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PR「SA30」「CDS50」で英国スピーカーをドライブ

溢れ出る音楽性。ARCAMコンポーネントでブリティッシュオーディオを愉しみ尽くす

公開日 2023/12/21 06:30 山之内 正
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■ARCAMで奏でる英国製スピーカー。演奏の魅力を引き出す音楽性の高さに着目


今回の試聴はイギリスのブランドにこだわるというテーマを設定した。世界有数のスピーカー大国であり、数多くの名門ブランドがひしめいているが、今回はそのなかからKEFの「LS50Meta」、ハーベスの「HL-P3ESR XD」、B&W「703 S3」の3モデルに白羽の矢を立て、SA30とCDS50の組み合わせでイギリスの作品やアーティストを取り上げる。

英国ブランドスピーカー3本、そしてビートルズ楽曲に纏わる逸話を有するJBLのモニタースピーカーを含めた4本を試聴

イギリスと言えばビートルズを忘れるわけにはいかないので複数の音源を候補に加えた。そのビートルズ米国ツアーの際、プロデューサーのジョージ・マーティンがJBLのスタジオモニターの音に衝撃を受け、後日アビーロードに導入したというエピソードが伝えられている。そこで、米国のブランドではあるが、JBLのスタジオモニターを代表して「4349」も試聴機種に加えることにした。合計4モデルの個性豊かなスピーカーをARCAMのコンポーネントがどう鳴らし分けるのか、興味は尽きない。

今回用意した試聴音源は、アーティスト・楽曲すべてARCAMと同様イギリスにルーツを持つセレクションとした

■ARCAM × ハーベス「HL-P3ESR XD」
ハーベスはARCAMとほぼ同年代に創業し、BBCモニターの流れを継承しつつ独自の製品群を投入して根強いファンを獲得した。「HL-P3」は「LS3/5A」の系譜に連なる小型スピーカーの傑作で、今回はその最新エディションとなるHL-P3ESR XDを試聴した。

HL-P3ESR XDをARCAMで鳴らすと、その良さが際立って感じられた曲の一つがビートルズの「ディア・プルーデンス」(USBメモリー・BOX)。ギターの音形を鮮明に描き出しながら、重めのベースラインが予想外に深い音でうねり、両者のコントラストが鮮やかだ。サウンドは分厚いのにギター、ドラムのリズムからコーラスの広がりまで各パートが鮮明に聴き取れることにも感心させられた。レイチェル・ポッジャーが弾くヴァイオリンの澄んだ音色もそうだが、このスピーカーの魅力をあらためて気付かせてくれる。

2009年発売の「The Beatles Stereo USB」。mp3音源とロスレスのFLAC音源を収録している

旋律とリズムの主役を占める楽器や声を高密度な音で再現するARCAM製品共通の美点といえるだろう。その長所はプリメインアンプのSA30だけでなく、ディスクプレーヤーのCDS50にも確実に備わっている。

■ARCAM × KEF「LS50 Meta」
KEFは英国のスピーカーの歴史を語るときに外すことのできない重要なブランドの一つだ。一貫した設計思想は現代にも受け継がれ、特に同軸型ユニット「Uni-Q」の進化は著しい。近年は高域の純度を高めるMAT技術を用いたMetaでさらなる進化を遂げ、小型スピーカーの定番ともいえるLS50の音に磨きがかかっている。

エルビス・コステロは《ノース》のなかの「スティル」が予想通りにハマった。柔らかいピアノの和音に乗って歌うヴォーカルは良い意味で生っぽく、しっとり歌う美しいメロディが耳に心地よい。チェロをはじめストリングスの潤いある音色も聴き逃がせない。このスピーカーは小編成の古楽器オーケストラとも相性が良く、ガーディナーのモーツァルトは弦楽器群の粒立ち感が絶品だ。

「CDS50」背面部。USBポートを介してHDDやフラッシュメモリ内の楽曲再生もサポートする

声や旋律に付帯音を加えず、アーティストの個性をありのままに引き出すのはARCAMのコンポーネントに共通するアドバンテージの一つで、CDS50とSA30もその長所を確実に引き継いでいることがわかる。

■ARCAM × B&W「703 S3」
現代の英国スピーカーを代表するブランドの筆頭というべきB&Wも、KEFに次ぐ歴史の長さを誇り、モニタースピーカーと家庭用スピーカー両方の分野で名声を獲得して今日に至る。フラッグシップの800シリーズから多くの技術を受け継ぐことで大幅な進化を果たした700シリーズのなかで、バランスの良さが際立つ703 S3を今回は試聴した。

ARCAMと組み合わせたB&W「703 S3」からは、「これぞイギリス音楽!」と思わず声を上げたくなる美しい響きを引き出す結果に

このスピーカーでは、ジョン・ウィルソン指揮シンフォニア・オブ・ロンドンによるエルガー「序奏とアレグロ」から、これぞイギリス音楽と思わず声を上げたくなる美しい響きを引き出すことができた。弦楽器だけの演奏なのに、音色の階調が豊かでハーモニーに複雑な色合いが生まれる。フロア型ならではの量感豊かな低弦に負けることなく、ヴァイオリンは繊細かつ表情豊かによく歌う。立体的な音場は隅々まで澄み切っていて、SACDならではのふくよかな空気感もリアルに引き出すことができた。

音場空間を立体的に再現するためには録音に含まれる空間情報を忠実に再現することが不可欠だ。ARCAMのコンポーネントは回路構成が複雑すぎない良さがあり、それが立体的な空間描写を可能にしているのだろう。

■ARCAM × JBL「4349」
今回唯一アメリカのブランドとしてJBLを選んだ理由は前述の通り。スタジオモニターの輝かしい歴史を現代に蘇らせる4349の威容は、イギリスのスピーカー群とは一味違う風格があり、1.5インチのコンプレッションドライバー+HDIホーンと30cmウーファーの組み合わせはホームオーディオでも別格の存在感を発揮する。


ARCAMで「4349」を鳴らすと、現代のJBLサウンドの魅力を聴き取ることができた
ジョージ・マーティンが受けた衝撃を想像しながら聴いたビートルズの音源は、各楽器のセパレーションの良さが際立ち、アナログの手法で凝りに凝って取り組んだサウンド設計の秘密をすべて解き明かしてくれる。ディア・プルーデンスのベースは太めだが、これこそが意図したサウンドと思わせる説得力がある。前にぐいぐいと出てくるヴォーカルとギターも圧巻。今回聴いた音源のなかではビートルズがベストだが、ポッジャーのヴァイオリンが余韻に溶け込む雰囲気も臨場感豊かに再現した。少し意外な結果だが、そこに現代のJBLの魅力を聴き取ることができる。

組み合わせるスピーカーの個性を存分に引き出すためには、アンプのスピーカー駆動力が問われる。SA30はサイズから想像する以上に瞬発力に余裕があり、ベースを中心とする低音楽器の音色に緩みがないことを確認することができた。



SA30とCDS50の組み合わせで音楽を聴いていると、音のディテールや音質傾向を意識する前に、音楽そのものが脳と身体を心地よく刺激し、いつのまにか演奏の魅力に浸っていることに気付く。オーディオ機器の試聴なのに、いつもと違う体験ができた気がする。

今回はイギリスの音楽、アーティストに焦点を合わせて聴いたこともあり、いつもの試聴に比べて演奏の中身に注意が向いたのかもしれない。スピーカーごとの特性や音調の違いを確認することももちろん意識していたのだが、気が付くとエルガーの澄んだ響きやジョン・レノンの他の誰とも違う声の魅力に引き込まれている。音よりも音楽がまず聴こえてくるというのは、実はとても素晴らしいことだと思う。むしろ、それこそがオーディオ機器が目指すべきゴールの一つと言ってもいいのではないか。

(提供:ハーマンインターナショナル)

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