【特別企画】KT88×4基を精悍なブラックボディに搭載
新世代トライオードの方向性を示す真空管プリメイン「EVOLUTION」。駆動力を生かした伸びやかさが好印象
■KT88を搭載、人気モデルの上級機として開発された意欲作
創業からおよそ27年。国産真空管アンプの世界を牽引してきたトライオードから、次なるスタンダードとなり得るであろう、進化の形を具現化した新たな管球式プリメインアンプ「EVOLUTION」が誕生した。
人気モデル「TRV-88SER」の上級機として開発されたといい、出力管は同じKT88を用いたUL接続AB級プッシュプル方式を取り入れている。しかしボディは「MUSASHI」のデザイン性を踏襲した精悍なピアノブラック仕上げとし、フロントパネルはフラットな意匠を基調としたシンプルな装いにまとめ上げた。
特に大きな進化点は真空管アンプの常識を打ち破る機能面の改善にあり、その一端がフロントパネルにある視認性の高い大きなLEDディスプレイに表れている。
まずアルミ削り出しによる付属リモコンに目を落とすと従来モデルでは用いられていない電源スタンバイのキーがあることが分かる。つまりアンプ本体から離れた場所からの電源入/切が遠隔的に行える上、大きなディスプレイによって遠くからでも音量値や入力ステイタスが一目瞭然となるのだ。さらにリモコンには入力ソースのダイレクト選択キーも設けられ、一般的な半導体方式のアンプと同等の使い勝手を獲得している。
■トライオードとして初の電子ボリュームを採用
そして進化のさらなるポイントは音量調節機構にあり、同社真空管アンプとしては初めて電子ボリュームを採用した。高音質でギャングエラーや左右偏差のないアナログボリュームの選択肢がなくなりつつある現代において、解決策となり得るデバイスが電子ボリュームである。
従来のアナログボリュームでは極端な例を挙げると微小な入力信号をシャーシの後面端から前面端まで引き回すことになり、信号経路上のロスになることもあった。またこの点を解消するため、アナログボリュームを入力端子の近くに配置し、金属製ロッドで軸を延長する手法も登場したが、機構が複雑化することに加え振動の影響も受けやすい欠点もあった。まさにアナログボリュームは使い勝手と音質の天秤にかけられる宿命を背負った部位であったが、電子ボリュームの導入でこうした問題も解決できるのである。
本機では新日本無線製の上位高音質仕様の電子ボリュームMUSES72320を搭載。さらにマイコンを導入することで電源やリレーを用いた入力切り替えのリモコン操作にも対応できるようになったのである。
フロントパネルのボリュームノブはロータリーエンコーダーであり、従来では成し得なかったきめ細かいステップかつスムーズな音量増減を実現。そして音質面に対してもS/Nの良いクリアなサウンドをもたらすことに繋がったのである。
一方、固定バイアスを取り入れた真空管アンプとしての使い勝手という点で欠かせないのが真空管交換などのメンテナンスに必要なバイアス調整機構だ。本機ではシャーシ天面にバイアスメーターとバイアス調整ボリュームを配置し、ユーザーサイドで簡単に調整が行えるようになっている。
EVOLUTIONの仕様面についても触れておこう。初段は12AX7のSRPP、次段は12AU7を用いた位相反転回路となっており、12AX7、12AU7は左右chで各1本ずつ使用。出力段はUL接続によるKT88プッシュプル構成で、40W×2(8Ω負荷)の余裕ある出力を生み出している。
入力はラインレベルに特化した設計であり、4系統のRCA入力を備え、本機をパワーアンプとして使用できるMAIN IN入力も用意。B電源の整流にはSiCショットキーバリアダイオードを用いている。奇をてらわず基本に忠実なつくりである上、各部安定的な動作を行えるよう配慮した設計であり、長期間の使用も見据えたアンプといえよう。
■伸びやかでS/N感高く、音場の見通しの良さを実感
スピーカーにB&W「803D3」を繋いで試聴を行ったが、ビーム管らしいガッツのあるサウンドを聴かせるTRV-88SERに対し、余裕のある駆動力を生かした伸びやかさと管球ならではの艶やかな倍音表現にベクトルを向けている印象である。加えて電子ボリュームの効果か、S/N感も高く、音場の見通しの良さも実感できた。
オーケストラのローエンドは押し出しよく豊かだが、適度なダンピングを利かせクリアに表現。中低域の密度感が音像の安定感を生んでおり、高域にかけてのハリ感が管弦楽器の旋律を生き生きと浮き立たせている。ソロヴァイオリンは弦の太さとコシのある伸びを軸としつつ、倍音の潤い感が加わりスッキリと描写。ふわりと浮き上がるかのような繊細な立ち上がりの軽やかさもナチュラルに引き出し、臨場感あるハーモニーを聴かせてくれた。空間表現力も高く、余韻の階調性も細かく緻密だ。
ジャズ音源においてはキレ良く鮮やかなホーンセクションの透明感が印象的で、ピアノやシンバルの響きもクリアに澄み渡る。高域にかけての倍音も豊かで、余韻も華やかだ。ウッドベースは凝縮した胴鳴りの響きを弾力良く逞しく描く。女性ヴォーカルの肉づき良くふっくらとした音像も耳当たり良く、口元の潤いはフォーカス良く輪郭を結ぶ。
そしてロック音源は引き締まったリズム隊のキレ、密度良いボディの厚みが生むパワフルな押し出し感を堪能。エレキギターの粘り良いリフとソリッドかつクリアなヴォーカルの描写も好対照で、スネアやシンバルはヌケ良く描くがきつさはない。
真空管の持つ温かみを感じさせつつも、細部を引き締め、曖昧さを排除したリアリティ溢れるサウンドは “EVOLUTION=進化” の言葉通り、これからの管球アンプの行く先を指し示す新たな指標となり得るものといえるだろう。真空管という個性や音色の味わいからの選択ではなく、メインアンプとして使える音質・機能性を備えたモデルとして、初めての管球アンプとしてもお薦めできる製品だ。
(提供:トライオード)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.184』からの転載です
創業からおよそ27年。国産真空管アンプの世界を牽引してきたトライオードから、次なるスタンダードとなり得るであろう、進化の形を具現化した新たな管球式プリメインアンプ「EVOLUTION」が誕生した。
人気モデル「TRV-88SER」の上級機として開発されたといい、出力管は同じKT88を用いたUL接続AB級プッシュプル方式を取り入れている。しかしボディは「MUSASHI」のデザイン性を踏襲した精悍なピアノブラック仕上げとし、フロントパネルはフラットな意匠を基調としたシンプルな装いにまとめ上げた。
特に大きな進化点は真空管アンプの常識を打ち破る機能面の改善にあり、その一端がフロントパネルにある視認性の高い大きなLEDディスプレイに表れている。
まずアルミ削り出しによる付属リモコンに目を落とすと従来モデルでは用いられていない電源スタンバイのキーがあることが分かる。つまりアンプ本体から離れた場所からの電源入/切が遠隔的に行える上、大きなディスプレイによって遠くからでも音量値や入力ステイタスが一目瞭然となるのだ。さらにリモコンには入力ソースのダイレクト選択キーも設けられ、一般的な半導体方式のアンプと同等の使い勝手を獲得している。
■トライオードとして初の電子ボリュームを採用
そして進化のさらなるポイントは音量調節機構にあり、同社真空管アンプとしては初めて電子ボリュームを採用した。高音質でギャングエラーや左右偏差のないアナログボリュームの選択肢がなくなりつつある現代において、解決策となり得るデバイスが電子ボリュームである。
従来のアナログボリュームでは極端な例を挙げると微小な入力信号をシャーシの後面端から前面端まで引き回すことになり、信号経路上のロスになることもあった。またこの点を解消するため、アナログボリュームを入力端子の近くに配置し、金属製ロッドで軸を延長する手法も登場したが、機構が複雑化することに加え振動の影響も受けやすい欠点もあった。まさにアナログボリュームは使い勝手と音質の天秤にかけられる宿命を背負った部位であったが、電子ボリュームの導入でこうした問題も解決できるのである。
本機では新日本無線製の上位高音質仕様の電子ボリュームMUSES72320を搭載。さらにマイコンを導入することで電源やリレーを用いた入力切り替えのリモコン操作にも対応できるようになったのである。
フロントパネルのボリュームノブはロータリーエンコーダーであり、従来では成し得なかったきめ細かいステップかつスムーズな音量増減を実現。そして音質面に対してもS/Nの良いクリアなサウンドをもたらすことに繋がったのである。
一方、固定バイアスを取り入れた真空管アンプとしての使い勝手という点で欠かせないのが真空管交換などのメンテナンスに必要なバイアス調整機構だ。本機ではシャーシ天面にバイアスメーターとバイアス調整ボリュームを配置し、ユーザーサイドで簡単に調整が行えるようになっている。
EVOLUTIONの仕様面についても触れておこう。初段は12AX7のSRPP、次段は12AU7を用いた位相反転回路となっており、12AX7、12AU7は左右chで各1本ずつ使用。出力段はUL接続によるKT88プッシュプル構成で、40W×2(8Ω負荷)の余裕ある出力を生み出している。
入力はラインレベルに特化した設計であり、4系統のRCA入力を備え、本機をパワーアンプとして使用できるMAIN IN入力も用意。B電源の整流にはSiCショットキーバリアダイオードを用いている。奇をてらわず基本に忠実なつくりである上、各部安定的な動作を行えるよう配慮した設計であり、長期間の使用も見据えたアンプといえよう。
■伸びやかでS/N感高く、音場の見通しの良さを実感
スピーカーにB&W「803D3」を繋いで試聴を行ったが、ビーム管らしいガッツのあるサウンドを聴かせるTRV-88SERに対し、余裕のある駆動力を生かした伸びやかさと管球ならではの艶やかな倍音表現にベクトルを向けている印象である。加えて電子ボリュームの効果か、S/N感も高く、音場の見通しの良さも実感できた。
オーケストラのローエンドは押し出しよく豊かだが、適度なダンピングを利かせクリアに表現。中低域の密度感が音像の安定感を生んでおり、高域にかけてのハリ感が管弦楽器の旋律を生き生きと浮き立たせている。ソロヴァイオリンは弦の太さとコシのある伸びを軸としつつ、倍音の潤い感が加わりスッキリと描写。ふわりと浮き上がるかのような繊細な立ち上がりの軽やかさもナチュラルに引き出し、臨場感あるハーモニーを聴かせてくれた。空間表現力も高く、余韻の階調性も細かく緻密だ。
ジャズ音源においてはキレ良く鮮やかなホーンセクションの透明感が印象的で、ピアノやシンバルの響きもクリアに澄み渡る。高域にかけての倍音も豊かで、余韻も華やかだ。ウッドベースは凝縮した胴鳴りの響きを弾力良く逞しく描く。女性ヴォーカルの肉づき良くふっくらとした音像も耳当たり良く、口元の潤いはフォーカス良く輪郭を結ぶ。
そしてロック音源は引き締まったリズム隊のキレ、密度良いボディの厚みが生むパワフルな押し出し感を堪能。エレキギターの粘り良いリフとソリッドかつクリアなヴォーカルの描写も好対照で、スネアやシンバルはヌケ良く描くがきつさはない。
真空管の持つ温かみを感じさせつつも、細部を引き締め、曖昧さを排除したリアリティ溢れるサウンドは “EVOLUTION=進化” の言葉通り、これからの管球アンプの行く先を指し示す新たな指標となり得るものといえるだろう。真空管という個性や音色の味わいからの選択ではなく、メインアンプとして使える音質・機能性を備えたモデルとして、初めての管球アンプとしてもお薦めできる製品だ。
(提供:トライオード)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.184』からの転載です