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PR自分好みの1台になりえる確かな“サウンド”

B&Wのヘッドホン/イヤホンはここまで来た。「Pi6」「Px7 S2e」の“他では得がたい”魅力

公開日 2024/11/22 06:30 海上 忍
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■高い音像表現と空間描写力。「Pi6」の実力を試す



Pi6を試聴して最初に感じたのは、低域の自然なアトモスフィアだ。コントラバスは淀みなく弦の振幅を描き出し、その量感をも正確に伝える。ピアノの低音鍵も撓みなくアタックは迅速に収束、歪みを感じさせない。

筆者を大いに悦ばせたのは、パットメセニーの最新作「Moon Dial」。バリトンギター1本の音を録音したこのアルバム、豊富な低域の情報を忠実にトレースできる描写力が伴わないと、全体のバランスが崩れベースとギターのデュオのように聴こえてしまうのだが、Pi6では違和感がない。φ12mmと完全ワイヤレスにしては大口径な新設計ドライバーの効果か、aptX Adaptiveにより増加した情報量の恩恵か、奥行きを感じさせる音空間は他で得難いものだ。

人間工学に基づいたイヤホン形状を取り入れる「Pi6」。外周部にラバーパーツを配することで、安定した装着感を提供する

Pi6の木目細やかな描写は、ECMのリバーブが効いたサウンドと相性がいい。同レーベルを代表するラルフ・タウナーとジョン・アバークロンビーのデュオ作品「Five Years Later」では、アルバム冒頭から心地いい残響音のさざ波に洗われる。タウナーが爪弾くナイロン弦のガットギターは凛々しくも幽玄な空気をまとい、高速なパッセージを軽やかに紡いでいく。ECM作品はともすれば陰鬱な音になりがちだが、冷涼感を漂わせつつも心地いいPi6のサウンドは、総帥マンフレート・アイヒャーの意図を忠実に再現しているように思える。

プレミアムハイエンド機のPi8でも同じ「Moon Dial」と「Five Years Later」を聴いてみたが、なるほどPi6とよく似ている。Pi6はバイオセルロース、Pi8はカーボンコーティングと素材は異なるが、口径は同じ12mm。Pi8はBluetooth SoC組み込みではないDACやアンプを用いることもあり、音の緻密さや解像感には違いがあるのだが、音像や空間表現には共通の芳香を感じてしまう。本稿の冒頭と同じ喩えを用いるのなら、同一産地だが煎じ方の異なる茶葉を同じ手順で淹れた紅茶、といったところか。どちらも香り高い「my cup of tea」なのだ。

「Pi8」(ミッドナイト・ブルー)価格:オープン(税込72,600円前後)

■TWSとヘッドホンの相似性。一貫するB&Wのサウンドを楽しむ



「Px7 S2e」価格:オープン(税込60,500円前後)。9月に写真のルビー・レッドを追加し、全5色のカラーバリエーションを用意する

よく似た芳香という点でいえば、B&Wのオーバーイヤー・ノイズキャンセリング・ヘッドホン「Px7 S2e」と「Px8」の関係性においても同じことがいえる。Px8の1年後に発売されたPx7 S2eは、カスタム設計φ40mmバイオセルロース振動板などハードウェア面は前代「Px7 S2」からほぼ変わりないが、内蔵DSPを上位モデルのPx8に準じたチューニングに変更するなど、アイデンティティの明確化を進めている。

そのアイデンティティとは、「Px」から始まるオーバーイヤーヘッドホンシリーズの一員であることに他ならない。Px8にはアルミダイキャスト製アームなどプレミアムハイエンドモデルらしい意匠が施されているが、ハウジングなど基本デザインはPx7 S2eにそのまま引き継がれる。重厚感か軽快感か、テイストの違いはあるものの、目指す方向性は同じだ。サウンド面もまた然り、DSPのチューニングをPx8に習ったことはその証明といえるだろう。

試聴を重ねると、Px8とPx7 S2eが同一路線上にあるプロダクトだということがよくわかる。アコースティックギターの1音1音の解けかた、シンバルのアタックから収束までの長さ、サクソフォンの艶やかな金属感、そして空間描写に至るまで、共通の芳香を感じてしまうのだ。Px8はカーボン、Px7 S2eはバイオセルロースと振動板の素材は異なるものの、音からは一貫したB&Wの姿勢が表れる。この関係性や、方向性を上記したPi8、Pi6にもそのまま反映させているのも非常に興味深い。



リスナーにとって「my cup of tea」とは何か。完全ワイヤレスイヤホンのPi6、オーバーイヤー・ノイズキャンセリング・ヘッドホンのPx7 S2e、形状も振動板の大きさも異なるプロダクトだが、どちらもB&Wの芳香を漂わせる。バリューという観点からも、リスナーのお気に入りになりうる “英国からやってきた香り高き紅茶” と思えて仕方がない。


(提供:ディーアンドエムホールディングス)

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