入れ替えは容易。本機は画素ずらしで2Kデバイスから4K解像度を得る。
EH-TW8400の4Kエンハンスメントは入力映像の1ピクセルを縦横0.5ピクセルずらして重ねることで4K解像度の映像を出力したが、EH-LS12000は、ボイスコイルモーターを使用して従来の4Kエンハンスメントの2倍のスピードで1ピクセルを上下左右4方向へずらし、4K映像を出力する。
2軸シフトとも呼ばれるこの方式は半画素ずらして描くので、画が重なって描かれる欠点があるのだが、透過型液晶はブラックマトリックス(格子の部分)の面積が大きいため重複部分が少なく、2軸シフトでこれが有利な方向に働き、ネイティブ4Kに近い映像表現ができるという。
新開発の画像処理チップを採用し、新機能が加わった。「シーン適応ガンマ補正」は、シーンの輝度分布を分析して、輝度が集中している部分のガンマを重点的に伸長する。「自動コントラスト強調」はガンマは変えずに映像の局所部分を解析し被写体のコントラストを高める。「4K対応フレーム補間」として、EH-TW8400は4K信号でフレーム補間に未対応だったが、EH-LS12000では4K60Pまで対応した。
最大2700ルーメンの高出力で、ダイナミックコントラストは2,5000,000対1。ちなみにEH-TW8400はそれぞれ2600ルーメン、1,000,000対1である。
■にわかに信じられないほどの映像美、仕事を忘れ陶然とさせられた
音元出版の視聴室にやってきたEH-LS12000が、HDR10+の4K UHD BD『8K空撮夜景 SKY WALK』冒頭の横浜の映像を映し出すと、にわかに3LCD方式の映像と信じられなかった。
画面の隅々まで透明感に溢れ、細部の潰れ、にじみがなく、情報量にあふれている。胸のすく清澄な映像だ。新たに採用した2軸方式の4Kエンハンスメントの動作は的確で、電気的なエンハンスに伴う疑似信号がみられず、妨害要素のない、細部を慈しむことができる画質だ。階調のきめ細かさ、豊富さも印象的で、新画像処理デバイスの「シーン適応ガンマ補正」が的確に動作していることがわかる。
3LCD方式は厚みのある芳醇な発色が特徴で、よくいうと絵画的で甘美だが、LCOSほど色域が広くなく、中間色のバラエティや透明感で及ばなかった。しかし、ここでも新画像処理デバイスの威力を発揮し、EH-LS12000は階調の改善をベースに、色彩表現が従来の3LCDの認識を一変させるほど、繊細できめ細やかなニュアンスと切れ味がある。
本機の画質をもっと深く見極めようと、EH-LS12000を自宅視聴室に預かった。取扱説明書を見ずとも、投写位置とサイズの調整、フォーカス調整までごく迷わず短時間で終了する。セットアップに手がかからないのは素性に優れる証明である。