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PRCD再生/リッピングの音質と使い勝手をチェック

CD再生とファイル再生の架け橋に!Shanlingからリッピング機能付きトランスポート「CR60」が登場

公開日 2024/12/19 06:30 土方久明
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ハイレゾファイルやストリーミングサービスなどデジタルソースが多様化しているが、オーディオファイルにとってCDの重要性は言うまでもないだろう。フィジカルメディアとして所有欲を満たし、コレクションとしての存在感は上述した無形のソースを確実に凌駕する。また近年ではこれらの愛聴盤をリッピングしてデジタルファイル化し、ネットワークプレーヤー等で再生している方も増えているようだ。

そのような中、Shanling(シャンリン)からCD再生とリッピング機能を両立させた便利なオーディオ機器「CR60」が発売された。同社は1988年に中国で設立された老舗のオーディオメーカーで、日本ではDAPなどのポータブルオーディオプレイヤーやポータブルアンプがコアなユーザーから支持されている。

CDトランスポート/リッパー「CR60」:45,550円(税込)カラーはブラック/シルバー

■音質と安定した読み取りを実現させる厳選のドライブ部


シャーシはコンパクトでオーディオラックやデスクトップなどに気軽に設置できる。シャープなエッジ形状のフロントパネルにはカラー液晶ディスプレイや各種の物理ボタンが設置され、専用リモコンも付属する。電源供給はUSB Type-Cによる5Vもしくはアダプターによる12V DC入力となる(アダプターは付属せず)。

CDプレーヤーの構成で見逃せないドライブ部は、サンヨー製のHD850レーザーヘッドとフィリップス製ドライブの組み合わせにより安定した読み取りを実現している。トランスポートである本モデルはDAコンバーターおよびアナログ出力は搭載しないが、USB Type-A端子、光TOSLINK、S/PDIF同軸など多彩なデジタル端子を搭載するため、所有するDAコンバーター等と組み合わせて自分好みの音を狙うことができる。また、内部処理を担当するプロセッサーには「Ingenic X1000」を採用している。

トランスポート出力端子はUSB Type-A/同軸/光の3系統、リッピング出力端子はUSB Type-A/USB Type-B/USB Type-Cの3系統を用意。給電はType-C(5V-2A)とDC給電(DC9V/DC12V/DC15Vの互換対応)が装備されている


CDドライブにはPhilipsサーボシステムを採用し、ピックアップは三洋電機製のHD850。リッピング時の確実な読み取りと音質の両方を追求する

■組み合わせるDAコンバーターの能力をしっかりと支える実力機


先述の通り、「CR60」の大きな特徴はCDトランスポートモードとCDリッピングモードを備えることだ。まずはCDトランスポートモードでの音質をチェック。背面のスイッチでトランスポートモードに切り替えて、筆者が所有するDAコンバーター、イレブンオーディオ「SagraDAC2」とUSBケーブルで接続した。ノラ・ジョーンズのアルバム『Come Away With Me』のディスクをローディング式ドライブに入れ、再生ボタンを押す。

CDトランスポートとDACの組み合わせによる音のレビューとなるが、オーバーオールの音質としては、帯域バランスがフラット傾向の現代的な描写力を持つ音で、ハイファイな音色かつ空間の見通しも良好である。トラック1の「Don't Know Why」は、中低域の密度が高いDACの個性がそのまま音に現れており、声や楽器の音色に適度な温もりがある。つまるところ秀逸な音楽表現で聞き手を巧みに引き込んでくれる音だ。

現代ポップスからテイラー・スイフトの『Midnights』収録「Anti-Hero」を聴いたが、ボーカルのディテール表現がシャープで、適度なSNの高さも感じられる。また、音像や空間がしっかりと像を結び鮮明な視界を実現している点が印象的で、「CR60」は組み合わせるDAコンバーターの能力をしっかりと支えるトランスポートであると判断した。

■CDを入れると自動動作。使いやすく安心感がある


続いてCDをリッピングしてみた。「CR60」はパソコン、USBメモリ、Androidスマホやシャンリン製DAPという複数の方法で取り込みが可能である。今回は手順が最もシンプルなUSBメモリーを利用したリッピングを試した。

USB Type-B/USB Type-Cポート経由でPCやAndroidスマートフォンを接続することで本体ストレージにCD音源をリッピングすることができる

背面のスイッチを「RIPPER」に切り替え、USB Type-A端子にUSBメモリーを装着。CDを挿入すると自動的にリッピングが開始される。リッピング中は本体に進行状況が表示されるので安心感がある。USBドライブへのリッピングはwav形式のみ。ファイルタグが埋め込めるFLAC形式は、AndroidスマホやシャンリンのDAP経由で、アプリ「Eddict Player」を使用すれば取り込むことができる。

「CR60」はCDトランスポートとしてお気に入りのDAコンバーターと組み合わせたり、最近はスティック型の安価なDACも発売されているので、それらを利用すればローコストでセパレート方式のCD再生環境を構築できる。また、リッピング機能を持つため将来的にはネットワークプレーヤーを利用した楽曲ファイル再生環境にも対応できるなど、CD再生とファイル再生の架け橋となる製品だと思う。価格が手ごろな点も評価したい。

ハイファイロスレス音楽再生アプリ「Eddict Player」との連携が可能。同アプリから「PCリッピング」の項目を選択することで、CR60との接続時に楽曲のタグ情報の編集などの様々な操作を行うことができる ※iOS版は非対応

【SPEC】
●SoC:Junzheng製 X1000E ●ドライバー:Philipsサーボ+SANYO HD850光ピックアップ ●互換性:CD/CD-R/CD-RW ●トランスポート出力端子:USB-A/同軸/光出力 ●リッピング出力端子:USB Type-A/USB Type-B/USB Type-C ●給電仕様:Type-C給電=5V-2A、DC給電=DC9V/DC12V/DC15Vの互換対応 ●付属品:USB Type-A to Cケーブル、USB Type-B to Aケーブル、リモコン ●サイズ:205W×52H×180D mm ●質量:約1.68kg


(協力:MUSIN)

本記事は『季刊・Audio Accessory vol.195』からの転載です

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