”セパレートアンプ”のような抜群の駆動力を実現!
オーディオファイル待望の物量投入型プリメインアンプ!デノン「PMA-3000NE」をクオリティチェック
エントリーからハイクラスまで、それぞれのシリーズで根強い人気を誇るデノン。その中でも、昨年彗星の如く登場したアナログプレーヤーDP-3000NEは、すでに定番プレーヤーの地位を確立しており、その“3000”を冠したオーディオファイル待望のプリメインアンプが登場した。
新世代のUHC-MOSシングルプッシュプル増幅回路や最新のアンプ設計技術を融合し、今後ハイクラスの代表となり得る珠玉作を紹介しよう。
国産総合オーディオメーカーのデノンから、プリメインアンプのハイクラスに位置する「PMA-3000NE」が登場した。同社アンプ群はスタンダードモデルの「Denon Home Amp」や「PMA-600NE」などコンセプトと価格帯の異なる合計8モデルをラインナップするが、今回強力なモデルが加わった形となる。
僕にとってデノンの上位クラスのアンプといえば、2020年に発売された110周年モデル「PMA-A110」の存在が忘れられない。スピーカーの駆動力と制動力に長け、艶やかな質感の女性ヴォーカルまで悠々と表現する完成度の高いモデルだった。
そんな理由から、その上位にあたるPMA-3000NEには大いに期待が高まる中、本誌試聴室で実機と対面した。シャーシ高182mm、質量24.6kgもある威風堂々としたフルサイズの筐体。オーディオマインドをくすぐられる、物量投入型のプリメインアンプだということはすぐに分かった。フロントパネル中央に極太のボリュームノブ、表示部とインプットセレクター、バス/トレブル/左右バランスのノブが配置される。
まず注目したいのは、デノンアンプの音の良さを根本から支えてきたパワーアンプ回路だ。同社のアンプは伝統的に大きな出力を少ない半導体素子で稼ぎ出すという、技術的に相反する要素にチャレンジしながら音質を高めてきた経緯がある。
回路をシンプルにすることで小レベルの音が欠落しづらくなるため、基本的な音質を左右する回答の1つとして僕は高く評価している(もちろん他の思想の高音質化技術もある)。
また、PMA-A110でさえ差動2段アンプとしていたものを、究極のシンプル化を求めた結果、最新世代の「Advanced UHC-MOSシングルプッシュプル増幅回路」による、差動1段回路を採用した。
次に注目したいのはプリアンプ部だ。可変ゲイン型を採用したことにより、一般的な音量下ではプリアンプではなくパワーアンプのみで増幅させてノイズレベルを改善している。さらに、A110のプリ部は2層基板+片面による複数基板構成だったが、4層基板を採用し、基板単体でシンプルな信号経路を実現している。
そしてオーディオ回路にも注目したい。PCMのデジタル入力された信号を、1.536MHz/32bitにアップサンプリングさせる高精度なアナログ波形再生技術「Ultra AL32 Processing」を搭載する。
さらにDACチップはESS社「ES9018K2M」を左右チャンネルに二基ずつ用いる「Quad-DAC構成」に加え、PCM 44.1kHz系/48kHz系/DSDという3つのクロックまで搭載する。そしてなんといっても、サウンドマスターの山内慎一氏による徹底したサウンドチューニングがポイントとなっている。
同一グループであるマランツのプリメインアンプは、ネットワークソリューションのHEOSを搭載したモデルが増えている一方で、デノンは品質を徹底的に高めたDAC回路部を搭載していることが興味深い。そんな中、操作性や音質など自分好みのトランスポートと組み合わせてのデジタル再生に対応してきたことは見逃せない。
それでは実際にそのサウンドを体験してみよう。試聴室リファレンスのB&W「802D4」に、まずはアキュフェーズのSACDプレーヤー「DP-770」を用いて、ソースダイレクトモードで、久石譲『A Symphonic Celebration』(UMCK-1731)を聴いた。
音が出た瞬間に音に力を感じる「こんなにもスピーカーを駆動するアンプなのか!」というのが第一印象。ブラインドで聴かされたら、多くの方が「セパレートアンプが接続されている」と思うだろう。空間表現が抜群に良い。左右の楽器の配置に加え、前後のレイヤー感の表現も素晴らしい。特定の楽器がオーケストラの左右のどの位置で、前から何段目にあるのかさえ聴き取れる。
ハイレゾファイルは、DELAのミュージックライブラリーN1Aをネットワークトランスポートとして、USBケーブルでPMA-3000NEと接続。同機のDAC部を活かす形でノラ・ジョーンズ/ロバート・グラスパーの『Let It Ride』を聴いた。
中低音域の土台がしっかりとした音で、全帯域で音楽的な速度が統一されている。驚くべきは伴奏するロバート・グラスパーのピアノのリアリティ。本当に微妙なタッチのニュアンスをしっかりと表現しつつ、立体的な骨格を両立している。そしてノラ・ジョーンズの音像は等身大の表現で定位する。
最後はアナログ再生。MCカートリッジにフェーズメーションPP-2000を使ったが、PMA-3000NEのフォノイコライザーの音が予想以上に良質だ。ソニークラシカルから発売のハンス・ジマー『The Classics』(88985322811)は、オーディオショーでもよく再生する定番曲だが、一聴して分解能が高く、抑揚への追従力も良く、楽器のディテールがしっかりと前へ飛び出してくる。
PMA-3000NEは、シンプル化を徹底した信号回路による実にクレバーな設計により、音のリアリティが高く、セパレートアンプのような抜群の駆動力だった。つまるところ、山内氏が掲げるサウンドイメージ「Vivid & Spacious」を見事に具現化しており、この価格帯のリファレンスたる存在のアンプ群の中でも、特に目を引く完成度を実現したと言って良いだろう。
(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.194』からの転載です
新世代のUHC-MOSシングルプッシュプル増幅回路や最新のアンプ設計技術を融合し、今後ハイクラスの代表となり得る珠玉作を紹介しよう。
オーディオマインドをくすぐる物量投入型のプリメインアンプ
国産総合オーディオメーカーのデノンから、プリメインアンプのハイクラスに位置する「PMA-3000NE」が登場した。同社アンプ群はスタンダードモデルの「Denon Home Amp」や「PMA-600NE」などコンセプトと価格帯の異なる合計8モデルをラインナップするが、今回強力なモデルが加わった形となる。
僕にとってデノンの上位クラスのアンプといえば、2020年に発売された110周年モデル「PMA-A110」の存在が忘れられない。スピーカーの駆動力と制動力に長け、艶やかな質感の女性ヴォーカルまで悠々と表現する完成度の高いモデルだった。
そんな理由から、その上位にあたるPMA-3000NEには大いに期待が高まる中、本誌試聴室で実機と対面した。シャーシ高182mm、質量24.6kgもある威風堂々としたフルサイズの筐体。オーディオマインドをくすぐられる、物量投入型のプリメインアンプだということはすぐに分かった。フロントパネル中央に極太のボリュームノブ、表示部とインプットセレクター、バス/トレブル/左右バランスのノブが配置される。
まず注目したいのは、デノンアンプの音の良さを根本から支えてきたパワーアンプ回路だ。同社のアンプは伝統的に大きな出力を少ない半導体素子で稼ぎ出すという、技術的に相反する要素にチャレンジしながら音質を高めてきた経緯がある。
回路をシンプルにすることで小レベルの音が欠落しづらくなるため、基本的な音質を左右する回答の1つとして僕は高く評価している(もちろん他の思想の高音質化技術もある)。
また、PMA-A110でさえ差動2段アンプとしていたものを、究極のシンプル化を求めた結果、最新世代の「Advanced UHC-MOSシングルプッシュプル増幅回路」による、差動1段回路を採用した。
次に注目したいのはプリアンプ部だ。可変ゲイン型を採用したことにより、一般的な音量下ではプリアンプではなくパワーアンプのみで増幅させてノイズレベルを改善している。さらに、A110のプリ部は2層基板+片面による複数基板構成だったが、4層基板を採用し、基板単体でシンプルな信号経路を実現している。
そしてオーディオ回路にも注目したい。PCMのデジタル入力された信号を、1.536MHz/32bitにアップサンプリングさせる高精度なアナログ波形再生技術「Ultra AL32 Processing」を搭載する。
さらにDACチップはESS社「ES9018K2M」を左右チャンネルに二基ずつ用いる「Quad-DAC構成」に加え、PCM 44.1kHz系/48kHz系/DSDという3つのクロックまで搭載する。そしてなんといっても、サウンドマスターの山内慎一氏による徹底したサウンドチューニングがポイントとなっている。
同一グループであるマランツのプリメインアンプは、ネットワークソリューションのHEOSを搭載したモデルが増えている一方で、デノンは品質を徹底的に高めたDAC回路部を搭載していることが興味深い。そんな中、操作性や音質など自分好みのトランスポートと組み合わせてのデジタル再生に対応してきたことは見逃せない。
この価格帯のアンプ群で特に目を引く完成度を実現
それでは実際にそのサウンドを体験してみよう。試聴室リファレンスのB&W「802D4」に、まずはアキュフェーズのSACDプレーヤー「DP-770」を用いて、ソースダイレクトモードで、久石譲『A Symphonic Celebration』(UMCK-1731)を聴いた。
音が出た瞬間に音に力を感じる「こんなにもスピーカーを駆動するアンプなのか!」というのが第一印象。ブラインドで聴かされたら、多くの方が「セパレートアンプが接続されている」と思うだろう。空間表現が抜群に良い。左右の楽器の配置に加え、前後のレイヤー感の表現も素晴らしい。特定の楽器がオーケストラの左右のどの位置で、前から何段目にあるのかさえ聴き取れる。
ハイレゾファイルは、DELAのミュージックライブラリーN1Aをネットワークトランスポートとして、USBケーブルでPMA-3000NEと接続。同機のDAC部を活かす形でノラ・ジョーンズ/ロバート・グラスパーの『Let It Ride』を聴いた。
中低音域の土台がしっかりとした音で、全帯域で音楽的な速度が統一されている。驚くべきは伴奏するロバート・グラスパーのピアノのリアリティ。本当に微妙なタッチのニュアンスをしっかりと表現しつつ、立体的な骨格を両立している。そしてノラ・ジョーンズの音像は等身大の表現で定位する。
最後はアナログ再生。MCカートリッジにフェーズメーションPP-2000を使ったが、PMA-3000NEのフォノイコライザーの音が予想以上に良質だ。ソニークラシカルから発売のハンス・ジマー『The Classics』(88985322811)は、オーディオショーでもよく再生する定番曲だが、一聴して分解能が高く、抑揚への追従力も良く、楽器のディテールがしっかりと前へ飛び出してくる。
PMA-3000NEは、シンプル化を徹底した信号回路による実にクレバーな設計により、音のリアリティが高く、セパレートアンプのような抜群の駆動力だった。つまるところ、山内氏が掲げるサウンドイメージ「Vivid & Spacious」を見事に具現化しており、この価格帯のリファレンスたる存在のアンプ群の中でも、特に目を引く完成度を実現したと言って良いだろう。
(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.194』からの転載です