PRクロック入力を持たないCDプレーヤーにも活用できる
CD再生は “クロック” でさらに化ける!プロ機譲りの実力機、MUTEC「MC-3+」の音質グレードアップ技
プロ向け機材で培った独自の1Gクロックテクノロジーで、デジタル再生において独自の地位を確立していドイツのオーディオブランド・MUTEC(ミューテック)。
同社の「MC-3+」と「MC-3+USB」は、(1)「デジタルオーディオ信号のリクロッカー」そして(2)「ワードクロック供給」という2つの特異な使い方ができるスペシャルなアイテムだ。今回は、「MC-3+」を活用し、CD再生をさらに深く楽しむための2種類の使い方をそれぞれご紹介。音質の改善ポイントを探ってみよう。
ロスレスストリーミングサービス「Qobuz」の日本上陸やアナログレコード市場の充実が賑わっているが、音質をはじめ使い勝手の良さや安定度の高さという点でCDというメディアの魅力は色褪せることがない。そんなCD再生音質を向上させようと思ったときに浮かぶ一つのアプローチが、外部クロック信号の入力である。
クロック信号は、デジタル再生を司る、信号処理やデータ伝送における回路動作の基準となる周期信号だが、CDプレーヤーによっては、内部のクロック回路の他に、外部クロック入力からより高精度なクロック信号を外部から供給して音質向上が図れるプレーヤーも存在する。そんなときに役立つのがクロックジェネレーターの存在だ。
今回ご紹介するのは、プロ音響機器ブランドとして定評ある、ドイツは「MUTEC」のマスタークロック・ジェネレーター/ディストリビューター「MC-3+」である。
一般的なクロックジェネレーターの使用法としては、CDプレーヤーのクロック入力端子に、外部クロックジェネレーターの出力を接続する。そのため、CDプレーヤーやデジタルプレーヤーにクロック入力端子を備えていることが必須となる。
しかしながら、プレーヤーがクロック入力端子を持たずともクロック精度を向上させられるのが、MC-3+のユニークかつ秀逸な機能である。
本機は、クロック信号の出力だけでなく、入力されたデジタル音声信号自体を入力してリクロックし、再びデジタル音声信号を出力することで、音質向上を図れることが画期的なのである。このような機能は、私が知る限りでは、コンシューマー市場では他に例を見ない。
加えて、入力したクロック信号を任意のクロック周波数に変換して最大9系統に分配できたり、MC-3+自体にさらに高精度なマスタークロックジェネレーターを供給しての音質アップも可能となっているなど、プロ機ならではの多機能を誇る。
そんなMUTECのクロックは、独自技術である「1G-Clock テクノロジー」を採用していることが最大の特徴だ。これは、内部の発振器からクロック信号を作り出す際に、通常は約50から100MHzという周波数帯域で処理するのに対し、このクロックテクノロジーでは、その名の通り、1GHzというそれより極めて高い周波数帯域で処理することで、揺らぎを抑えた正確なクロック生成を可能とするものだ。
まずは、早速リクロック・モードを使用して、CDトランスポートとDAコンバーターの間にMC-3+に挿入してみよう。トランスポートとして使用したNuPrime「CDT9」の同軸S/PDIF出力を、MC-3+の同軸S/PDIF入力端子に接続する。そして、MC-3+の同軸S/PDIF出力から、アキュフェーズのDAコンバーター「DC-1000」の同軸S/PDIF入力端子へと繋ぐ、という接続となる。
結論から言えば、このようなリクロックモードで接続した場合が、もっともMC-3+らしい音を体感できる使用法であると感じた。音を出した瞬間で一聴して分かるほどに音に緻密さが与えられ、姿勢が正されるかのような明晰感が生み出されるのだ。
その存在感はまるでコンダクター、指揮者のようである。快活な勢いとテンポによるジャズのピアノトリオソースは、新たな指揮者、統率者が加わることによって一転して3人の演奏がシャキリとした表情になり、まるで演奏のテンポが少し上がったかのような快速さが生まれる。また、とにかく3人の演奏内容が詳細に描かれるため、このトリオの演奏や録音が、誰か1人が突出したり音楽を掌握したりするのではなく、3人がしっかりとイーブンな関係性で成り立っているということが改めて明快に伝わってきて驚かされるのである。
ジャズ女性ボーカルソースでも、歌声の表情が一層細かく浮き上がる。歌い手の表情から真摯さが引き出され、歌詞から伝わる楽曲の世界観や音作りを含めた雰囲気が如実に伝わってくる。先程と同じく、端正で明晰な質感となり、MC-3+によって音楽の表情が一変することが、大変興味深い。全ての音要素を余さず明確に描き出そうとするようなそのスタンスは、まさにスタジオ機器として実績を積み重ねてきたMUTECならではの持ち味と推察した。
実際に、大規模な商用スタジオと同等の設備や環境が導入されている、筆者が教鞭をとる洗足学園音楽大学のレコーディング・スタジオにもMUTECのクロックが導入されているが、そこで普段聴いているモニターサウンドに通底した質感を実感し、このクロックの存在感を再認識した。これぞ「1G-Clock テクノロジー」が繰り出す音世界なのだ。
続いて、CDプレーヤーにワードクロックを供給する形でMC-3+を試してみる。ここでは、CECのCDプレーヤー「CD3 3.0」のワードクロック入力に接続する。先ほどと異なるのは、デジタル音声信号自体はMC-3+を経由しない、ということ。MC-3+からは、プレーヤーに対して純粋にクロック信号だけが供給されることになる。
まず、MC-3+を接続しない状態で再生すると、このプレーヤーならではの肉厚で滑らかなサウンドが印象的だ。ダブルベルトドライブ方式を採ることもあってか、心地よい口当たりや余韻を感じさせる表現が存分に楽しめる。筆者がかつて愛用していた同社のCDトランスポート「TL3N」のサウンドを思い出し、思わず顔がほころんだ。
そこへ、MC-3+を接続すると、先ほどとは異なる質感向上が得られた。先ほどは、音声信号をMC-3+でリクロックすることで、再生の音質傾向にも大きく介入していた印象あったが、今回は音質傾向には介入せず、再生のクオリティのみを向上させる印象なのだ。高域方向の硬さや粗さが取り除かれ、演奏の勢いや張り出しが増して、プレゼンスが高まるのである。
ジャズのピアノトリオは、CD3 3.0ならではの温もりや丸みある太い筆致はそのままに、ピアノの打鍵やドラムスのスネアやシンバルのストローク、ベースのピチカートのアタックに、鋭いレスポンスが引き出されて明快さが増し、演奏の迫力がよりダイレクトに伝わってくる。シンバルのアタックは歪み感が抑えられ余韻もクリアになり、丁寧でスムーズかつ、きっちりとインパクトが立ち上がる。
女性ボーカルも、やはり歌声の存在感が高まって、声がしっかりと前面に浮かび上がる。先ほどのリクロックでは、表情もガラリと変わるほどの変化があったが、今回は、CDプレーヤーの特徴のみがより明確に引き出されている印象だ。
オーケストラソースでも、全体的に音が迫る印象が高まるとともに、直接音の背景にある残響や余韻の伸びが明快になる。演奏空間が広がったかのようだ。同時に、ティンパニのアタックにも明確な土台が築かれて、音楽のボトムの盤石さが増している。
試聴から実感したのは、MC-3+はCD再生に大きな変革をもたらしてくれる存在であるということ。音楽信号自体を通すリクロック接続では、表情を一変させるほどの明晰さを与えてくれる。一方でワードクロック出力では、MC-3+ならではの明晰さを持ちつつも、音の品位を向上させプレーヤーが持つキャラクターを一層明確に伝えてくれる。
この2通りの楽しみ方をもたらしてくれるのは、本機ならではといえるだろう。MC-3+は、オーディオシステムにスタジオ・クオリティの精緻さをもたらす、頭脳明晰なマエストロなのである。
なお、「MC-3+」シリーズにはUSB入力を追加した「MC-3+USB」というモデルもラインナップする。こちらは最大入力フォーマットがPCM 192kHz/32bitとDSD 11.2MHzまでに対応する。今回はあくまでCD再生をメインとしたが、ハイレゾ音源の音質グレードアップにはこちらもぜひ活用して欲しい。
(提供:ヒビノインターサウンド)
同社の「MC-3+」と「MC-3+USB」は、(1)「デジタルオーディオ信号のリクロッカー」そして(2)「ワードクロック供給」という2つの特異な使い方ができるスペシャルなアイテムだ。今回は、「MC-3+」を活用し、CD再生をさらに深く楽しむための2種類の使い方をそれぞれご紹介。音質の改善ポイントを探ってみよう。
■クロック入力を持たないCDプレーヤーにも活用できる
ロスレスストリーミングサービス「Qobuz」の日本上陸やアナログレコード市場の充実が賑わっているが、音質をはじめ使い勝手の良さや安定度の高さという点でCDというメディアの魅力は色褪せることがない。そんなCD再生音質を向上させようと思ったときに浮かぶ一つのアプローチが、外部クロック信号の入力である。
クロック信号は、デジタル再生を司る、信号処理やデータ伝送における回路動作の基準となる周期信号だが、CDプレーヤーによっては、内部のクロック回路の他に、外部クロック入力からより高精度なクロック信号を外部から供給して音質向上が図れるプレーヤーも存在する。そんなときに役立つのがクロックジェネレーターの存在だ。
今回ご紹介するのは、プロ音響機器ブランドとして定評ある、ドイツは「MUTEC」のマスタークロック・ジェネレーター/ディストリビューター「MC-3+」である。
一般的なクロックジェネレーターの使用法としては、CDプレーヤーのクロック入力端子に、外部クロックジェネレーターの出力を接続する。そのため、CDプレーヤーやデジタルプレーヤーにクロック入力端子を備えていることが必須となる。
しかしながら、プレーヤーがクロック入力端子を持たずともクロック精度を向上させられるのが、MC-3+のユニークかつ秀逸な機能である。
本機は、クロック信号の出力だけでなく、入力されたデジタル音声信号自体を入力してリクロックし、再びデジタル音声信号を出力することで、音質向上を図れることが画期的なのである。このような機能は、私が知る限りでは、コンシューマー市場では他に例を見ない。
加えて、入力したクロック信号を任意のクロック周波数に変換して最大9系統に分配できたり、MC-3+自体にさらに高精度なマスタークロックジェネレーターを供給しての音質アップも可能となっているなど、プロ機ならではの多機能を誇る。
そんなMUTECのクロックは、独自技術である「1G-Clock テクノロジー」を採用していることが最大の特徴だ。これは、内部の発振器からクロック信号を作り出す際に、通常は約50から100MHzという周波数帯域で処理するのに対し、このクロックテクノロジーでは、その名の通り、1GHzというそれより極めて高い周波数帯域で処理することで、揺らぎを抑えた正確なクロック生成を可能とするものだ。
■CDトランスポートとの組み合わせレビュー!音に緻密さが増す
まずは、早速リクロック・モードを使用して、CDトランスポートとDAコンバーターの間にMC-3+に挿入してみよう。トランスポートとして使用したNuPrime「CDT9」の同軸S/PDIF出力を、MC-3+の同軸S/PDIF入力端子に接続する。そして、MC-3+の同軸S/PDIF出力から、アキュフェーズのDAコンバーター「DC-1000」の同軸S/PDIF入力端子へと繋ぐ、という接続となる。
結論から言えば、このようなリクロックモードで接続した場合が、もっともMC-3+らしい音を体感できる使用法であると感じた。音を出した瞬間で一聴して分かるほどに音に緻密さが与えられ、姿勢が正されるかのような明晰感が生み出されるのだ。
その存在感はまるでコンダクター、指揮者のようである。快活な勢いとテンポによるジャズのピアノトリオソースは、新たな指揮者、統率者が加わることによって一転して3人の演奏がシャキリとした表情になり、まるで演奏のテンポが少し上がったかのような快速さが生まれる。また、とにかく3人の演奏内容が詳細に描かれるため、このトリオの演奏や録音が、誰か1人が突出したり音楽を掌握したりするのではなく、3人がしっかりとイーブンな関係性で成り立っているということが改めて明快に伝わってきて驚かされるのである。
ジャズ女性ボーカルソースでも、歌声の表情が一層細かく浮き上がる。歌い手の表情から真摯さが引き出され、歌詞から伝わる楽曲の世界観や音作りを含めた雰囲気が如実に伝わってくる。先程と同じく、端正で明晰な質感となり、MC-3+によって音楽の表情が一変することが、大変興味深い。全ての音要素を余さず明確に描き出そうとするようなそのスタンスは、まさにスタジオ機器として実績を積み重ねてきたMUTECならではの持ち味と推察した。
実際に、大規模な商用スタジオと同等の設備や環境が導入されている、筆者が教鞭をとる洗足学園音楽大学のレコーディング・スタジオにもMUTECのクロックが導入されているが、そこで普段聴いているモニターサウンドに通底した質感を実感し、このクロックの存在感を再認識した。これぞ「1G-Clock テクノロジー」が繰り出す音世界なのだ。
■ワードクロック入力搭載機のグレードアップにも
続いて、CDプレーヤーにワードクロックを供給する形でMC-3+を試してみる。ここでは、CECのCDプレーヤー「CD3 3.0」のワードクロック入力に接続する。先ほどと異なるのは、デジタル音声信号自体はMC-3+を経由しない、ということ。MC-3+からは、プレーヤーに対して純粋にクロック信号だけが供給されることになる。
まず、MC-3+を接続しない状態で再生すると、このプレーヤーならではの肉厚で滑らかなサウンドが印象的だ。ダブルベルトドライブ方式を採ることもあってか、心地よい口当たりや余韻を感じさせる表現が存分に楽しめる。筆者がかつて愛用していた同社のCDトランスポート「TL3N」のサウンドを思い出し、思わず顔がほころんだ。
そこへ、MC-3+を接続すると、先ほどとは異なる質感向上が得られた。先ほどは、音声信号をMC-3+でリクロックすることで、再生の音質傾向にも大きく介入していた印象あったが、今回は音質傾向には介入せず、再生のクオリティのみを向上させる印象なのだ。高域方向の硬さや粗さが取り除かれ、演奏の勢いや張り出しが増して、プレゼンスが高まるのである。
ジャズのピアノトリオは、CD3 3.0ならではの温もりや丸みある太い筆致はそのままに、ピアノの打鍵やドラムスのスネアやシンバルのストローク、ベースのピチカートのアタックに、鋭いレスポンスが引き出されて明快さが増し、演奏の迫力がよりダイレクトに伝わってくる。シンバルのアタックは歪み感が抑えられ余韻もクリアになり、丁寧でスムーズかつ、きっちりとインパクトが立ち上がる。
女性ボーカルも、やはり歌声の存在感が高まって、声がしっかりと前面に浮かび上がる。先ほどのリクロックでは、表情もガラリと変わるほどの変化があったが、今回は、CDプレーヤーの特徴のみがより明確に引き出されている印象だ。
オーケストラソースでも、全体的に音が迫る印象が高まるとともに、直接音の背景にある残響や余韻の伸びが明快になる。演奏空間が広がったかのようだ。同時に、ティンパニのアタックにも明確な土台が築かれて、音楽のボトムの盤石さが増している。
試聴から実感したのは、MC-3+はCD再生に大きな変革をもたらしてくれる存在であるということ。音楽信号自体を通すリクロック接続では、表情を一変させるほどの明晰さを与えてくれる。一方でワードクロック出力では、MC-3+ならではの明晰さを持ちつつも、音の品位を向上させプレーヤーが持つキャラクターを一層明確に伝えてくれる。
この2通りの楽しみ方をもたらしてくれるのは、本機ならではといえるだろう。MC-3+は、オーディオシステムにスタジオ・クオリティの精緻さをもたらす、頭脳明晰なマエストロなのである。
なお、「MC-3+」シリーズにはUSB入力を追加した「MC-3+USB」というモデルもラインナップする。こちらは最大入力フォーマットがPCM 192kHz/32bitとDSD 11.2MHzまでに対応する。今回はあくまでCD再生をメインとしたが、ハイレゾ音源の音質グレードアップにはこちらもぜひ活用して欲しい。
(提供:ヒビノインターサウンド)