PRリモコンも付属し使い勝手もさらに向上
トライオード「TRV-88XR」は真空管ならではの潤いが魅力。さらに進化したKT88搭載機を聴く
トライオードの主力となる真空管プリメインアンプに付けられるTRVシリーズ。今回、KT88採用モデル「TRV-88XR」が新たにバージョンアップを遂げた。真空管のバイアスチェックができるほか、EL34の交換にも対応する。本機のサウンドを探ってみよう。
トライオードの人気作「TRV-88SER」の進化版として「TRV-88XR」が新たに登場した。KT88のプッシュプルで35W+35W(8Ω)の出力は同様ながら、出力管としてEL34を選ぶ場合の切り替えスイッチを設けたり、メーターつきのバイアス調整機構を載せるなど、使いこなしの幅を広げる装備を充実させたことが今回の進化のポイントだ。
TRV-88SERは、トライオードの真空管プリメインアンプを代表するロングセラーモデルで、フォノ入力を含む本格的な仕様を比較的入手しやすい価格で実現していることが人気の秘密だ。TRV-88XRもそのコンセプトを引き継ぎつつ、3系統のライン入力を背面に集約したり、スピーカー出力を4〜8Ω対応の1系統にまとめるなど、入出力の装備はさらに使いやすい構成になった。
トップパネルにはKT88/EL34の切り替えスイッチ、左右の出力管ごとに独立したバイアス調整用の真空管切り替えスイッチを備えており、メーターを見ながら精密ドライバーを用いて1本ごとに最適なバイアスの設定が行える。12AX7と12AU7で構成した前段のアンプ回路、大型トロイダルコアトランスとSiCショットキーバリアダイオードを組み合わせた強力な電源回路についてはTRV-88SERと同様と思われる。
今回聴いた試聴機の出力管はPSVANE製のKT88だったが、銘柄は変更される可能性がある。仕上げは光沢が美しいトライオード・レッドを採用し、重量級のリモコンが付属する。
試聴音源はレコードとCDを用意したが、前者はフェーズメーションのMCカートリッジ「PP-2000」とアキュフェーズのフォノイコライザー「C-47」の組み合わせなのでいずれもライン入力の音を聴いている。
ジャズ・アット・ザ・ポーンショップの『テイク・ファイヴ』はアルトサックスの息遣いやドラムのハイハットの動きなど演奏のダイナミックな要素を生々しく再現し、この録音ならではの臨場感を堪能することができた。ベースとバスドラムに沈み込むような重さはないが、特に後者はドラム奏者のアグレッシブなプレイをそのまま伝えるダイレクト感が好印象につながる。
ライナー指揮、シカゴ響の『イベリア』は金管楽器の音に光沢感があり、澄んだ抜けの良いサウンドが心地よい。打楽器の粒立ちがクリアなのはアタックが緩まず、勢いの強さを保っているからだろう。ラトル指揮、ベルリン・フィルのシベリウスはヴァイオリン群の音色に適度な潤いが乗り、フォルティシモでもきつい音になりにくい良さがある。木質の柔らかさをたたえたヴィオラとチェロの響きもそうだが、本機の音にはトランジスターアンプとはひと味違う魅力が確実に備わる。
CDで再生したビル・エヴァンスのライヴ音源は演奏の緊張感をもらさず引き出すテンションの高いサウンドを味わうことができ、リマスター盤のメリットを実感。レコード再生での印象と同様、今回のリニューアルは人気モデルの価値をさらに高める方向で確実な成果を上げていると感じた。
■開発者の声
株式会社トライオード代表取締役 山崎順一氏
TRV-88XRはKT88真空管を使用したアンプとしては14世代目にあたります。好評なTRV-88SERで懸案だったバイアス調整機能を搭載し、お客様御自身での真空管交換時のバイアス調整が簡単になりました。また、ブラックカラーのアルミ削り出しリモコンを標準装備とし、入力セレクターもリモコンで操作できる仕様としました。セレクターをロジック回路にすることにより入力信号の引き回しが最小限になり、信号情報の損失を抑えることができます。これにより音場と音像の再現性がアップし、今までのTRV-88シリーズ上最高傑作となりました。初めての真空管アンプでお悩みの方へお薦めします。
(提供:トライオード)
本記事は『季刊・analog vol.76』からの転載です。
ロングセラー真空管アンプがさらに進化。バイアス調整も手軽に
トライオードの人気作「TRV-88SER」の進化版として「TRV-88XR」が新たに登場した。KT88のプッシュプルで35W+35W(8Ω)の出力は同様ながら、出力管としてEL34を選ぶ場合の切り替えスイッチを設けたり、メーターつきのバイアス調整機構を載せるなど、使いこなしの幅を広げる装備を充実させたことが今回の進化のポイントだ。
TRV-88SERは、トライオードの真空管プリメインアンプを代表するロングセラーモデルで、フォノ入力を含む本格的な仕様を比較的入手しやすい価格で実現していることが人気の秘密だ。TRV-88XRもそのコンセプトを引き継ぎつつ、3系統のライン入力を背面に集約したり、スピーカー出力を4〜8Ω対応の1系統にまとめるなど、入出力の装備はさらに使いやすい構成になった。
トップパネルにはKT88/EL34の切り替えスイッチ、左右の出力管ごとに独立したバイアス調整用の真空管切り替えスイッチを備えており、メーターを見ながら精密ドライバーを用いて1本ごとに最適なバイアスの設定が行える。12AX7と12AU7で構成した前段のアンプ回路、大型トロイダルコアトランスとSiCショットキーバリアダイオードを組み合わせた強力な電源回路についてはTRV-88SERと同様と思われる。
今回聴いた試聴機の出力管はPSVANE製のKT88だったが、銘柄は変更される可能性がある。仕上げは光沢が美しいトライオード・レッドを採用し、重量級のリモコンが付属する。
トランジスターアンプとは異なる魅力が確実に備わる
試聴音源はレコードとCDを用意したが、前者はフェーズメーションのMCカートリッジ「PP-2000」とアキュフェーズのフォノイコライザー「C-47」の組み合わせなのでいずれもライン入力の音を聴いている。
ジャズ・アット・ザ・ポーンショップの『テイク・ファイヴ』はアルトサックスの息遣いやドラムのハイハットの動きなど演奏のダイナミックな要素を生々しく再現し、この録音ならではの臨場感を堪能することができた。ベースとバスドラムに沈み込むような重さはないが、特に後者はドラム奏者のアグレッシブなプレイをそのまま伝えるダイレクト感が好印象につながる。
ライナー指揮、シカゴ響の『イベリア』は金管楽器の音に光沢感があり、澄んだ抜けの良いサウンドが心地よい。打楽器の粒立ちがクリアなのはアタックが緩まず、勢いの強さを保っているからだろう。ラトル指揮、ベルリン・フィルのシベリウスはヴァイオリン群の音色に適度な潤いが乗り、フォルティシモでもきつい音になりにくい良さがある。木質の柔らかさをたたえたヴィオラとチェロの響きもそうだが、本機の音にはトランジスターアンプとはひと味違う魅力が確実に備わる。
CDで再生したビル・エヴァンスのライヴ音源は演奏の緊張感をもらさず引き出すテンションの高いサウンドを味わうことができ、リマスター盤のメリットを実感。レコード再生での印象と同様、今回のリニューアルは人気モデルの価値をさらに高める方向で確実な成果を上げていると感じた。
■開発者の声
株式会社トライオード代表取締役 山崎順一氏
TRV-88XRはKT88真空管を使用したアンプとしては14世代目にあたります。好評なTRV-88SERで懸案だったバイアス調整機能を搭載し、お客様御自身での真空管交換時のバイアス調整が簡単になりました。また、ブラックカラーのアルミ削り出しリモコンを標準装備とし、入力セレクターもリモコンで操作できる仕様としました。セレクターをロジック回路にすることにより入力信号の引き回しが最小限になり、信号情報の損失を抑えることができます。これにより音場と音像の再現性がアップし、今までのTRV-88シリーズ上最高傑作となりました。初めての真空管アンプでお悩みの方へお薦めします。
(提供:トライオード)
本記事は『季刊・analog vol.76』からの転載です。