HOME > レビュー > 映像と一体になる幸福な時間を生む名シェフ。エプソン新旗艦プロジェクター「EH-LS12000」レビュー

【PR】映像を愛するすべての人に薦められる

映像と一体になる幸福な時間を生む名シェフ。エプソン新旗艦プロジェクター「EH-LS12000」レビュー

公開日 2022/02/24 06:30 大橋伸太郎
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

本機はカラーモードに「ダイナミック」「ビビッド」「ブライトシネマ」「シネマ」「ナチュラル」がある。「ダイナミック」が2700ルーメンを実現する最も明るいモード、「ビビッド」は明るい部屋でTVのような画質で楽しむモード、「ブライトシネマ」が明るい部屋で映画を楽しむモード、「シネマ」が本格的に映画を楽しむモードだ。「ナチュラル」は画像処理を行わない素のままで映像を見るモードである。デフォルト設定では「ダイナミック」から「シネマ」まではフレーム補間が入るが、「ナチュラル」では入らず、バッファをイニシャライズする関係で「ナチュラル」に切り替えるときだけ若干時間がかかる。

「ブライトシネマ」で『8K空撮夜景 SKY WALK』を再見してみよう。上記取材時はホワイトマットのスクリーンで視聴したのに対し、筆者試聴室のスクリーンはビーズである。本機のメニュー画質調整は、映像調整なり大項目を選択し、下へスクロールしていくと他の項目が続けて表示される構成で、いったん戻らずに済むのでユーザーフレンドリー。ただし、調整項目は多彩かつユーザーに向けて開かれている。

豊富な調整メニューを用意

付属リモコンから各種操作が行える

今回の新機軸が詳細設定の中にある「ダイナミックレンジ」。オート、HDR10/HDR+、SDRの選択に加え、HDR10ターゲット輝度のマニュアル設定機能に注目したい。

HDR導入初期にコンテンツプロバイダー(ソフトを作る側)のMaxFALL設定の数値が5000、2000、1000nitsとばらばらだった。ソフトの実態に即して、本機のユーザーがマニュアルでターゲット輝度のnits数を変えられるのがこの機能である。

デフォルト、つまり中央設定は「8」で設定している。一番左へ下げたところで、画面全体が飽和気味に明るくなり階調も変わる。一番右にいくと最大輝度1000nitsの『8K空撮夜景 SKY WALK』では暗くなる。大半の夜景シーンでは眩しすぎるのだが、今回「11」に設定して視聴開始した。

HDR10の輝度設定を調整すると、「8」(左)と「2」(右)で大きく見え方が異なることがわかる

初見の印象と同様に、いやそれ以上に、精細感とS/N、細部の見通しの良さが圧巻。ネイティブ4K LCOS方式で繰り返し見てきた映像に、解像感も鮮鋭感も遜色がない。黒の沈み込みやこそやや及ばないが、反面ビーズスクリーンとの組み合わせで、ピークは眩いほど明るい。

印象的なことに、東京の夜景の地平線近くの闇に埋もれた、低層の建物の微妙な高低が伝わってくる。「シネマ」に切り替えるとコントラストが落ち着いて実景を肉眼で目視している印象に近づくが、このビデオグラムの狙いはリアルな実景感覚と別のところ、つまり世界一と賞される東京の夜景の華にあり、その狙いであるスペクタクルなページェント性が薄れてしまう。「ブライトシネマ」をベースに調整していくことを薦める。

一方、「ナチュラル」に切り替えると、明るいシーンで高層建築のエッジ表現等の輪郭表現に好結果が生まれるが、EH-LS12000の新機軸の4K60Pフレーム補間が適用されなくなり、ヘリ空中撮影で被写体がゆったり動く本作では没入感が減退した。それほど、本機の4K60Pフレーム補間のアルゴリズムが正確に動いているということである。

映像と一体になる幸福な時間を生む、ホームシアターの名シェフ

EH-LS12000の、従来の3LCDの常識を越える映像は、映画ソフトで現れた。1960年代ハリウッドの美術、衣装、照明、撮影といった映画技術の頂点を示す名作『マイ・フェア・レディ』が昨年4K UHD BD化された。65mmフィルムにさかのぼって入念に4K/HDR化された映像は、濃密な階調と妖艶な発色、随所に煌めくピークの光輝に、仕事であることを忘れ陶然とさせられた。

かつての3LCDは色彩表現にしばしば濁りを感じさせ、色彩の豊かな映画ほど平板な塗り絵的な映像になるきらいがあったが、EH-LS12000はつねに清澄で透明感を失わない。中望遠レンズで手前のイライザ(オードリー・ヘプバーン)のアップにフォーカスが合い、背景のヒギンズやピカリングがオフフォーカスになるシーンのぼけ味の美しさと微妙な遠近感の加減は悶絶ものである。

映画公開から50年余初めてディスク発売されたルキノ・ヴィスコンティ監督『異邦人』(2KBD)の重厚なコントラストも見事だった。この映画のもうひとつの主役は「陽光」だが、本機の映像はアルジェリアの太陽の無慈悲で峻烈な輝きとアラブ青年のナイフの残酷な運命的煌めきを、スクリーンと見る者の網膜に焼付けて説得力がある。SDRの映像にも妥協がない。

しかし、何より肝心なことは、映画を見ている時間、プロジェクターの存在を筆者がいつしか忘れていることだ。ホームシアターの名シェフであるとは方式でもスぺックの数字でもなく、映像と一体になる幸福な時間を生むことなのだ。



EH-LS12000は547,800円(税込)という価格で発売される。強靭な明るさで千差万別の視聴環境に対応し、エプソンらしい柔軟な設置性も魅力。間口が広く包容力がある一方、使いこなし甲斐のある製品として映像を愛する人たちすべてに薦められる。プロジェクターとして初めて三年保証を実現したこともヘビーユーザーに心強い。

(提供:エプソン販売株式会社)

前へ 1 2

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE