PRブランドの新たな中核モデルとして要注目
ゼンハイザー「ACCENTUM Plus Wireless」の音質は“価格以上”。ノイキャンも優秀でバランス良好
実際にいろいろな楽曲を聴くと、新鮮ともいうべき発見が多かった。筆者がリファレンスとしている楽曲の一つ、ダイアナ・クラールの「California Dreamin'」。長年聴き慣れた楽曲だが、ノイズキャンセリング機能がオンの状態でもホワイトノイズのような副作用をまったく感じず、非常に静かな室内でも微かに聞こえる環境騒音を低減して高S/Nなリスニング環境が整う。これにより、冒頭の無伴奏の歌い出しは空間の透明感が秀逸。ハスキーボイスもどこか艶やかで魅力的に響く。
ノイズキャンセリング機能は単に外界ノイズの低減に陥らず、サウンド体験の向上にも寄与する完成度の高さが、ゼンハイザーの良心、そして本機の魅力といって良いだろう。静けさを楽しむことができ、静けさの中で奏でられる繊細な表現がより豊かに感じられるのも格別。シルキーさが際立つ上質な体験ができた。
次に非ハイレゾの配信音源も確認。最近筆者もヘビロテしているLE SSERAFIMの「Perfect Night」は流麗なメロディーが印象的な楽曲だが、実は多彩な重低音成分を含み、再生機器の質で聞こえ方や心象も大きく変わり、テストに重用している。
冒頭のバスドラム的な成分は、程よいアタックでその後に続く音色の変化も如実に感じられて立体的。ちなみに一般的なヘッドホンやイヤホンでは、アタックが強く耳障りで質感もなめされ、「ボソッ・ボソッ」と平面的かつ単調に聞こえることが多い。曲が進行して35秒あたりから第2波の重低音成分が到来。ベースのようで持続的な成分だが、本機では非常に低い音域ながら音程の違いが明瞭でグルーブ感の高い表現に繋がっている。
φ37mmのドライバーはサイズとしては特に大口径ではないが、HD 450BTの37mmドライバーをブラッシュアップしているとのことで、その違いもあるかもしれない。低音の質を重視するユーザーにもお勧めしたい。
そのほか操作は、ACCENTUM Wirelessが4ボタンなのに対し、本機はタッチ操作が可能。しかも、上下スワイプによる音量調整、前後スワイプによる曲スキップが可能と、機能面も充実している。筆者の場合、普段はボタン操作が面倒でプレーヤー側に頼りがちなのだが、本機なら直感的に音量調整やスキップ操作が行えるので、常用できそうに感じた。音量調整は操作に対して動作が若干ながら遅れることがあるなど、やや詰めの甘い部分も感じたが、アプリ経由でファームウェアアップデートも可能なので、将来の改善に期待したい。ほか、実用上問題はないものの、アプリの日本語表現はもう一段の洗練度が欲しく感じた。逆にいえば、他に大きな不満点はないともいえる。
ノイズキャンセリングを含め絶対的な音質は非常に優秀で、コストパフォーマンスの面でも納得できる水準であることが確認できた。この点、ゼンハイザーが蓄積してきたアコースティック技術のノウハウや、フラグシップMOMENTUMシリーズの資産が上手く活用されて、本機の価値を「価格以上」に高めていると考えられる。
また操作の面ではACCENTUM Wirelessよりも明らかにワングレード上で、MOMENTUM 4 Wirelessに近い仕様が使い勝手を高めている。
本機は、価格面でMOMENTUM 4 WirelessとACCENTUM Wirelessの間を埋め、ラインナップとしてユーザーの選択肢を広げてくれるが、それ以上に、小型軽量でサウンド性能や機能も充実し、バランスの良さが光る1台。ゼンハイザーのワイヤレスヘッドホンの中核として注目して欲しい好モデルだ。
(企画協力:Sonova Consumer Hearing Japan)