PRAMTサウンドが楽しめる第2弾モデル
装着性が向上してさらに進化! “ハイルドライバー” AMT搭載のオープン型ヘッドホン「HEDDphone TWO」を聴く
フルレンジAMTドライバーならではの端正かつ透明感のある音で、マニアから絶大な人気を博したHEDD「HEDDphone」。そこに装着性を大幅に向上させた第2弾モデルが登場した。
1960年代、オスカー・ハイル博士によって発明されたAir Motion Transformer(以下、AMT)は現代においてトゥイーター用ユニットとして広く普及している。ハイルドライバーとも呼ばれるAMTをフルレンジ化し、ヘッドホンに取り入れ、大きな話題となったのが、HEDD(Heintz Electro Dynamic Designs)の「HEDDphone」だ。
HEDDは2015年、ドイツ・ベルリンで創業したプロオーディオブランドで、創業者であるクラウス・ハインツ氏はAMT普及に大きな貢献を果たしている。クラウス氏はオスカー博士から直接AMT技術について学び、その知見を活かしてADAM Audioを創業。現在は息子で音楽学者のフレデリック・ノップ氏とともに、HEDDでAMTを用いたアクティブモニターを展開している。
AMTは音声信号が流れるコイルパターンをフィルム素材の振動板へ貼り付け、蛇腹状に折り畳み、磁界のなかに置いた構造が特徴だ。音声信号が流れると折り畳まれた隣り合うプリーツがローレンツ力によって吸引・反発作用を起こし、空気を放出・吸引することで音波が発生する。
このプリーツによって圧縮された空気は一般的なドーム状振動板に対し、外気を3倍以上の比率でドライブできる能力を持つ。そのため、空気の動作スピードを何倍にも加速でき、立ち上がり・立ち下がり時間を大幅に短縮できるのである。かつてAMTをヘッドホンに用いた例もあるが、トゥイーターを転用したものばかりで再生レンジに難があった。
HEDDphoneではその対策として、「VVT(Variable Velocity Transform:可変ベロシティ変換)」という特許技術を用い、20Hzから40kHzまでを単一AMTで駆動できるフルレンジ仕様のドライバーで解決。カプトンフィルムに設けられたコイル形状を新設計し、振動板の折り畳む幅や深さについても改められた。
HEDDphoneはプロの間でも評価されたが、重量面と装着性に課題があり、改善リクエストも多かったようだ。そうした声に応え、ドライバーもより駆動しやすいものへと刷新した他、装着性を高めた第二世代機「HEDDphone TWO」がリリースされることになった。
HEDDphone TWOではベースフレームにカーボンファイバーを用いるなど、超軽量素材を使用することで、本体重量を718gから550gへと軽量化。そして課題であったアジャスト機構について、高さや幅、曲率、側圧をパーソナライズできるスマート・ストラップ・システムを取り入れている。
頭頂部が触れるヘッドパッドには吊り下げ用のストラップと、高さ調整用ストラップ2種類で支えられており、直接手でベルトを締めるような形で位置決めを行う。イヤーパッドはPUレザー製、着脱式ケーブルは端子部も軽くできるミニプラグ両出し式となり、4.4mmバランス駆動用ケーブルと4.4mm to 4pin XLR変換プラグなども同梱され、機能性もアップしている。
ラックスマンのヘッドホンアンプ「P-750u LIMITED」と接続しての試聴だが、アンバランス接続ではウェットで艶よく厚みのあるサウンドが展開。管弦楽器の旋律はハリ艶滑らかで、ローエンドの伸びも豊か。初代HEDDphoneに比べ、低域の量感が増した印象で、よりリスニング向きの傾向となっているようだ。
音の立ち上がり・立ち下がりも早く、落ち着いた雰囲気だけでなく、アタックのキレも十分に感じられる。ピアノやシンバルの響きは緻密で、低域側にも伸びた特性によって安定的に描き出す。ボーカルは肉付きよく滑らかな表現で、口元は潤いよい。
そしてバランス接続ではより抑揚豊かで丁寧なサウンドに変化。音の立ち上がりも一層軽やかで、空間表現のリアルさも増している。音像の重心も低くなり、楽器の分離度も向上。芳醇な音場の広がりと、潤いよく滑らかで、ナチュラルな音像のバランスよい表現を堪能できた。
HEDDphone TWOは課題だった装着性も格段に向上し、穏やかなサウンド性と共に、普段から使い込めるレファレンスへと成長している。他にはないAMTサウンドを耳元で楽しんでほしい。
本記事は「プレミアムヘッドホンガイドマガジンVOL.22 2024 WINTER」からの転載です。
(提供:HEDD-Japan)
AMTをフルレンジ化しヘッドホンに採用
1960年代、オスカー・ハイル博士によって発明されたAir Motion Transformer(以下、AMT)は現代においてトゥイーター用ユニットとして広く普及している。ハイルドライバーとも呼ばれるAMTをフルレンジ化し、ヘッドホンに取り入れ、大きな話題となったのが、HEDD(Heintz Electro Dynamic Designs)の「HEDDphone」だ。
HEDDは2015年、ドイツ・ベルリンで創業したプロオーディオブランドで、創業者であるクラウス・ハインツ氏はAMT普及に大きな貢献を果たしている。クラウス氏はオスカー博士から直接AMT技術について学び、その知見を活かしてADAM Audioを創業。現在は息子で音楽学者のフレデリック・ノップ氏とともに、HEDDでAMTを用いたアクティブモニターを展開している。
AMTは音声信号が流れるコイルパターンをフィルム素材の振動板へ貼り付け、蛇腹状に折り畳み、磁界のなかに置いた構造が特徴だ。音声信号が流れると折り畳まれた隣り合うプリーツがローレンツ力によって吸引・反発作用を起こし、空気を放出・吸引することで音波が発生する。
このプリーツによって圧縮された空気は一般的なドーム状振動板に対し、外気を3倍以上の比率でドライブできる能力を持つ。そのため、空気の動作スピードを何倍にも加速でき、立ち上がり・立ち下がり時間を大幅に短縮できるのである。かつてAMTをヘッドホンに用いた例もあるが、トゥイーターを転用したものばかりで再生レンジに難があった。
HEDDphoneではその対策として、「VVT(Variable Velocity Transform:可変ベロシティ変換)」という特許技術を用い、20Hzから40kHzまでを単一AMTで駆動できるフルレンジ仕様のドライバーで解決。カプトンフィルムに設けられたコイル形状を新設計し、振動板の折り畳む幅や深さについても改められた。
本体重量を軽量化装着性も向上させた
HEDDphoneはプロの間でも評価されたが、重量面と装着性に課題があり、改善リクエストも多かったようだ。そうした声に応え、ドライバーもより駆動しやすいものへと刷新した他、装着性を高めた第二世代機「HEDDphone TWO」がリリースされることになった。
HEDDphone TWOではベースフレームにカーボンファイバーを用いるなど、超軽量素材を使用することで、本体重量を718gから550gへと軽量化。そして課題であったアジャスト機構について、高さや幅、曲率、側圧をパーソナライズできるスマート・ストラップ・システムを取り入れている。
頭頂部が触れるヘッドパッドには吊り下げ用のストラップと、高さ調整用ストラップ2種類で支えられており、直接手でベルトを締めるような形で位置決めを行う。イヤーパッドはPUレザー製、着脱式ケーブルは端子部も軽くできるミニプラグ両出し式となり、4.4mmバランス駆動用ケーブルと4.4mm to 4pin XLR変換プラグなども同梱され、機能性もアップしている。
初代モデルからよりリスニング向きの傾向に
ラックスマンのヘッドホンアンプ「P-750u LIMITED」と接続しての試聴だが、アンバランス接続ではウェットで艶よく厚みのあるサウンドが展開。管弦楽器の旋律はハリ艶滑らかで、ローエンドの伸びも豊か。初代HEDDphoneに比べ、低域の量感が増した印象で、よりリスニング向きの傾向となっているようだ。
音の立ち上がり・立ち下がりも早く、落ち着いた雰囲気だけでなく、アタックのキレも十分に感じられる。ピアノやシンバルの響きは緻密で、低域側にも伸びた特性によって安定的に描き出す。ボーカルは肉付きよく滑らかな表現で、口元は潤いよい。
そしてバランス接続ではより抑揚豊かで丁寧なサウンドに変化。音の立ち上がりも一層軽やかで、空間表現のリアルさも増している。音像の重心も低くなり、楽器の分離度も向上。芳醇な音場の広がりと、潤いよく滑らかで、ナチュラルな音像のバランスよい表現を堪能できた。
HEDDphone TWOは課題だった装着性も格段に向上し、穏やかなサウンド性と共に、普段から使い込めるレファレンスへと成長している。他にはないAMTサウンドを耳元で楽しんでほしい。
本記事は「プレミアムヘッドホンガイドマガジンVOL.22 2024 WINTER」からの転載です。
(提供:HEDD-Japan)