PR機能面がアップデートしつつ価格はお手頃に
これがモダンなV-MODAサウンド。「Crossfade 3 Wireless」が見せる“普遍性”と“チャレンジ”
■主張しすぎずともディープな低音が持ち味の「大人のクラブ系ヘッドホン」
サウンド面での注目ポイントは、同社独自の50mm径デュアル・ダイアフラム・ドライバーなど中核技術を継承した上で、ハウジング内部に新素材を採用するなどして実現したという新たなチューニング。現代的なクラブ/EDMサウンドを意識した、より力強くより高解像度な低音と、より存在感のある中高音が持ち味とのことだ。
今回はその音をスマートフォンとのaptX HD接続と、Astell&Kern「KANN MAX」との有線接続でチェック。まずはBluetooth接続時の印象を述べた上で、そこから有線接続に変更した際の変化について説明する。
一口に「クラブ/EDM向きのサウンド」といっても様々なターゲットやアプローチがあるわけだが、本機はバキバキゴリゴリのエレクトリックサウンドの攻撃力を高めるアグレッシブなヘッドホンではなく、クラブ系サウンドの中でも歌中心のボーカル楽曲などに特にフィットする、大人のクラブ系ヘッドホンというイメージ。
Robert Glasper Experiment「Human」を聴くとその個性がわかりやすい。エレクトリックなクラブサウンドでありつつメロウでソウルフルな雰囲気でもあるこの曲は、そのエレクトリック成分とメロウ成分のどちらがより支配的に感じられるかというバランスが、再生するシステムによって違ってくる。このCrossfade 3で聴くとそれがメロウ側に寄るわけだ。
聴いているときに頭に浮かぶ情景が、煌めくライティングではなく落ち着いた薄闇になる。そんな様子を想像してもらうと感覚的にわかりやすいかもしれない。
低域側の表現傾向もクラブ系サウンドの印象を大きく左右する要素だ。このモデルは、中域下側のローミッド帯域をプッシュしすぎることなく、超低域のサブベース帯域まで素直になだらかに伸びている。ボーカル帯域の充実の方が目立つので相対的にはさほど目立たないが、低域も何の不足もない仕上がりだ。
宇多田ヒカル「BADモード」では、ドラムスとベースのモコッとした感触をうまく生かし、あえての少し古めの雰囲気も入れた音作りをうまく表現。音像をダイナミックに大柄に描き出すが、前述のローミッド帯域の無駄のなさもあってか、その大柄な音像が隙間なく密集して窮屈になってしまう感じはしないのも美点だ。
全体にソフトタッチ傾向でありつつ、ハイハットの刻みがぼやけたりエレクトリックギターの鈴鳴りが損なわれたりすることもない。大柄でおおらかな表現を持ち味としつつ、細部の描き込みも兼ね備えられている。そこはこのヘッドホンの大きな強みだ。