PR音の描き分けも秀逸、音源の質を問わない再生力が魅力
響く低音で音楽をまさに“体感”!Unique Melody新IEM「MEXT」の骨伝導サウンドを聴いた
新骨伝導ドライバーが鳴らすパワフルな低音が魅力!体で音楽を感じる “刺激的” なサウンド
Astell&KernのDAP「A&ultima SP1000」を使い、MEXTのサウンドを確かめた。Vaundyの「恋風邪にのせて」を再生すると、イントロの低域と連動して微細な振動が耳介から骨に伝わり頭を貫く。MESTシリーズの骨伝導ドライバーが音色を頭に響かせる感覚だったのに対し、MEXTのOBC骨伝導ドライバーは、サウンドのエネルギーをそのまま体に伝えてくる感覚だ。
その音質は全体的に高解像度で滑らか。特筆すべきは中低域の表現力だ。音の芯が太くふくよかでありつつ、エッジにキレがあるため溌剌としている。それこそ、ギターのディストーションが効いた太いサウンドから、ボーカルの繊細なビブラートまできちんと描き分ける。
MEXTが搭載するBA型ドライバーとダイナミック型ドライバーはすべて、OBC骨伝導ドライバーの特性に合わせてチューニングされたUnique Melody専用のカスタム品とのこと。実際に聴いてみると、低域の迫力に負けずに、繊細な表現ができることを意図したのがよくわかる。
Official髭男dismの「ミックスナッツ」も同様で、イントロからベースラインが骨伝導によって頭の中を駆け巡る。低域を中心にサウンドのエネルギー感が凄まじく、大音量のスピーカーから音を浴びているよう。それでいて、一つひとつの音色がしっかり聴き分けられる表現を備えているのだから、楽しくてつい長時間聴き入ってしまう。
低音をもっと味わいたく、ベース音が美しい曲を思い浮かべて、モータウンサウンドが思いついた。そこで、マービン・ゲイの「What's Going On」を再生したところ、イントロから鳥肌が立ちまくりだった。シンコペーションを多用したメロディアスなベース音は、一つひとつの音は粒立ちがよく心地よく頭内に響く。ここに透明感あるボーカルと分厚いコーラスが重なり、鳥肌が立つほど優しく体に染みてくるのだ。
ここで、OBC骨伝導ドライバーがカバーする中低域が充実している反面、高域が苦手なのではないかと意地悪な考えが頭をよぎった。そこで、高域が繊細な曲も試そうと、ビル・エヴァンス・トリオの「My Foolish Heart」を再生。冒頭のゆったり入るピアノの音は瑞々しく、音に立体感があり、ピアノの高音も消え際まで手を抜かず描かれている。ドラムのブラシワークやハイハットの微細な音も明瞭だ。
小澤征爾が指揮する「レスピーギ:交響詩 ローマの松」(ボストン交響楽団)から、オーケストラ「ローマの松」を聴くと、中低域の厚みが素晴らしい。高域はキラキラした派手さがなく、やや控えめに感じられる。しかし、上まで伸びていないとか、表現力が甘いといったことはない。中低域のように骨伝導ドライバーで直接頭に届く音が少ないことによる印象の違いが大きいだろう。
他にも様々ジャンルの楽曲を試したが、共通して感じられたのが「ソースの質に左右されない」こと。音のクオリティが高ければそれを忠実に描き、圧縮音源のようにやや音質に限界があるような場合はそれを感じさせずに、MEXTらしい骨伝導サウンドに仕立ててくれる。
ここでいう “MEXTらしさ” とは、音楽を聴くだけでなく、“体で楽しめる” こと。この、MESTシリーズでも味わえない、まさに唯一無二の価値を、ぜひ手にして欲しい。
(協力:ミックスウェーブ)