PRデザインと内部設計を刷新
音の実在感がまるで違う、大幅強化されたIsoTekの電源コンディショナーを体験
ナスペックが取り扱う英IsoTekブランドから、パワーコンディショナー「V5 Aquarius」と「V5 Titan」が発売された。V5 Aquariusは、1つの筐体に6つの独立したフィルターを搭載したコンセントを持ち、前段用・ソース機器用の4つの出力と後段用・高電流デバイス用の2つの出力を装備している。また、V5 Titanは、後段用・高電流デバイス用の3つの出力を搭載するパワーアンプ用のパワーコンディショナーとなっている。本稿ではV5 Aquariusを中心に、そのポテンシャルについて、小林 貢氏と井上千岳氏がレポートする。
IsoTek(アイソテック)はノイズから解放されたクリーンな電気を作り出し、ハイエンドのオーディオファンやホームシアターファンに高い音質改善効果を提供すべく、2001年にイギリスに設立された電源コンディショナーブランドだ。
そんなアイソテックから、従来モデル「EVO3 Aquarius」および「EVO3 Titan」のデザインや内部回路を見直した、「V5 Aquarius」と「V5 Titan」という2製品が発売された。今回は、前段機器用のV5 Aquariusの概要と音質傾向について取り上げたい。
アイソテックの電源コンディショナーの特徴は、デルタ・フィルター、DCDフィルターと呼称される、オリジナルフィルターの搭載にある。
この2つのフィルターは、家電製品などで発生し電源から混入するディファレンシャル・モード・ノイズ(ノーマルモード・ノイズ)と、携帯電話やWi-Fi信号など空気中を飛び交う電波によるコモン・モード・ノイズに対して、効果的なフィルターであり、これがコア技術となっている。
デルタ・フィルターには、高透磁率で飽和磁束密度の高い特殊高性能コアに低抵抗コイルを巻いた独自コイル、音質と品質を徹底的に吟味したコンデンサー類が採用されている。負荷電流による電圧変動を低く抑えながら、電源などから混入するノイズと電波によるコモン・モード・ノイズに対して効果を発揮する。アイソテックではノイズ低減効果が高くて色づけがなく、音楽の躍動感を損ねることのない理想的なフィルタリング技術としている。
並列接続されるフィルター群と出力コンセント群は、1点から放射状に分岐して共通インピーダンスを追放したスター結線を採用しているのも特徴だ。この技術により同社のコンディショナーは、フィルター間や出力コンセント間の相互干渉を効果的に防いでいる。
また、回路基板の銅面積を35%増加したことで、直流抵抗が少なくとも25%改善されたという。これにより、さまざまなインピーダンスの機器を接続したとしても、一定の電圧を安定的に供給できるようになっている。
そして、簡単にリセット可能な熱磁気ヒューズシステムを新たに搭載。一時的な過電流に対しては、ゆっくりと反応し、大きな短絡電流には素早い反応をするなどの適切な設定を可能にしている。
さらに、雷などからオーディオ機器を守るサージフィルターも搭載して、最大81,000Aの瞬間最大耐量、連続でも40,000Aまで保護できる。この熱磁気ヒューズ(高電流ソケット2つには16A、残りの4つのソケットに6A)は、標準的なヒューズの1,000倍以上の接触面積を持ち、大幅なアップグレードを実現した。
同社のパワーコンディショナーにはBNR(Bidirectional noise reduction)と呼ばれる技術が採用されている。AC電源ラインから混入するノイズを低減するのはコンディショナーとして当然だが、本機では各機種が出す整流ノイズやデジタルノイズを低減し、AC電源への汚染を防ぐ電源汚染低減効果も併せ持っている。本機につないだAC電源からノイズが他へ流れることもない。これにより、同社コンディショナーを通していない機器の音質まで改善するという。
また今回の改良で注目しなくてはならないのは、新デザインのシャーシだ。洗練された簡潔な筐体だが、アルミブロックを切削加工した贅沢な仕様となっている。
デジタル・プレーヤーとパワーアンプをV5 Aquariusに接続して『ジュビレーション』を聴くと、明らかにSN比が向上し、スタジオ空間の透明度も高くなる。八城のスネアドラムのショットも切れが良く、ブラッシュワークでは、スネアのヘッドとブラシの擦過音がより鮮明に再現された。それに加えて、ボトムエンドの解像度も高まり、ウッドベースの微細な胴鳴りも鮮明に聴き取れるようになった。
クルセイダーズとB.B.キングが共演した『ロイヤル・ジャム』を聴くと、さまざまな楽器の音像が鮮明に浮かび上がり、B.B.キングのヴォーカルも生き生きとして、ギターのチョーキング(ベンディング)なども伸びやかに再現された。
そしてバックに展開するオーケストラも、艶やかで瑞々しい響きとなる。重量感のあるスティックス・フーパーのキックドラムの音像も適度なタイトさがあり、アタック音の反応も良く、歯切れの良いビートを刻む。ウィルトン・フェルダーのサックスのファンク・グルーブも高まるなど、音楽のエッセンスやダイナミズムを正確に描き出してくれた。
アイソテックを初めて聴いたときの印象は、ノイズが減少するのは当然として同時にエネルギーが弱まらず、むしろ強化されるというものであった。パッシブ・タイプでノイズ処理などを行うと必ずと言っていいほど力がなくなるもので、だからアイソテックのエネルギーの高さには大変驚いたものである。
ところが従来のEVO3シリーズを新しいV5シリーズの2機と一緒に聴いてみると、ずいぶんおとなしく感じるのが不思議なほどだった。決して力が弱くなったわけではなく鳴り方はこれまでどおりだったのだが、V5シリーズがいっそう強力になっているためそう感じたのである。今回のリファインではこの伝送エネルギーの強化が、一番の特徴になっているように思われる。
エネルギーというと、例えばオーケストラやピアノのような、瞬発的なダイナミズムの広さのことと思われるかもしれない。確かにそれもあるが、起伏の拡大だけがエネルギーの現れなのではない。バロックやコーラスなど比較的静かなソースでは、一音一音の立ち上がりに充実感がみなぎっている。だから弱音部でも音の存在感がずっと明瞭なのである。エネルギーはこういう形でも現れるのだ。
もちろんオーケストラでは起伏の高さがいままでの倍ぐらいになったようにスケールが大きい。ことにトゥッティの壮大な響きは文句なしの説得力で、部屋中の空気全部が振動しているような密度の高い力感に満ちている。しかもその強音の中でも楽器それぞれの音色や輪郭が崩れないのは、解像力にしっかりした支えがあることの証である。
ピアノでも同様で、低音部のフォルテがひと回り深くなったように厚く手応えが強い。そしてダイナミズムの幅が広いために、音楽的な表現力が非常に雄弁なのだ。彫りの深いことがその要因になっていると言っていい。
新製品の2機どちらにも同じことが言える。再現の厚みと実在感が違うのである。
本記事は「Audio Accessory 185号」からの転載です。
(協力:株式会社ナスペック)
従来モデルを大幅に見直して登場した電源コンディショナー Text by 小林 貢
IsoTek(アイソテック)はノイズから解放されたクリーンな電気を作り出し、ハイエンドのオーディオファンやホームシアターファンに高い音質改善効果を提供すべく、2001年にイギリスに設立された電源コンディショナーブランドだ。
そんなアイソテックから、従来モデル「EVO3 Aquarius」および「EVO3 Titan」のデザインや内部回路を見直した、「V5 Aquarius」と「V5 Titan」という2製品が発売された。今回は、前段機器用のV5 Aquariusの概要と音質傾向について取り上げたい。
アイソテックの電源コンディショナーの特徴は、デルタ・フィルター、DCDフィルターと呼称される、オリジナルフィルターの搭載にある。
この2つのフィルターは、家電製品などで発生し電源から混入するディファレンシャル・モード・ノイズ(ノーマルモード・ノイズ)と、携帯電話やWi-Fi信号など空気中を飛び交う電波によるコモン・モード・ノイズに対して、効果的なフィルターであり、これがコア技術となっている。
デルタ・フィルターには、高透磁率で飽和磁束密度の高い特殊高性能コアに低抵抗コイルを巻いた独自コイル、音質と品質を徹底的に吟味したコンデンサー類が採用されている。負荷電流による電圧変動を低く抑えながら、電源などから混入するノイズと電波によるコモン・モード・ノイズに対して効果を発揮する。アイソテックではノイズ低減効果が高くて色づけがなく、音楽の躍動感を損ねることのない理想的なフィルタリング技術としている。
並列接続されるフィルター群と出力コンセント群は、1点から放射状に分岐して共通インピーダンスを追放したスター結線を採用しているのも特徴だ。この技術により同社のコンディショナーは、フィルター間や出力コンセント間の相互干渉を効果的に防いでいる。
また、回路基板の銅面積を35%増加したことで、直流抵抗が少なくとも25%改善されたという。これにより、さまざまなインピーダンスの機器を接続したとしても、一定の電圧を安定的に供給できるようになっている。
そして、簡単にリセット可能な熱磁気ヒューズシステムを新たに搭載。一時的な過電流に対しては、ゆっくりと反応し、大きな短絡電流には素早い反応をするなどの適切な設定を可能にしている。
雷用サージフィルターの搭載や他の機器への電源汚染にも対応
さらに、雷などからオーディオ機器を守るサージフィルターも搭載して、最大81,000Aの瞬間最大耐量、連続でも40,000Aまで保護できる。この熱磁気ヒューズ(高電流ソケット2つには16A、残りの4つのソケットに6A)は、標準的なヒューズの1,000倍以上の接触面積を持ち、大幅なアップグレードを実現した。
同社のパワーコンディショナーにはBNR(Bidirectional noise reduction)と呼ばれる技術が採用されている。AC電源ラインから混入するノイズを低減するのはコンディショナーとして当然だが、本機では各機種が出す整流ノイズやデジタルノイズを低減し、AC電源への汚染を防ぐ電源汚染低減効果も併せ持っている。本機につないだAC電源からノイズが他へ流れることもない。これにより、同社コンディショナーを通していない機器の音質まで改善するという。
また今回の改良で注目しなくてはならないのは、新デザインのシャーシだ。洗練された簡潔な筐体だが、アルミブロックを切削加工した贅沢な仕様となっている。
音楽の勢いやエッセンスを正確に描写して再現させる
デジタル・プレーヤーとパワーアンプをV5 Aquariusに接続して『ジュビレーション』を聴くと、明らかにSN比が向上し、スタジオ空間の透明度も高くなる。八城のスネアドラムのショットも切れが良く、ブラッシュワークでは、スネアのヘッドとブラシの擦過音がより鮮明に再現された。それに加えて、ボトムエンドの解像度も高まり、ウッドベースの微細な胴鳴りも鮮明に聴き取れるようになった。
クルセイダーズとB.B.キングが共演した『ロイヤル・ジャム』を聴くと、さまざまな楽器の音像が鮮明に浮かび上がり、B.B.キングのヴォーカルも生き生きとして、ギターのチョーキング(ベンディング)なども伸びやかに再現された。
そしてバックに展開するオーケストラも、艶やかで瑞々しい響きとなる。重量感のあるスティックス・フーパーのキックドラムの音像も適度なタイトさがあり、アタック音の反応も良く、歯切れの良いビートを刻む。ウィルトン・フェルダーのサックスのファンク・グルーブも高まるなど、音楽のエッセンスやダイナミズムを正確に描き出してくれた。
新しいV5シリーズは伝送エネルギーが強化されたことが一番の特徴 Text by 井上千岳
アイソテックを初めて聴いたときの印象は、ノイズが減少するのは当然として同時にエネルギーが弱まらず、むしろ強化されるというものであった。パッシブ・タイプでノイズ処理などを行うと必ずと言っていいほど力がなくなるもので、だからアイソテックのエネルギーの高さには大変驚いたものである。
ところが従来のEVO3シリーズを新しいV5シリーズの2機と一緒に聴いてみると、ずいぶんおとなしく感じるのが不思議なほどだった。決して力が弱くなったわけではなく鳴り方はこれまでどおりだったのだが、V5シリーズがいっそう強力になっているためそう感じたのである。今回のリファインではこの伝送エネルギーの強化が、一番の特徴になっているように思われる。
エネルギーというと、例えばオーケストラやピアノのような、瞬発的なダイナミズムの広さのことと思われるかもしれない。確かにそれもあるが、起伏の拡大だけがエネルギーの現れなのではない。バロックやコーラスなど比較的静かなソースでは、一音一音の立ち上がりに充実感がみなぎっている。だから弱音部でも音の存在感がずっと明瞭なのである。エネルギーはこういう形でも現れるのだ。
もちろんオーケストラでは起伏の高さがいままでの倍ぐらいになったようにスケールが大きい。ことにトゥッティの壮大な響きは文句なしの説得力で、部屋中の空気全部が振動しているような密度の高い力感に満ちている。しかもその強音の中でも楽器それぞれの音色や輪郭が崩れないのは、解像力にしっかりした支えがあることの証である。
ピアノでも同様で、低音部のフォルテがひと回り深くなったように厚く手応えが強い。そしてダイナミズムの幅が広いために、音楽的な表現力が非常に雄弁なのだ。彫りの深いことがその要因になっていると言っていい。
新製品の2機どちらにも同じことが言える。再現の厚みと実在感が違うのである。
本記事は「Audio Accessory 185号」からの転載です。
(協力:株式会社ナスペック)