PRオーディオ領域外にも展開は広がる
30周年を迎え新たなステージへ、進化を続けるDTSのテクノロジーから目が離せない
ワイヤレスで192kHz/24bit伝送可能な「DTS Play-Fi」
「DTS Play-Fi」にも注目しよう。この技術は2012年に、Wi-Fiを活用して192kHz/24bitまでのリニアPCMやFLAC音源等をロスなく伝送できるワイヤレスオーディオのテクノロジーとして脚光を浴びた。
その特徴は、幅広い柔軟性にある。マルチルーム/マルチゾーン再生ではDTS Play-Fiに対応する最大32台のデバイスが利用でき、ホームシアターモードではリアスピーカーやアップファイアリングスピーカーを活用してイマーシブオーディオを楽しめる。
DTS Play-Fiに対応するデバイス同士であれば、様々なブランドのデバイスやサービスを組み合わせて、自由にシステムプランを組むことも可能。音声コンテンツもまた、幅広いフォーマットを扱える。
海外ではフィリップスが2022年の最新モデルとして、DTS Play-Fiに対応するサウンドバーやワイヤレススピーカー、Android TV搭載の4K有機ELテレビを発売した。塚田氏によると「昨今は多くの家庭にインターネットとつながるスマートテレビが普及したことから、普段はリビングルームで楽しむ音源を、自宅のほかの部屋にもワイヤレスで飛ばして楽しめる便利機能としてDTS Play-Fiが関心を呼んでいる」という。
DTS Play-Fiについても、デモンストレーションを体験した。まずホームシアターモードで映画を観てみると、DTS Play-Fiによるワイヤレスオーディオの高音質が冴え渡る。Wi-Fiは5GHz帯と2.4GHz帯が利用できるデュアルバンド対応なので、宅内で様々なエレクトロニクス機器を利用しながら、音切れやノイズの混入に悩まされることなく再生できる。
スピーカーは気軽に動かせるため、シアター鑑賞などに使っていない時間は、キッチンカウンターに移動させて遅延のないワイヤレス音声を聴くことも可能だ。日中の賑やかな時間帯には、スピーカーを手元近くに置けばテレビの音が明瞭に聴き取れるだろう。
DTS Play-Fiのモバイルアプリも出来映えが秀逸だ。リビングルームに設置したPlay-Fi対応のテレビに、ホームネットワークを経由してアプリを導入したモバイル端末をつなぐと、テレビで視聴しているコンテンツの音声が聴ける。たとえば夜間など大きな音を出せない時間帯は、モバイル端末にヘッドホン・イヤホンを接続して、遅延のないワイヤレスオーディオ再生を楽しむツールとして活用できそうだ。端末は最大4台まで同時に接続できるので、家族揃ってドラマやスポーツを鑑賞する用途にも向いている。
クルマにも強いDTS。安全・快適性を高める「DTS AutoSense」
本誌の読者はDTSについて、ホームシアターを中核とするオーディオブランドのイメージを強く持っているかもしれない。実は現在、DTSのブランドにはインターネットへの常時接続機能を持つコネクテッドカーに関連する様々な先進テクノロジーが充実している。
コネクテッドカーに関連するテクノロジーもまた内容が多岐に渡り、そのひとつが自動車を運転するドライバーや同乗者のために、安全で快適な車内空間を提供する「DTS AutoSense」だ。この技術は、Xperi傘下のFotoNationによる画像認識と独自の機械学習の技術を融合させた「ドライバーモニタリングシステム(DMS)」、ならびに「乗員モニタリングシステム(OMS)」により構成される。
ドライバーの安全運転支援を支援するDMSは既に市場で商用化され普及も進んできており、加えてOMSに関しても、世界で初めての製品化を2021年よりを行っている。dts Japanの市村憲司氏は「DTS AutoSenseは広く車内空間全体を把握してセンシングを行いながら、ドライバーや同乗者が “何をしているか” を速く、正確に検知できるところに強みがある」と話す。
FotoNationが得意とするコンピュータビジョンや機械学習、高精度な動画解析を可能にする手ぶれ補正など、先端技術の組み合わせにより、車内空間の人やモノをリアルタイムに検知できる。Xperiのビジネスモデルは、DTS AutoSenseのソフトウェアをDMS/OMS向けのハードウェアやソリューションを開発するメーカーに提供する格好になる。
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