PR評論家・大橋伸太郎氏がレビュー
弩級セパレートAVアンプ、マランツ「AV10/AMP10」の“完成形”を聴く。「音場の音密度が圧倒的」
今年のオーディオビジュアル新製品の中で、最大級の注目を集める存在が、マランツのAVプリアンプ「AV10」と16ch一体型パワーアンプ「AMP10」であることに異論はないと思う。方や、最新の音声フォーマットに全対応し入力はすべて8KHDMI2.1、方や、増幅にクラスDデジタルICEPowerを採用、過去に先例のない16ch一体型200w/8Ω同時出力を達成。まさに常識破りのスケール雄大なアンプ。性能、機能、音質のすべてで従来のAVサラウンドアンプの概念を変えたのである。
しかし、AV10/AMP10には、もう一つの顔がある。作り手の長年の思いが結晶したヒューマンなプロジェクトであることだ。言い訳無用で世界最高のAVサラウンドアンプを作るのだ、という強い決意と信念が基本設計から部品の選択まで隅々に息づいている。開発の着手から完成まで要した年月5年。これだけ時間をかけたAVサラウンドアンプは寡聞にして聞かない。まさに大河ドラマのようなアンプ。今回は完成なった量産機の音質確認をするべく、マランツの試聴室を訪ねた。
AV10/1AMP10の量産試作を聴いたのは昨年暮れの12月23日だった。SACDのステレオソースから4K UHDBDのイマーシブオーディオまで、サウンドマスターの尾形好宣氏がかねがね音作りの最大のテーマと語っていた「空間表現」。これだけ広々と大きく、深く、澄み切った空間を音で描き出したアンプは過去なかった。その点は深く感銘したものの、私たちがICEPowerのクラスDデジタルによる全16ch同時出力に寄せる期待は欲張りで大きかった。現時点の音の品位はそのままにもう一回り骨太な音に、とリクエストしてその日は辞去したのであった。
それから数ヶ月、量産が開始したタイミングで、マランツで企画開発に携わる高山健一氏から「もういちど聴きにきませんか?」という連絡をいただいた。そうして今回、完成形を聴く機会に恵まれた。
「私の16chのセッティングも前回より上達しました」と自信満々の高山氏と、筆者のとなりにサウンドマスターの尾形氏。
AMP10は、ICEPowerのクラスDデジタルによる16ch構成。尾形氏によれば「いままでマランツがやったことのない百万円クラスのハイエンドのレベルとするにあたり、モジュールを買ってきて組み込むのでは音質やその他の面で追い込み切れないだろう、ICEPowerと二人三脚で白河工場で一から組んでわれわれが理想とする16chパワーアンプを作りたいということで決断しました」という。
しかしAMP10はクラスDのアンプにセレクターが付いているだけでない。16chのバランス、アンバランス入力とそのあとのアンプ前段の3×16、合計48ヶ所にマランツ独自のアンプ技術「HDAM」のアナログ回路が入っている。「最終段のパワーアンプの部分こそクラスDですが、いわばハイブリッドのパワーアンプと考えていただればよいと思います」という。
また、HDAMの回路と回路の間にポップノイズを減らしたりするカップリングコンデンサーが入っている。直接音楽信号が通っていくので、コンデンサーは音のキャラクターを左右するが、従来カップリングコンデンサーにはリードタイプという脚が生えているタイプを使っていたとのこと。今回、一ヶ所だけ面実装という小さくて脚の生えていないタイプのコンデンサーを使わないといけないものが残り、「十種類くらい試しても気に入ったものがなかなか見つからず、最終的に新規の部品を選んで使いました」とのことだ。
しかし、AV10/AMP10には、もう一つの顔がある。作り手の長年の思いが結晶したヒューマンなプロジェクトであることだ。言い訳無用で世界最高のAVサラウンドアンプを作るのだ、という強い決意と信念が基本設計から部品の選択まで隅々に息づいている。開発の着手から完成まで要した年月5年。これだけ時間をかけたAVサラウンドアンプは寡聞にして聞かない。まさに大河ドラマのようなアンプ。今回は完成なった量産機の音質確認をするべく、マランツの試聴室を訪ねた。
■弩級のセパレートAVアンプ「AV10/AMP10」。“完成形”の音を聴く
AV10/1AMP10の量産試作を聴いたのは昨年暮れの12月23日だった。SACDのステレオソースから4K UHDBDのイマーシブオーディオまで、サウンドマスターの尾形好宣氏がかねがね音作りの最大のテーマと語っていた「空間表現」。これだけ広々と大きく、深く、澄み切った空間を音で描き出したアンプは過去なかった。その点は深く感銘したものの、私たちがICEPowerのクラスDデジタルによる全16ch同時出力に寄せる期待は欲張りで大きかった。現時点の音の品位はそのままにもう一回り骨太な音に、とリクエストしてその日は辞去したのであった。
それから数ヶ月、量産が開始したタイミングで、マランツで企画開発に携わる高山健一氏から「もういちど聴きにきませんか?」という連絡をいただいた。そうして今回、完成形を聴く機会に恵まれた。
「私の16chのセッティングも前回より上達しました」と自信満々の高山氏と、筆者のとなりにサウンドマスターの尾形氏。
AMP10は、ICEPowerのクラスDデジタルによる16ch構成。尾形氏によれば「いままでマランツがやったことのない百万円クラスのハイエンドのレベルとするにあたり、モジュールを買ってきて組み込むのでは音質やその他の面で追い込み切れないだろう、ICEPowerと二人三脚で白河工場で一から組んでわれわれが理想とする16chパワーアンプを作りたいということで決断しました」という。
しかしAMP10はクラスDのアンプにセレクターが付いているだけでない。16chのバランス、アンバランス入力とそのあとのアンプ前段の3×16、合計48ヶ所にマランツ独自のアンプ技術「HDAM」のアナログ回路が入っている。「最終段のパワーアンプの部分こそクラスDですが、いわばハイブリッドのパワーアンプと考えていただればよいと思います」という。
また、HDAMの回路と回路の間にポップノイズを減らしたりするカップリングコンデンサーが入っている。直接音楽信号が通っていくので、コンデンサーは音のキャラクターを左右するが、従来カップリングコンデンサーにはリードタイプという脚が生えているタイプを使っていたとのこと。今回、一ヶ所だけ面実装という小さくて脚の生えていないタイプのコンデンサーを使わないといけないものが残り、「十種類くらい試しても気に入ったものがなかなか見つからず、最終的に新規の部品を選んで使いました」とのことだ。