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”セパレートアンプ”のような抜群の駆動力を実現!

オーディオファイル待望の物量投入型プリメインアンプ!デノン「PMA-3000NE」をクオリティチェック

公開日 2024/11/19 06:30 土方久明
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エントリーからハイクラスまで、それぞれのシリーズで根強い人気を誇るデノン。その中でも、昨年彗星の如く登場したアナログプレーヤーDP-3000NEは、すでに定番プレーヤーの地位を確立しており、その“3000”を冠したオーディオファイル待望のプリメインアンプが登場した。

新世代のUHC-MOSシングルプッシュプル増幅回路や最新のアンプ設計技術を融合し、今後ハイクラスの代表となり得る珠玉作を紹介しよう。


DENON プリメインアンプ「PMA-3000NE」528,000円(税込)

オーディオマインドをくすぐる物量投入型のプリメインアンプ



国産総合オーディオメーカーのデノンから、プリメインアンプのハイクラスに位置する「PMA-3000NE」が登場した。同社アンプ群はスタンダードモデルの「Denon Home Amp」や「PMA-600NE」などコンセプトと価格帯の異なる合計8モデルをラインナップするが、今回強力なモデルが加わった形となる。

僕にとってデノンの上位クラスのアンプといえば、2020年に発売された110周年モデル「PMA-A110」の存在が忘れられない。スピーカーの駆動力と制動力に長け、艶やかな質感の女性ヴォーカルまで悠々と表現する完成度の高いモデルだった。

そんな理由から、その上位にあたるPMA-3000NEには大いに期待が高まる中、本誌試聴室で実機と対面した。シャーシ高182mm、質量24.6kgもある威風堂々としたフルサイズの筐体。オーディオマインドをくすぐられる、物量投入型のプリメインアンプだということはすぐに分かった。フロントパネル中央に極太のボリュームノブ、表示部とインプットセレクター、バス/トレブル/左右バランスのノブが配置される。


まず注目したいのは、デノンアンプの音の良さを根本から支えてきたパワーアンプ回路だ。同社のアンプは伝統的に大きな出力を少ない半導体素子で稼ぎ出すという、技術的に相反する要素にチャレンジしながら音質を高めてきた経緯がある。

回路をシンプルにすることで小レベルの音が欠落しづらくなるため、基本的な音質を左右する回答の1つとして僕は高く評価している(もちろん他の思想の高音質化技術もある)。

可変ゲイン型プリアンプやパワーアンプ、電源部の改良により理想的なミニマムシグナルパスを実現。2層基板を採用したパワーアンプ部は、ワイヤーを可能な限り減らすことで、製品間のばらつきやS/Nを改善している。デジタル電源部はアナログ電源と独立させて、プリ部の電源部は高剛性シャーシに直接マウントするなど最適化を図っている

また、PMA-A110でさえ差動2段アンプとしていたものを、究極のシンプル化を求めた結果、最新世代の「Advanced UHC-MOSシングルプッシュプル増幅回路」による、差動1段回路を採用した。

次に注目したいのはプリアンプ部だ。可変ゲイン型を採用したことにより、一般的な音量下ではプリアンプではなくパワーアンプのみで増幅させてノイズレベルを改善している。さらに、A110のプリ部は2層基板+片面による複数基板構成だったが、4層基板を採用し、基板単体でシンプルな信号経路を実現している。

可変ゲイン型プリアンプは、音量に合わせてプリアンプのゲインを増減させることにより、一般的に使用される音量の範囲内ではプリアンプでの増幅を行わず、パワーアンプのみで増幅することにより、ノイズレベルの劇的な改善を実現している

「繊細さと力強さ」を高い次元で両立するために、増幅素子のUHC-MOS(Ultra High Current MOS)FETをシングルプッシュプルで採用。さらにシンプル化を追求し、発振に対する安定性に優れ、特性の異なる様々なスピーカーをより正確に駆動することができる差動1段アンプ回路を採用する

そしてオーディオ回路にも注目したい。PCMのデジタル入力された信号を、1.536MHz/32bitにアップサンプリングさせる高精度なアナログ波形再生技術「Ultra AL32 Processing」を搭載する。

さらにDACチップはESS社「ES9018K2M」を左右チャンネルに二基ずつ用いる「Quad-DAC構成」に加え、PCM 44.1kHz系/48kHz系/DSDという3つのクロックまで搭載する。そしてなんといっても、サウンドマスターの山内慎一氏による徹底したサウンドチューニングがポイントとなっている。

同社の最新アナログ波形再生技術「Ultra AL32 Processing」を搭載。PCMデジタル入力信号に対して、前世代の2倍となる1.536MHzへのアップサンプリングと32bitへのビット拡張処理を行い、SN比を改善している

DSD(最大11.2 MHz)、PCM(最大384kHz/32 bit)に対応したQuad-DAC構成のDACを搭載。PMA-3000NEの超低位相雑音クロック発振器によって生成されるマスタークロックで制御を行うアシンクロナスモードに対応している

同一グループであるマランツのプリメインアンプは、ネットワークソリューションのHEOSを搭載したモデルが増えている一方で、デノンは品質を徹底的に高めたDAC回路部を搭載していることが興味深い。そんな中、操作性や音質など自分好みのトランスポートと組み合わせてのデジタル再生に対応してきたことは見逃せない。

スピーカー端子にはAVアンプのフラッグシップモデル「AVC-A1H」用に開発された高品位な端子を採用。金メッキが施されており、Yラグやバナナプラグにも対応する。また、2系統のスピーカー端子を装備しており、バイワイヤリング接続も可能。RCA音声入出力端子には、高剛性な真鍮削り出しタイプを採用している

この価格帯のアンプ群で特に目を引く完成度を実現



それでは実際にそのサウンドを体験してみよう。試聴室リファレンスのB&W「802D4」に、まずはアキュフェーズのSACDプレーヤー「DP-770」を用いて、ソースダイレクトモードで、久石譲『A Symphonic Celebration』(UMCK-1731)を聴いた。

【CD】『A Symphonic Celebration - Music from the Studio Ghibli Films of Hayao Miyazaki』
久石 譲/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
(Deutsche Grammophon UMCK-1731)

音が出た瞬間に音に力を感じる「こんなにもスピーカーを駆動するアンプなのか!」というのが第一印象。ブラインドで聴かされたら、多くの方が「セパレートアンプが接続されている」と思うだろう。空間表現が抜群に良い。左右の楽器の配置に加え、前後のレイヤー感の表現も素晴らしい。特定の楽器がオーケストラの左右のどの位置で、前から何段目にあるのかさえ聴き取れる。

ハイレゾファイルは、DELAのミュージックライブラリーN1Aをネットワークトランスポートとして、USBケーブルでPMA-3000NEと接続。同機のDAC部を活かす形でノラ・ジョーンズ/ロバート・グラスパーの『Let It Ride』を聴いた。

【ハイレゾ】『Let It Ride』
Norah Jones、Robert Glasper
(Blue Note FLAC48kHz/24bit)

中低音域の土台がしっかりとした音で、全帯域で音楽的な速度が統一されている。驚くべきは伴奏するロバート・グラスパーのピアノのリアリティ。本当に微妙なタッチのニュアンスをしっかりと表現しつつ、立体的な骨格を両立している。そしてノラ・ジョーンズの音像は等身大の表現で定位する。

最後はアナログ再生。MCカートリッジにフェーズメーションPP-2000を使ったが、PMA-3000NEのフォノイコライザーの音が予想以上に良質だ。ソニークラシカルから発売のハンス・ジマー『The Classics』(88985322811)は、オーディオショーでもよく再生する定番曲だが、一聴して分解能が高く、抑揚への追従力も良く、楽器のディテールがしっかりと前へ飛び出してくる。

【レコード】『The Classics』
Hans Zimmer
(Sony Classical 88985322811)


MM/MCの両方に対応するフォノイコライザーを搭載。プリアンプ基板から独立した専用の基板にレイアウトして信号ループを最小化することにより、漏洩磁束の影響を低減してS/N比を向上させている
PMA-3000NEは、シンプル化を徹底した信号回路による実にクレバーな設計により、音のリアリティが高く、セパレートアンプのような抜群の駆動力だった。つまるところ、山内氏が掲げるサウンドイメージ「Vivid & Spacious」を見事に具現化しており、この価格帯のリファレンスたる存在のアンプ群の中でも、特に目を引く完成度を実現したと言って良いだろう。

(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)

本記事は『季刊・Audio Accessory vol.194』からの転載です

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