PR「NR1200」ユーザーの秋山真氏が実力をチェック
マランツ「STEREO 70s」自宅導入レビュー。評論家・秋山氏が「傑作アンプだと泣きながら確信した」その魅力とは?
例えば、NR1200の音を端的に表すなら、「シャープな音像とクリーンな音場。解像感が高く、帯域バランスもフラット」となるだろう。語弊を恐れずに言うならば「ピュアオーディオライクなサウンド」である。
それに対して、STEREO 70sはもっと自然体の音だ。「静けさの杜にある透明な泉の真ん中から、滾々と清水が湧き出すような」とでも言おうか。よくあるオーディオ用語よりも、こうした表現の方がしっくり来る。とはいえ、筆者はオーディオ詩人ではないので、ひとつずつ解説していこう。
まずは「静かな杜」。この静けさの正体が、STEREO 70sのプリアンプ部に搭載されたHDAM-SA2であることを私は知っている。以前、HDAM-SA2搭載のCINEMA 50と非搭載のNR1711の比較試聴をした際に、試聴室の空気が静まりかえるほどのS/Nに驚嘆したからだ。
次に「透明な泉」。この透明度の正体は、1kHzで10dB以上も低歪化したという新開発のフルディスクリートパワーアンプ回路だろう。
さらに「滾々と」は、専用カスタムコンデンサーと上位グレードの高品位パーツで構成された大容量パワーサプライの恩恵であり、湧き出す水の「清らかさ」は、MODEL 40nで初採用され、業界をアッと驚かせた高音質設計のHDMI ARC回路の賜物に他ならない。
しかし、これだけならばMODEL 40nだって同じことだ。私がSTEREO 70sに心を鷲掴みにされた本当の理由には他にある。
■「これは傑作アンプだ。泣きながらそう確信した」
以前、オーディオビジュアル評論の大先輩である麻倉怜士氏が、「ピュアオーディオに最適な音と、映像付きのオーディオに最適な音は違う」という発言をされていた。これは、師と仰ぐ偉大な先人、山中敬三氏から伝授された教えだそうで、私もこの考え方に完全同意である。
ここからは筆者の推察なのだが、CINEMAシリーズやMODEL 40nの低重心で迫力のあるサウンドは、100インチ超の大画面映像にも負けない音作りを強く意識した結果ではないだろうか。しかし、物量投入ができないスリムなSTEREO 70sでは、別のアプローチで映像に寄り添わなくてはならない。
そこで重要になってくるのが、音の浸透力だ。MODEL 30やAV 10+AMP 10とは共通項があると書いたのは、まさにこの部分である。歌や台詞に込められた感情やメッセージを、いかに真っ直ぐリスナーへ届けるか。その能力において、MODEL 30とAV 10+AMP 10は傑出しており、それゆえに尾形氏をD級アンプ設計の天才だと思っていたのだが、同じことを実売11万円前後のAB級アンプで実現してしまったことに、私は驚きを隠せない。
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