【特別企画】オーディオ銘機賞2024<銀賞>受賞モデル
PIEGA最新スピーカー「Coax Gen2シリーズ」の魅力とは?一挙3機種をレビュー
PIEGA(ピエガ)のマスターラインソースシリーズに次ぐCoaxシリーズが第2世代となった。オーディオ銘機賞2024にて<銀賞>を受賞したブックシェルフモデル「Coax 411」も含め、フロア型「Coax 611」「Coax 811」の3機種の音質をレポートしよう。
PIEGAのCoaxシリーズは、その名の通り、中・高域を担当する同軸型(Coaxial)のリボンユニットを搭載することが最大の特徴で、同社のマスターラインソースシリーズに次ぐ、実質的なフラグシップとなるラインだ。そんなCoaxシリーズは昨年、研究開発部門の新たなトップとしてPIEGAに加わった元BMWカーオーディオ部門に在籍していたロジャー・ケスラー氏の手による全面的な改良を経て、第2世代へと刷新された。ここでは、随所に手が加えられ進化を遂げた新たなCoaxシリーズの魅力に迫ってみたい。
この度実施された改良ポイントは多岐にわたるが、それらは大きく分けて、本シリーズの顔とも言える同軸リボンユニットの改良と、キャビネットの改良とに分かれる。
同軸ユニットにおけるもっとも大きな改良は、振動板であるリボンを裏側から支えるダンプ材のアップデートだ。さまざまな素材を検討した結果、新たにポリプロピレン系樹脂素材で振動板を支えることによって共振の抑制を実現。広い帯域での歪み率の低減をもたらしたという。
加えて、マグネットや振動板を取りつける鉄製の格子状フロントプレートも形状を改良し、従来の3mmから4mmへと厚みを増して削り出し材とすることで、さらなる剛性を確保した。
また、削り出し材となったことで細長いネオジム・マグネットを溝に嵌める構造が可能となり、ダンピング特性に優れる接着剤で固定することによって、フレームの不要振動も減衰。さらに、中央付近の高域ユニットの前側にも磁石を配置可能となり、中域ユニット同様プッシュプル動作を実現し高域ユニットとの繋がりも向上させた。
これらの改善の結果、ウーファーと同軸ユニットとのクロスオーバー周波数を、これまでの600Hzから、最大で450Hzにまで引き下げることに成功したという。
また、押出し成形によるキャビネットも大幅に改良されている。元々本シリーズは、「TIM(テンション・インプルーブメント・モジュール)」構造によって、フレーム材を内側から外側へと押し当てる圧力でキャビネットの共振を減衰させていた。
それがこの度、「TIM2」へと進化し、さらに、押出し成形で造られたキャビネット内部のリムを金具で引っ張る構造を追加。圧力と張力という反する機構を組み合わせるとともに、キャビネット振動をレーザーで解析してそれぞれのテンションを最適化しているという。加えて、そのフレームも各ユニット間に挿入され、Coax 811には4枚、Coax 611には5枚ものフレームを配置してユニット間の干渉も抑えるという徹底ぶりだ。
また、フロントパネルをこれまでの8mm厚から12mm厚へと強化。今回の新世代化に伴って、SEAS社と共同開発のウーファーユニットも最適化が実施され、キャビネット自体の容積もアップするとともに、それに合わせてバスレフポートのチューニングも再設計されたとのことだ。
ちなみに、ロジャー・ケスラー氏は、PIEGAの新たなエントリーモデルとなるACEシリーズに搭載されるエアモーショントゥイーターの設計も手掛けており、まさに新たなPIEGAサウンドの担い手だということが分かる。
それでは、早速新たなCoaxシリーズの魅力に触れてみよう。まずは、ブックシェルフモデルとなるCoax 411からだ。一聴して感じるのは、PIEGAのリボン型ならではのしなやかで温かみのある表現だ。歌声や弦楽器の音色が浮き立つようなほのかな明るさもあり、音楽の充実度が高い。同軸型ユニットとブックシェル型によるバッフル面の小ささの恩恵もあってか、音像の定位感も良好だ。
それから、その定位の良さにも繋がっているであろうボディ剛性の高さにも目を見張るものがある。大音量を入れても低域が破綻することなく、音の濁りを感じさせないのだ。軽量なリボンユニットの特徴である素早いアタック表現と合わさって、瞭然として、なおかつ抜けの良いサウンドが心地よい。
合唱ソースでは、細かい声の震えやヴィブラートが質感高く再現され、湿度感のあるしなやかで重層的なハーモニーが特に美しかった。
続いて、フロアスタンディング型のCoax 611を試聴する。Coax 811と併せたフロアスタンディング型の特徴としては、ウーファーと同一径のドローンコーンを使用したパッシブラジエーター方式を採用することだろう。611では3基、811では2基のパッシブラジエーターを搭載する。
Coax 611は、一転して、しなやかな音色感はそのままに、低域の下支えが増すことによる音楽のスケール感の拡大が顕著である。描き出される空間が大きく広がるのだ。それに併せて倍音領域の質感表現もより訴求力を増してくる。
例えば弦楽器で、弓を弦の上で弾ませながら素早く上下させるスピッカート奏法における、弱音の細かい音や表現がより明快に出てきたりと、リボンならでは反応の良さがさらに際立ってきている印象だ。そして、パイプオルガンが足鍵盤で奏でるボトムエンドの低音も、量感や存在感が増しつつも、やはり揺るぎのない表現で、このキャビネットならではの剛性の高さを実感させてくれる。
フラグシップとなるCoax 811は、シリーズ最大となる22cm径のウーファーとパッシブラジエーターを搭載するが、Coax 411やCoax 611の同軸ユニット「C112+」とは少し形状が異なる「C212+」ユニットを採用している。それもあってか、ウーファーとのクロスオーバーが本機だけ500Hzになっている。今回、ヒアリングテストも経て500Hzに設定されたという。これもロジャー氏ならではのこだわりポイントと言えよう。
そのサウンドは、Coax 811だけに許されたヴォーカル帯域の明瞭さが印象的だ。ウーファーが大型化し量感も増えるかと思いきや、ローエンドは深みを増しながらも、逆に、締まりが高まって自然な存在感を得ていることが特筆される。よって、同軸ユニットの大口径化による音像サイズの拡大と併せて、先述の旋律帯域の明瞭さが引き立っているのである。
スピーディーな反応のヴォーカルやピアノ、スネアドラムなどが、高い実体感と弾け出すような明瞭感で迫るさまは、まさに本機だけの持ち味だろう。
以上のように、新たなCoaxシリーズは、より強力な魅力を備えたシリーズへと進化したことが体感できた。大型の同軸型リボンユニットと「TIM2」による強固かつ麗美なフォルムが生み出す、PIEGAならではの世界観を堪能できる魅力的な新シリーズなのである。
(提供:フューレンコーディネート)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.190』からの転載です。
ロジャー・ケスラー氏の手によりリボンユニットを大幅刷新
PIEGAのCoaxシリーズは、その名の通り、中・高域を担当する同軸型(Coaxial)のリボンユニットを搭載することが最大の特徴で、同社のマスターラインソースシリーズに次ぐ、実質的なフラグシップとなるラインだ。そんなCoaxシリーズは昨年、研究開発部門の新たなトップとしてPIEGAに加わった元BMWカーオーディオ部門に在籍していたロジャー・ケスラー氏の手による全面的な改良を経て、第2世代へと刷新された。ここでは、随所に手が加えられ進化を遂げた新たなCoaxシリーズの魅力に迫ってみたい。
この度実施された改良ポイントは多岐にわたるが、それらは大きく分けて、本シリーズの顔とも言える同軸リボンユニットの改良と、キャビネットの改良とに分かれる。
同軸ユニットにおけるもっとも大きな改良は、振動板であるリボンを裏側から支えるダンプ材のアップデートだ。さまざまな素材を検討した結果、新たにポリプロピレン系樹脂素材で振動板を支えることによって共振の抑制を実現。広い帯域での歪み率の低減をもたらしたという。
加えて、マグネットや振動板を取りつける鉄製の格子状フロントプレートも形状を改良し、従来の3mmから4mmへと厚みを増して削り出し材とすることで、さらなる剛性を確保した。
また、削り出し材となったことで細長いネオジム・マグネットを溝に嵌める構造が可能となり、ダンピング特性に優れる接着剤で固定することによって、フレームの不要振動も減衰。さらに、中央付近の高域ユニットの前側にも磁石を配置可能となり、中域ユニット同様プッシュプル動作を実現し高域ユニットとの繋がりも向上させた。
これらの改善の結果、ウーファーと同軸ユニットとのクロスオーバー周波数を、これまでの600Hzから、最大で450Hzにまで引き下げることに成功したという。
また、押出し成形によるキャビネットも大幅に改良されている。元々本シリーズは、「TIM(テンション・インプルーブメント・モジュール)」構造によって、フレーム材を内側から外側へと押し当てる圧力でキャビネットの共振を減衰させていた。
それがこの度、「TIM2」へと進化し、さらに、押出し成形で造られたキャビネット内部のリムを金具で引っ張る構造を追加。圧力と張力という反する機構を組み合わせるとともに、キャビネット振動をレーザーで解析してそれぞれのテンションを最適化しているという。加えて、そのフレームも各ユニット間に挿入され、Coax 811には4枚、Coax 611には5枚ものフレームを配置してユニット間の干渉も抑えるという徹底ぶりだ。
また、フロントパネルをこれまでの8mm厚から12mm厚へと強化。今回の新世代化に伴って、SEAS社と共同開発のウーファーユニットも最適化が実施され、キャビネット自体の容積もアップするとともに、それに合わせてバスレフポートのチューニングも再設計されたとのことだ。
ちなみに、ロジャー・ケスラー氏は、PIEGAの新たなエントリーモデルとなるACEシリーズに搭載されるエアモーショントゥイーターの設計も手掛けており、まさに新たなPIEGAサウンドの担い手だということが分かる。
Coax 411:声や弦楽器の音色がほのかに明るく、音楽の充実度が高い
それでは、早速新たなCoaxシリーズの魅力に触れてみよう。まずは、ブックシェルフモデルとなるCoax 411からだ。一聴して感じるのは、PIEGAのリボン型ならではのしなやかで温かみのある表現だ。歌声や弦楽器の音色が浮き立つようなほのかな明るさもあり、音楽の充実度が高い。同軸型ユニットとブックシェル型によるバッフル面の小ささの恩恵もあってか、音像の定位感も良好だ。
それから、その定位の良さにも繋がっているであろうボディ剛性の高さにも目を見張るものがある。大音量を入れても低域が破綻することなく、音の濁りを感じさせないのだ。軽量なリボンユニットの特徴である素早いアタック表現と合わさって、瞭然として、なおかつ抜けの良いサウンドが心地よい。
合唱ソースでは、細かい声の震えやヴィブラートが質感高く再現され、湿度感のあるしなやかで重層的なハーモニーが特に美しかった。
Coax 611:オルガンのボトムエンドも揺るぎない表現
続いて、フロアスタンディング型のCoax 611を試聴する。Coax 811と併せたフロアスタンディング型の特徴としては、ウーファーと同一径のドローンコーンを使用したパッシブラジエーター方式を採用することだろう。611では3基、811では2基のパッシブラジエーターを搭載する。
Coax 611は、一転して、しなやかな音色感はそのままに、低域の下支えが増すことによる音楽のスケール感の拡大が顕著である。描き出される空間が大きく広がるのだ。それに併せて倍音領域の質感表現もより訴求力を増してくる。
例えば弦楽器で、弓を弦の上で弾ませながら素早く上下させるスピッカート奏法における、弱音の細かい音や表現がより明快に出てきたりと、リボンならでは反応の良さがさらに際立ってきている印象だ。そして、パイプオルガンが足鍵盤で奏でるボトムエンドの低音も、量感や存在感が増しつつも、やはり揺るぎのない表現で、このキャビネットならではの剛性の高さを実感させてくれる。
Coax 811:高い実体感と弾け出すような明瞭感
フラグシップとなるCoax 811は、シリーズ最大となる22cm径のウーファーとパッシブラジエーターを搭載するが、Coax 411やCoax 611の同軸ユニット「C112+」とは少し形状が異なる「C212+」ユニットを採用している。それもあってか、ウーファーとのクロスオーバーが本機だけ500Hzになっている。今回、ヒアリングテストも経て500Hzに設定されたという。これもロジャー氏ならではのこだわりポイントと言えよう。
そのサウンドは、Coax 811だけに許されたヴォーカル帯域の明瞭さが印象的だ。ウーファーが大型化し量感も増えるかと思いきや、ローエンドは深みを増しながらも、逆に、締まりが高まって自然な存在感を得ていることが特筆される。よって、同軸ユニットの大口径化による音像サイズの拡大と併せて、先述の旋律帯域の明瞭さが引き立っているのである。
スピーディーな反応のヴォーカルやピアノ、スネアドラムなどが、高い実体感と弾け出すような明瞭感で迫るさまは、まさに本機だけの持ち味だろう。
以上のように、新たなCoaxシリーズは、より強力な魅力を備えたシリーズへと進化したことが体感できた。大型の同軸型リボンユニットと「TIM2」による強固かつ麗美なフォルムが生み出す、PIEGAならではの世界観を堪能できる魅力的な新シリーズなのである。
(提供:フューレンコーディネート)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.190』からの転載です。