PR8Kなどの最新フォーマットを抑えつつ、音にも妥協しない
デノンから新AVアンプ「AVR-X3800H」「X2800H」登場! 『トップガン・マーヴェリック』で実力を確かめた
■『トップガン・マーヴェリック』で2モデルの実力を検証
パワーアンプとプロセッシングのチャンネル数という物量の差を除けば、共通項が多いAVR-X3800HとAVR-X2800H。実際に聴き比べると、どうなのか。誰しも気になる最新作『トップガン・マーヴェリック(UHD BD)』と、優に100回は視ているバーホーベン監督の傑作『スターシップ・トゥルーパーズ(BD)』で検証してみた。
トップガン・マーヴェリックは、飛び去る戦闘機や四方八方へ飛ぶ銃弾など、“いかにもアトモス”なサウンドエフェクトが散りばめられたタイトル。それだけにトップ/ハイトスピーカーの数の差が顕著に現れ、音場の広さと高さ方向の再現力はX3800Hが一歩前を行く。
音像が上へ下へ、前へ後ろへと移動するドッグファイトのシーンでは、その有利さがより顕著に。Auro-3Dを重ね掛けするとさらに立体感が増し、素材本来の情報量を存分に活用している印象だ。
だからといってX2800Hが大人しいかというと、そうではない。ドッグファイトのシーンでは、飛び交う銃弾や爆発炎上する敵機のような描写の瞬発力が問われる音もキレ良く、アンプとしての底力を感じさせる。確かにスピーカーの数の差はあるし、Auro-3Dには対応しないものの、パワーアンプ自体の地力はX3800Hといい勝負だ。
もう1枚のスターシップ・トゥルーパーズは、PCM 5.1chという現在の水準では物足りない音源だが、旧作豊富なVOD/ネット動画で5.1chはもっとも遭遇率の高いサラウンド音源であり、それをどう料理できるかという器用さが問われるところだ。いろいろ飛び散る映画なだけに、音場の立体感を入念にチェックした。
ここでもX3800Hは優位性を見せる。トップ/ハイトスピーカーの数に起因する立体感の違いもあるが、Auro-3Dによるアップミックスの巧みさがそこに加わる。X2800HでサポートされるNeural:XおよびDolby Surroundも効果的だが、高さ方向の表現とチャンネル間の繋がりではAuro 3Dが一枚上手の印象だ。
オーディオ再生も検証してみた。デノンのAVレシーバーは伝統的に「2ch再生重視」であり、2ch再生の巧拙がマルチチャンネル再生にも反映されるという信念のもと設計されている。アナログ段やデジタル電源基板など要所要所にオーディオグレードのELNA製コンデンサーを使用、汎用品では不可避なバッファ回路を取り除いたデノンカスタム電子ボリュームの採用といった共通項も多いだけに、X3800HとX2800Hのキャラクターの違いがどう現れるのか、興味深い。
感じられたこととして、両モデルとも一聴してS/Nが良い。ピアノの静謐なタッチとサスティーンの細やかさは、瞬発力などトランジェント性能にばかり注意が向いてしまう映画コンテンツでは気付きにくいもの。
歪み・濁りのような不純物が少なく、シンバルクラッシュの余韻も精緻に描く。X3800HとX2800Hの比較でいうと、音場の重心や広域の光沢感にやや差は感じるが、2chアンプとしてのキャラクターはよく似ている。
細部にまでデノンのアイデンティティが刻み込まれた2台のAVレシーバー、AVR-X3800HとAVR-X2800H。イマーシブオーディオへの対応など差はあるものの、どちらも音楽再生用途を担えるほど柔軟で強靭な足腰を備えたパフォーマンスモデルだ。リビングの「音」を司る存在として、八面六臂の活躍をすることだろう。
(協力:ディーアンドエムホールディングス)