PRqdcとFitEar、2大ブランドのコラボレーション
qdc「SUPERIOR EX」はここが違う!ブランド間コラボで洗練された“もう一つの真のエントリー”を試聴
チューニングのコンセプトは、「高域にピークがあると音量を上げた際にそのピークから天井にぶつかり始める形になり、バランスや音色の破綻が起きやすいので、それを防ぐため3 - 7kHzあたりの高域ピークを抑制」とのこと。「音楽のダイナミクスの再現のためには十分な再生音量の確保も必要」というところを大切にする、FitEarらしいチューニングだ。
だがその裏には、「変える部分以外ではSUPERIOR元々の持ち味を活かす」というコンセプトも見えてくる。つまりqdcがSUPERIORのテーマとした「優れたレスポンスとサブベース再生」はEXにも引き継がれているわけだ。
そのチューニングは、主にはアコースティックフィルター周りの工夫によって実施。加えて筐体材質をプラスチックからアルミへ、ケーブル導体をOFCから銀メッキOFCへという上位モデル的な仕様変更も、チューニング意図を補強するために採用されている。それぞれ「共振を抑制してディテールと低音域の余韻を際立たせる」「ダイナミックレンジと深いサブベース再生の強化」が狙いとのことだ。
ちなみに“EX”というモデル名には、「EXECUTIVE」「EXTRA」「EXPERIENCE」という3つの意味が込められているが、このうち「EXECUTIVE(エグゼクティブ)」もホテルの部屋のグレードにちなんだものだとか。いつもより少し良い客室から、もう一段豪華な“エグゼクティブルーム”へグレードアップするように、SUPERIORのサウンドをもう一歩押し進めた、そんなイメージだろうか。
■激しさを抑えて、躍動感がむしろ際立つ。洗練されたサウンド
では試聴インプレッションをお伝えしていこう。Astell&Kern「KANN ULTRA」でのシングルエンド駆動にて、チューニング意図に沿い、筆者の普段より大きめの音量で聴いてみた。
であるが小さめ音量での試聴も実施し、その場合もSUPERIOR EXの魅力を十分体感できたことは最初にお伝えしておきたい。「大音量再生時のみ整う」ではなく、「大音量再生時にも破綻しない」のが本機のチューニングだ。ふだん控えめ音量での再生を好む方もご安心を。
閑話休題。もとのSUPERIORの持ち味を「ダイナミック型らしい“暴れ”もあえて活かした躍動感」と表すなら、SUPERIOR EXのそれは「ダイナミック型らしさを活かしつつの洗練」か。若い武術家ほど荒削りではないが老師というほど枯れてもいない、壮年期の武術家のような絶妙さを感じられる。
ザシュ!バシッ!と炸裂するシンバルやスネアの“ザ”や“バ”の濁点成分に注目すると、SUPERIOR EXの濁点の出し方は訓練されたシンガーや声優の発声のように丁寧だ。鋭さや濁りの制御が巧みで、耳に刺激的すぎない。
低域側ではベースやドラムスのボリュームや重心の違いがポイントだ。中域側の膨らみが控えられ相対的に超低域の存在感が増すことで、重心がより沈み込んでいる。ここはシェル材の変更が効いていそうだ。
シェル材の好影響としてはS/N感の向上もそうだろう。響きの見えやすさ、静寂感や緊張感の高まりもSUPERIOR EXの持ち味となる。
それらの持ち味は具体的にはどう発揮されるのか。星街すいせいさん「ビビデバ」では、音色の落ち着きとS/N感の高まりが特に活躍。サウンドの背景の黒が深まり、シンデレラをモチーフとした楽曲らしい夜の雰囲気がより強まる。
この曲のやんちゃな弾けっぷり自体の表現は無印SUPERIORの得意分野。対してSUPERIOR EXは、背景となる夜の黒を深め、コントラストを強めることでやんちゃさも際立たせる形となる。
ジュリアン・ラージさん「Double Southpaw」のようなアコースティック楽曲では、指先が生み出す音色の変化、息遣いや衣擦れなど演奏者の気配、ルームアンビエンスの響き、そういった細かな音を生き生きと引き出すための大音量再生が特に効果的だ。その際にも音色に余計な歪みや響きが付加されることなく背景の落ち着きも保たれるのは、EXチューニングの狙い通りというところだろう。
最後に、SUPERIOR EXの筆者一推しポイントは女性ボーカルの感触。子音や息成分の鋭さやキツさが出にくくなり、そこが目立たなくなることで声の重心が下がり、肉感が増す。田村ゆかりさん「雨のパンセ」の歌声をまさに雨模様な湿度感や重みで堪能できて大満足だ。
なお、同時発売の「SUPERIOR EX Cable 4.4」を使用してのバランス駆動では、EXチューニングの特徴がより引き出される印象。空間の余白が広がり、響きが見えやすくなり、背景のS/N感も際立つなどの向上を得られる。
二大ブランドの個性のせめぎ合いではなく、融合と整合性に唸らされるサウンドだ。エントリークラスSUPERIORのその先を体感したいqdcファンにも、サブベースを主張するダイナミック型フルレンジというFitEarラインナップにはない個性を体感してみたいFitEarファンにも、「だったらこれ!」と迷わずおすすめできる。もちろん、シンプルに良いイヤホンを探しているあなたにもだ。
(協力:アユート)