【特別企画】オーディオ銘機賞2024<銀賞>受賞モデル
Avantgardeの第三世代技術を惜しみなく投入。広く深い空間を再現する中核スピーカー「DUO SD」
ドイツのAvantgarde(アヴァンギャルド)は、1991年の設立当初からホーンシステム一筋のスピーカー専業ブランドである。「DUO SD」は、フラグシップモデル「TRIO G3」の技術を踏襲しながらも、ホーンの美点をさらに引き出した中核モデル。オーディオ銘機賞2024にて<銀賞>を獲得した本機の音を、角田郁雄氏がレポートする。
Avantgardeは、アメリカのクリプシュのホーンスピーカーに魅了され、創業した。そして1993年には「Generation1」を発売。以来、ドイツのハイエンド・ホーンスピーカーとして、世界に名を馳せるほどとなった。
その同社は2022年、音楽の彫刻と言いたくなるほどの壮大な「TRIO G3+SpaceHorn」を披露した。G3、すなわち第3世代モデルの登場だ。そして2023年は、好評を博したXDシリーズの後継機種となるG3シリーズの「DUO GT」「DUO SD」「UNO SD」を登場させた。
この原点となったTRIO G3+SpaceHornを私は、幾度か聴くことができた。そこで深く感動したことは、あたかもコンサートホールの生演奏を聴くかのような、広大な空間を再現し、演奏の臨場感を鮮明にしたことだ。
それは、クラシック音楽で体験する倍音豊かで生々しい空間描写性。瞬く間に身体に到達する響きの音圧。ピアニッシモからフォルテッシモを極める音の反応の良さと解像度の高さ。これらが大きな特徴で、深い音楽のテイストが堪能できた。その音楽再現性を、これら3機種は踏襲し、一般家庭のリビングやオーディオルームでも体験できるサイズとした。
今回は、3機種のうち中核モデルとなるDUO SDを紹介しよう。まさにアヴァンギャルドな美しいホーンが印象的で、上部に口径67cmのスフェリカル・ミッドレンジホーンを配置。その下部に口径20cmのトゥイーターホーンを配置し、その下部には、30cmウーファーユニットを配置した。
ここで、同社のホーンユニットを知る上で、大切な要素の一つを説明しておこう。それは中音域を重視していることだ。その理由は、中音域は人間の聴覚に敏感であるだけではなく、声やほとんどの楽器が存在する帯域であり、音楽鑑賞の70%以上はこの中音域が占めているからだ。
その理想のミッドレンジユニットは、新開発の「XM2」エボリューション・ドライバーだ。振動板は、ケブラーコアを2種の制振コーティング層でサンドイッチした3層構造を採用。直径17cm。極めて高い剛性とクラス最高レベルの自己減衰特性(内部損失)が特徴で、磁気回路にはアルニコ・マグネットとインピーダンス特性18Ωのオメガ・ボイスコイルを採用。何と1Wで107dBという脅威の音圧を達成した。これは超弱音まで再現できる反応の良さと解像度の高さを意味している。
開口角180度のホーンはABS製だが、再生中、手で触れても不要共鳴や共振振動を感じさせない。一般的なコンプレッションドライバーとは異なり、ユニット口径とホーン・スロート(根元)の口径を揃えていることも特徴で、Spheric Low Cut/Air Gateテクノロジーにより、ネットワーク回路を一切使用しない。これは、低歪みで高い音圧が発生できる大きなアドヴァンテージだ。
次にホーントゥイーターを説明しよう。ホーン口径は2cm拡大した20cm。全長も8.5cmから17.6cmに拡張したロングスローだ。新開発の「XT3」エボリューション・スーパートゥイーターを搭載し、振動板は、2.5cmリングラジエーター。独自のデュプレックス・サスペンションを採用し、28kHzまで再生帯域を拡張した。
音の透明感に影響する全高調波歪み率も10dB低減し、0.32%を達成。ホーン口径や長さを拡大したことにより、さらに高い音圧も実現。何と4kHzから20kHzまでは、50度以下のリニアな位相特性を実現している。
ミッドレンジとは、たった1個の新開発のNature Capコンデンサーだけで接続し帯域を区分。これは、電極が一般的な薄膜プラチックではなく、無垢のアルミニウムロール製で、誘電体としてバイオオイル含浸のセルロース・ファイバーを採用。特許のPolarity Plus回路により、音楽信号の極性変化による歪みを排除し、透明でクリーンな伝送を実現した。
これはネットワーク回路というよりも、音の鮮度を失わないシンプルなハイパス・フィルターだ。なお、ホーントゥイーターは正確なタイムアライメントのために、ホーン先端をバッフル面と揃えている。
最後に30cmウーファーを紹介しよう。振動板は、繊維の長い紙素材とカーボンファイバーの複合材で安定性と剛性を高め、エッジにはNBR素材を採用し、リニアな振幅動作を実現。ボイスコイル径を10cmから15.3cmに拡大し、能率とパワーハンドリングも向上させた。フェライト・マグネットは磁束密度1.15テスラと超強力で、振動板の特殊サスペンションとともにリニアな動作を実現した。なお、何とウーファーとトゥイーターはTRIO G3+SpaceHornと同仕様で、キャビネットはバスレフと密閉が選択可能。
試聴では、プリアンプC1X solo、ステレオパワーアンプS1X、SACDプレーヤーK1XのGrandiosoシリーズを使用し、ES-LINKアナログ伝送(電流伝送)した。その音質は、サイズや規模が異なるものの、冒頭のTRIO G3の音質を踏襲し、搭載技術が反映され、まさにコンサートに臨むかのような、透明度を極めた、高い音圧が体験できる。
広く深い空間を描写し、奏者をリアルに再現する解像度の高さと、微細音をクローズアップするところは、音楽的にも、オーディオ的にも実に魅力的だ。音色は、ES-LINKが反映され、実に滑らかで、豊潤な倍音も魅力。雑味を感じさせないクリーンさがある。
なお、オプションで、電流増幅方式のiTRONアンプも搭載可能だ。このように、本機は、どこにも類を見ないホーンスピーカーで、世界的にも、多くの愛好家を魅了することであろう。
(提供:エソテリック)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.190』からの転載です。
第3世代モデルの登場で音楽再現性がさらに高まる
Avantgardeは、アメリカのクリプシュのホーンスピーカーに魅了され、創業した。そして1993年には「Generation1」を発売。以来、ドイツのハイエンド・ホーンスピーカーとして、世界に名を馳せるほどとなった。
その同社は2022年、音楽の彫刻と言いたくなるほどの壮大な「TRIO G3+SpaceHorn」を披露した。G3、すなわち第3世代モデルの登場だ。そして2023年は、好評を博したXDシリーズの後継機種となるG3シリーズの「DUO GT」「DUO SD」「UNO SD」を登場させた。
この原点となったTRIO G3+SpaceHornを私は、幾度か聴くことができた。そこで深く感動したことは、あたかもコンサートホールの生演奏を聴くかのような、広大な空間を再現し、演奏の臨場感を鮮明にしたことだ。
それは、クラシック音楽で体験する倍音豊かで生々しい空間描写性。瞬く間に身体に到達する響きの音圧。ピアニッシモからフォルテッシモを極める音の反応の良さと解像度の高さ。これらが大きな特徴で、深い音楽のテイストが堪能できた。その音楽再現性を、これら3機種は踏襲し、一般家庭のリビングやオーディオルームでも体験できるサイズとした。
ミッドレンジは新開発で反応の良さと解像度の高さを実現
今回は、3機種のうち中核モデルとなるDUO SDを紹介しよう。まさにアヴァンギャルドな美しいホーンが印象的で、上部に口径67cmのスフェリカル・ミッドレンジホーンを配置。その下部に口径20cmのトゥイーターホーンを配置し、その下部には、30cmウーファーユニットを配置した。
ここで、同社のホーンユニットを知る上で、大切な要素の一つを説明しておこう。それは中音域を重視していることだ。その理由は、中音域は人間の聴覚に敏感であるだけではなく、声やほとんどの楽器が存在する帯域であり、音楽鑑賞の70%以上はこの中音域が占めているからだ。
その理想のミッドレンジユニットは、新開発の「XM2」エボリューション・ドライバーだ。振動板は、ケブラーコアを2種の制振コーティング層でサンドイッチした3層構造を採用。直径17cm。極めて高い剛性とクラス最高レベルの自己減衰特性(内部損失)が特徴で、磁気回路にはアルニコ・マグネットとインピーダンス特性18Ωのオメガ・ボイスコイルを採用。何と1Wで107dBという脅威の音圧を達成した。これは超弱音まで再現できる反応の良さと解像度の高さを意味している。
開口角180度のホーンはABS製だが、再生中、手で触れても不要共鳴や共振振動を感じさせない。一般的なコンプレッションドライバーとは異なり、ユニット口径とホーン・スロート(根元)の口径を揃えていることも特徴で、Spheric Low Cut/Air Gateテクノロジーにより、ネットワーク回路を一切使用しない。これは、低歪みで高い音圧が発生できる大きなアドヴァンテージだ。
ホーントゥイーターも歪みを改善し音の透明度をさらに向上
次にホーントゥイーターを説明しよう。ホーン口径は2cm拡大した20cm。全長も8.5cmから17.6cmに拡張したロングスローだ。新開発の「XT3」エボリューション・スーパートゥイーターを搭載し、振動板は、2.5cmリングラジエーター。独自のデュプレックス・サスペンションを採用し、28kHzまで再生帯域を拡張した。
音の透明感に影響する全高調波歪み率も10dB低減し、0.32%を達成。ホーン口径や長さを拡大したことにより、さらに高い音圧も実現。何と4kHzから20kHzまでは、50度以下のリニアな位相特性を実現している。
ミッドレンジとは、たった1個の新開発のNature Capコンデンサーだけで接続し帯域を区分。これは、電極が一般的な薄膜プラチックではなく、無垢のアルミニウムロール製で、誘電体としてバイオオイル含浸のセルロース・ファイバーを採用。特許のPolarity Plus回路により、音楽信号の極性変化による歪みを排除し、透明でクリーンな伝送を実現した。
これはネットワーク回路というよりも、音の鮮度を失わないシンプルなハイパス・フィルターだ。なお、ホーントゥイーターは正確なタイムアライメントのために、ホーン先端をバッフル面と揃えている。
最後に30cmウーファーを紹介しよう。振動板は、繊維の長い紙素材とカーボンファイバーの複合材で安定性と剛性を高め、エッジにはNBR素材を採用し、リニアな振幅動作を実現。ボイスコイル径を10cmから15.3cmに拡大し、能率とパワーハンドリングも向上させた。フェライト・マグネットは磁束密度1.15テスラと超強力で、振動板の特殊サスペンションとともにリニアな動作を実現した。なお、何とウーファーとトゥイーターはTRIO G3+SpaceHornと同仕様で、キャビネットはバスレフと密閉が選択可能。
広く深い空間を描写し、奏者をリアルに再現する
試聴では、プリアンプC1X solo、ステレオパワーアンプS1X、SACDプレーヤーK1XのGrandiosoシリーズを使用し、ES-LINKアナログ伝送(電流伝送)した。その音質は、サイズや規模が異なるものの、冒頭のTRIO G3の音質を踏襲し、搭載技術が反映され、まさにコンサートに臨むかのような、透明度を極めた、高い音圧が体験できる。
広く深い空間を描写し、奏者をリアルに再現する解像度の高さと、微細音をクローズアップするところは、音楽的にも、オーディオ的にも実に魅力的だ。音色は、ES-LINKが反映され、実に滑らかで、豊潤な倍音も魅力。雑味を感じさせないクリーンさがある。
なお、オプションで、電流増幅方式のiTRONアンプも搭載可能だ。このように、本機は、どこにも類を見ないホーンスピーカーで、世界的にも、多くの愛好家を魅了することであろう。
(提供:エソテリック)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.190』からの転載です。