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PR低音エネルギーを重視するオーディオファンは必聴

新開発ユニットを巧みに操る懐深いサウンド。ELAC「Debut 3.0」フロア型/ブックシェルフ型を聴く

公開日 2024/11/20 06:30 生形三郎
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■「Debut F5.3」〜音楽全体のスケール感が拡大し、ベースラインも明瞭



フロア型Debut F5.3のクオリティをチェック

続いて、フロア型のDebut F5.3を試聴する。こちらは、トゥイーター×1/ミッドレンジ×1/ウーファー×2の構成となる3ウェイモデルであり、ミッドレンジとウーファーのユニットは同一としている。低域側にバランスした傾向や、中域や高域の明瞭感は継承しているのだが、ウーファーのユニット数やキャビネットの容積が増え、低音の下支えや量感が増大することで、音楽全体のスケール感が拡大し、一層滑らかで快適な音質を獲得するのである。

女性ボーカルの音源では、歌声のボトムがさらに充実し、音像が拡大。やはり温かみが一層増しており聴き心地が良い。しかしながら、歌唱の発語自体は、ブックシェルフ型と同等の明瞭さが確保されている。ピアノ・トリオでは、とりわけウッドベースの演奏が、ブックシェルフのときよりも楽々と動き出し、軽々とフレーズを紡いでいくさまが爽快だ。ベースラインの動きに対する視認性が良くなるのである。ピアノのタッチやシンバルレガートのダイナミクス感は余韻が充実し、よりソフトでスムーズな起伏で展開する。

■深い奥行きの表現とスムーズな質感が耳に届く


声楽を含むバロックオーケストラは、そのスケール感の大きさがもっとも効果的に適用される。演奏空間は、より本来的な広さを感じさせ、深い奥行きを楽しむことができる。余韻の滞空時間が伸び、演奏の直接音と、壁や床、天井などに反射してから届く間接音とが渾然一体となって耳に届くようになり、やはり、よりスムーズな質感を獲得している。

EDMの音源は、低域再生の余裕が生まれたこともあり、音圧が高いエレクトリックなキックドラムも、響きが飽和せずに描かれる。たっぷりとした量感があるので、再生環境には、そこそこのエアボリュームがあることが望ましいが、大音量を出さない限りそこまで憂慮する必要もないだろう。

逆に、昨今増えてきた良質なクラスDアンプなどによって着実にグリップしてやることで、また異なった低域の表情、音楽全体の表情を生み出してくれることだろう。その意味で本機は、アンプを選ばないという点はブックシェルフと共通ながら、フロア型筐体により拡大された低音域を如何様に鳴らし込むのか、アンプを吟味するという楽しみ方もあると言えそうだ。

■独自の音楽描写で聴き手をスピーカー再生の愉悦へ導く


総じて、音楽の纏まりやディティールの描写力は、2ウェイ・ブックシェルフ型のDebut B5.3に分があると感じたものの、3ウェイ・フロア型のDebut F5.3では音楽全体のスケールや懐の深さ、そこから生まれる充足度やスムーズネスにフロア型ならではの魅力が体現されていた。

いずれも、新搭載のハードドーム・トゥイーターや新設計のアラミド・ファイバー・ウーファーの組み合わせが巧みに構成され、“Debut 3.0シリーズ” 特有の音楽描写を実現していた。新しいDebutシリーズは、その独自の世界観によって聴き手をスピーカー再生の愉悦へと導いてくれる、優れたナビゲーターたる存在なのである。とりわけ、低音のエネルギーを重視するユーザーには、是非とも聴いて頂きたいシリーズだ。



SPEC
■フロア型スピーカー「Debut F5.3」
●形式:3ウェイ・バスレフ型 ●ユニット:25mm アルミニウム・ドーム・トゥイーター×1、135mm アラミド・ファイバー・ミッドレンジ×1、135mm アラミド・ファイバー・ウーファー×2 ●クロスオーバー周波数:500Hz、2.1kHz ●周波数特性:38Hz〜38kHz ●能率:87.5dB ●インピーダンス:6Ω ●外形寸法:172W×1030H×246Dmm ●質量:15.7kg

■ブックシェルフ型スピーカー「Debut B5.3」
●形式:2ウェイ・バスレフ型 ●ユニット:25mm アルミニウム・ドーム・トゥイーター×1、135mm アラミド・ファイバー・ウーファー×1 ●クロスオーバー周波数:1.9kHz ●周波数特性:48Hz〜38kHz ●能率:86.5dB ●インピーダンス:6Ω ●外形寸法:172W×311H×267Dmm ●質量:6.05kg

(提供:ユキム)

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