PR自動車部品で培った制振技術をオーディオに応用
TAOCのB&W「805 D4」用スピーカースタンドの音質を体験。純正スタンドとの違いはいかに?
スピーカースタンドの先駆者といえるTAOC(タオック)から、人気のブックシェルフ型スピーカーであるBowers & Wilkins(以下B&W)「805 D4」の専用スタンド「WST-60HD4」が登場した。805 D4専用にデザインされた天板が特徴的なこのスタンドは、スピーカー本体と天板をネジ固定ができるスタンドであり、現在はAmazon限定にて販売されている。(30ペア限定)
実際に「WST-60HD4」はどのような音質的メリットがあるのか?今回は小社試聴室のリファレンススピーカーのひとつであるB&W「805 D4 Signature」を使用し、純正スタンドとの聴き比べを行った。WST-60HD4の企画からリリースまでを担当したTAOCの各メンバーに取材をした情報とともに、TAOCを知り尽くすオーディオの生き字引的存在である岩出和美氏の試聴レポートをお届けしよう。
B&W社の805 Dシリーズは現代ブックシェルフスピーカーの頂点を走り続けるモデルだ。既にシリーズ最高のクオリティと呼び声高いB&W 805 D4を、さらに高い次元へアップグレードする選択肢が登場した。スピーカースタンドとラックでとても長いキャリアをもつTAOCブランドの数量限定スタンド「WST-60HD4」である。このアップグレードの効果はかなり驚きだったのでここに紹介することとなった。
ここでTAOCについて解説しておきたい。トヨタグループの一翼としてディスクブレーキなど自動車鋳造部品を製造する会社のオーディオ部門として、社内の有志により1983年に創業。現在TAOC製品は、日本や海外の熱心なオーディオファイル、さらには誰もが知るような音響メーカーの研究室やスタジオエンジニアのリファレンスとしても幅広く採用されている。
TAOCの製品は一貫して、自動車部品をバックグラウンドに独自に研究を続けるノウハウと技術からなり、主力はその集大成といえるオーディオラックだが、昨年から始動して好評のスタジオエンジニア専用シリーズも加わったスピーカースタンドも初代スピーカーベースから40年以上、研究が続いている分野である。
製品の詳細に移ろう。WST-60HD4という型番は805 D4専用に開発した高さ60cmのスタンドを意味している。このWST-60HD4は、「B&W 805 D4の性能を最も引き出せる専用スタンドがほしい」というお客様のリクエストから企画開発がスタートしたという。
純正スタンドと同様にこのWST-60HD4も、B&Wの805 D4を付属のネジでしっかりと固定できることが特徴だが、それ以外にも現在の開発チームが示すTAOCのこだわりが随所に感じられる。
まず、天板は前述のプロオーディオ製品の開発で導き出した3重構造を搭載した。新規採用にあたり、開発チームは「素材」と「構造」の2つの要素で実験を行ったという。
一般的なスタンドに多い1重構造の天板や、1991年の初採用以来すでに30年以上の実績があり充分な制振性を備える2重構造の天板、それら多くの試作を用意して検証した結果、最新のB&Wの最新型にふさわしい3重構造の天板を採用するに至ったという。
次に支柱にも印象的なエピソードがある。新採用の3重構造の天板は、見るからに安定感のある2本の支柱で支えられている。内部にはTAOCが自社工場の指定ラインでのみ採取する鋳鉄紛を充填した仕様になっている。
実は開発当初には、別の支柱仕様も候補に挙がっていたという。いくつもの組み合わせを経て最終的に行き着いた仕様は、2000年代前半にB&Wスピーカー向けに開発したというオーバル支柱の踏襲であった。あらゆる研究を行い結果的に原点に回帰したわけだ。
また、往年の805 Dシリーズより若干大きくなっている805 D4だからこそなおさら、2本でしっかり支えることはTAOCにとってベストな性能を提供する重要なファクターであった。
他の805 D4用スタンドと一線を画する洗練されたデザインで仕上がったベースプレートは、スピーカーとスタンドの一体感を高めることに寄与している。805 D4への優雅なエンクロージャーデザインとサウンドに強く感銘を受けたという開発メンバーが、最も信頼している協力工場と二人三脚でデザインを担当した。
スパイク受けは鋳鉄を削り出して塗装したものを採用している。「なぜスパイクとスパイク受けを採用するのか、音が良くなるのか」。オーディオにもよく採用されているスパイク脚仕様について、共同研究のテーマとしてTAOCは素材側から研究をしていたという。このアプローチがいかにもTAOCらしく、自動車部品製造会社の社風を物語っている。
データをもとに最新のTAOCオーディオラックには鋳鉄製スパイク受けを採用しており、今回のスタンドもまた音質改善効果が決め手で採用したと聞く。スタンドというシンプルな製品ながらも、天板からスパイク受けまで、一つ一つの部品の選定に非常に真摯に取り組んでいることが印象的だ。
また、このWST-60HD4にしかない特徴として、オーディオの歴史における銘機に数えられる805 Dから805 D3をもネジ固定可能にしたという。レジェンドと言える銘機たちへの深いリスペクトを込めて追加したこの機能は、歴代の805 Dを愛用するコアなオーディオファイルに寄り添った仕様になっている。805 Dを研究室でリファレンスとして使用する音響メーカーもあり、そうしたエンジニアとのコラボレーションがTAOCのものづくりに影響を与えている。
試聴に移ろう。試聴場所は音元出版の新オーディオ試聴室。B&Wの805 D4と同ブランドの専用スピーカースタンド「FS-805D4」を基準として試聴を始める。リファレンス機器は常設のプリアンプ「C-3900」、パワーアンプ「A-80」、SACDプレーヤー「DP-770」、ケーブルはコードカンパニー製という布陣。
まずは専用スタンドに固定し若干内振りで試聴開始。新試聴室の印象は現在のところ若干暖色系で柔らかなサウンドが楽しめるもの。居心地のよい音と言っていいだろう。試聴ソースを聴くと、その傾向の中で804 D5の精密な表現力が発揮され、さすがの人気モデルと納得。
一通り聴いた後今度はテーマのWST-60HD4を全く同じ位置で聴くことにする。もちろんボルトで一体化している。試聴ソースごとに変化、向上の具合は以下の通りだ。
まずは常時聴いているマーカス・ミラーの「アイル・ビー・ゼア」。ベース・ソロが故マイケル・ジャクソンの歌心をなぞるかの様な演奏。メロディラインが特に美しい。変化としては低音域の膨らみが抑えられ、深くタイトに伸びきるあたりか。
バーバラ・ハンニガンの「ジ・エピタフ・フォー・チャーリー・パーカー」。バーバラはソプラノ、そして指揮者。バードの楽曲のボカリーズだが、声の艶が増して発音が明確になる。さらにちょっと曇っていたサウンドステージが明確になり、音の仕掛けが見えるようになった。
猪俣 猛「ザ・ダイアローグ・ウィズ・ベース」。有名な菅野録音、そのSACD版。ベースのキレ、バスドラ迫力、ハイハットの雨嵐が一際スピーディになる。音量をグングン上げたくなってしまう気持ちよさ。
Sayuri Ishikawaの「ウイスキーが、お好きでしょ」。石川さゆりのラッカー盤経由のCDで独特のぬるっと滑らかな歌声が楽しめる。歌は言わずもがなだが、きれいな日本語が楽しめる。聴き所はバックのオーケストラのハーモニーと音場の広がりだ。
古いジャズを聴く。エリントン/ミンガス/ローチの「キャラバン」。ジャズの錬金術師とならず者のトリオ。不協和音と低音域のごりごりした表現を克明に描くが、若干冷色系の再現となる。低域のどすの効き方も含め純正に一日の長がある。
ジョン・ウィルソン指揮、シンフォニア・オブ・ロンドンの「ラヴェル/マ・メール・ロワ」。この明晰な英国式演奏での変化は大きかった。グロッケンシュピールや各種鳴り物の速度が早く輪郭も明確に鳴りまくる。ティンパニや大太鼓の響きも深く、ある種のラヴェルの醍醐味が大いに楽しめた。
最後はサブモーション・オーケストラの「プリズム」。電気系の現代ジャズである。超ヘビーなサウンドとマッシブな低域が部屋を揺すぶる。WTS-60HD4は歪んで聴こえがちなヴォーカルが聴きやすくなり、さらに激しい低域を支え揺るぎがない。
以上が試聴の感想だが、改めてスピーカースタンドが、スタンドマウントスピーカーの音質に大きく寄与すると感じた次第。WTS-60HD4でいうと冒頭のとおりの改善を確認した。音像をきりりと引き締め、不要な音を出さない、そしてタイトで奥深く伸びる低域再現などは、TAOCの制振技術の成果といえそうだ。
一方純正スタンドは、家庭に置いて落ち着くデザインであり、ケーブル配線もハイダウェイ化できるし、なによりバランスに長けた音質など手堅さが印象的であった。もしも試聴室と居間での2台持ちが可能であれば使い分けしたくなるが、それは贅沢すぎるか。
今回、TAOCからB&W 805 D4専用スピーカースタンドがリリースされるにあたり、オンラインミーティングでインタビューを実施した。彼らが40年間絶えず研究を続けていること、シンプルなアクセサリーであるスピーカースタンドを非常に丁寧に組み上げていることが印象的であった。
TAOCのお客様問い合わせ窓口は、マーケティング担当者や品質管理、時には生産管理や製品開発など、色々なセクションのスタッフが対応するため、お客様の声を製品企画に反映しやすい風土を自分たちで作っている。
今回発売された「WST-60HD4」のように、リクエストを発端にしたメーカーとユーザーのコラボレーションは非常に魅力的だ。TAOCのこだわりと独自の研究結果を反映した新製品が、今後もリリースされることを期待する。
B&Wの805 D4を愛用するオーディオファイルには、スピーカーの真価を知る上でもぜひWST-60HD4をチェックしてみてほしい。
WST-60HD4 スペック
●コンセプト:B&W「805D4」をネジ固定できる専用スピーカースタンド
●価格:150,000円/ペア・税込
●対応機種:B&W 805D4&805D4 Signature、805D3、805D2、805D
●質量:約18㎏(1台)
●高さ:600mm(スパイク受け部含む)
●カラー:ブラックメタリック艶消し塗装
●天板(3重制振構造):228W×300Dmm
●底板(805 D4の筐体に合わせたデザイン):258W×347Dmm
●支柱:B&W製スピーカー向けに調整した鋳鉄粉を充填したオーバル型
●脚部:スパイク支持、鋳鉄製スパイク受け付属
●製品のお問い合わせ先
アイシン高丘エンジニアリング株式会社TAOCチーム TEL:0565-54-1272
試聴音源(CD)
・マーカス・ミラー『ルネサンス』
・バーバラ・ハンニガン『オムニバス/パッション・オブ・チャーリー・パーカー』から
・猪俣 猛『ザ・ダイアローグ』
・Sayuri Ishikawa『トランセンド』
・エリントン/ミンガス/ローチ『マネー・ジャングル』
・ジョン・ウィルソン指揮、シンフォニア・オブ・ロンドン『ラヴェル』
・サブモーション・オーケストラ『カイツ』
(提供:アイシン高丘エンジニアリング株式会社)
実際に「WST-60HD4」はどのような音質的メリットがあるのか?今回は小社試聴室のリファレンススピーカーのひとつであるB&W「805 D4 Signature」を使用し、純正スタンドとの聴き比べを行った。WST-60HD4の企画からリリースまでを担当したTAOCの各メンバーに取材をした情報とともに、TAOCを知り尽くすオーディオの生き字引的存在である岩出和美氏の試聴レポートをお届けしよう。
■B&W 「805 D4」の性能を最大限に引き出すスピーカースタンド
B&W社の805 Dシリーズは現代ブックシェルフスピーカーの頂点を走り続けるモデルだ。既にシリーズ最高のクオリティと呼び声高いB&W 805 D4を、さらに高い次元へアップグレードする選択肢が登場した。スピーカースタンドとラックでとても長いキャリアをもつTAOCブランドの数量限定スタンド「WST-60HD4」である。このアップグレードの効果はかなり驚きだったのでここに紹介することとなった。
ここでTAOCについて解説しておきたい。トヨタグループの一翼としてディスクブレーキなど自動車鋳造部品を製造する会社のオーディオ部門として、社内の有志により1983年に創業。現在TAOC製品は、日本や海外の熱心なオーディオファイル、さらには誰もが知るような音響メーカーの研究室やスタジオエンジニアのリファレンスとしても幅広く採用されている。
TAOCの製品は一貫して、自動車部品をバックグラウンドに独自に研究を続けるノウハウと技術からなり、主力はその集大成といえるオーディオラックだが、昨年から始動して好評のスタジオエンジニア専用シリーズも加わったスピーカースタンドも初代スピーカーベースから40年以上、研究が続いている分野である。
■「WST-60HD4」とは?
製品の詳細に移ろう。WST-60HD4という型番は805 D4専用に開発した高さ60cmのスタンドを意味している。このWST-60HD4は、「B&W 805 D4の性能を最も引き出せる専用スタンドがほしい」というお客様のリクエストから企画開発がスタートしたという。
純正スタンドと同様にこのWST-60HD4も、B&Wの805 D4を付属のネジでしっかりと固定できることが特徴だが、それ以外にも現在の開発チームが示すTAOCのこだわりが随所に感じられる。
まず、天板は前述のプロオーディオ製品の開発で導き出した3重構造を搭載した。新規採用にあたり、開発チームは「素材」と「構造」の2つの要素で実験を行ったという。
一般的なスタンドに多い1重構造の天板や、1991年の初採用以来すでに30年以上の実績があり充分な制振性を備える2重構造の天板、それら多くの試作を用意して検証した結果、最新のB&Wの最新型にふさわしい3重構造の天板を採用するに至ったという。
次に支柱にも印象的なエピソードがある。新採用の3重構造の天板は、見るからに安定感のある2本の支柱で支えられている。内部にはTAOCが自社工場の指定ラインでのみ採取する鋳鉄紛を充填した仕様になっている。
実は開発当初には、別の支柱仕様も候補に挙がっていたという。いくつもの組み合わせを経て最終的に行き着いた仕様は、2000年代前半にB&Wスピーカー向けに開発したというオーバル支柱の踏襲であった。あらゆる研究を行い結果的に原点に回帰したわけだ。
また、往年の805 Dシリーズより若干大きくなっている805 D4だからこそなおさら、2本でしっかり支えることはTAOCにとってベストな性能を提供する重要なファクターであった。
他の805 D4用スタンドと一線を画する洗練されたデザインで仕上がったベースプレートは、スピーカーとスタンドの一体感を高めることに寄与している。805 D4への優雅なエンクロージャーデザインとサウンドに強く感銘を受けたという開発メンバーが、最も信頼している協力工場と二人三脚でデザインを担当した。
■細部までこだわったスタンド、歴代の805シリーズまでも固定可能にした決定版
スパイク受けは鋳鉄を削り出して塗装したものを採用している。「なぜスパイクとスパイク受けを採用するのか、音が良くなるのか」。オーディオにもよく採用されているスパイク脚仕様について、共同研究のテーマとしてTAOCは素材側から研究をしていたという。このアプローチがいかにもTAOCらしく、自動車部品製造会社の社風を物語っている。
データをもとに最新のTAOCオーディオラックには鋳鉄製スパイク受けを採用しており、今回のスタンドもまた音質改善効果が決め手で採用したと聞く。スタンドというシンプルな製品ながらも、天板からスパイク受けまで、一つ一つの部品の選定に非常に真摯に取り組んでいることが印象的だ。
また、このWST-60HD4にしかない特徴として、オーディオの歴史における銘機に数えられる805 Dから805 D3をもネジ固定可能にしたという。レジェンドと言える銘機たちへの深いリスペクトを込めて追加したこの機能は、歴代の805 Dを愛用するコアなオーディオファイルに寄り添った仕様になっている。805 Dを研究室でリファレンスとして使用する音響メーカーもあり、そうしたエンジニアとのコラボレーションがTAOCのものづくりに影響を与えている。
■音像をきりりと引き締め、低域が奥深く伸びる
試聴に移ろう。試聴場所は音元出版の新オーディオ試聴室。B&Wの805 D4と同ブランドの専用スピーカースタンド「FS-805D4」を基準として試聴を始める。リファレンス機器は常設のプリアンプ「C-3900」、パワーアンプ「A-80」、SACDプレーヤー「DP-770」、ケーブルはコードカンパニー製という布陣。
まずは専用スタンドに固定し若干内振りで試聴開始。新試聴室の印象は現在のところ若干暖色系で柔らかなサウンドが楽しめるもの。居心地のよい音と言っていいだろう。試聴ソースを聴くと、その傾向の中で804 D5の精密な表現力が発揮され、さすがの人気モデルと納得。
一通り聴いた後今度はテーマのWST-60HD4を全く同じ位置で聴くことにする。もちろんボルトで一体化している。試聴ソースごとに変化、向上の具合は以下の通りだ。
まずは常時聴いているマーカス・ミラーの「アイル・ビー・ゼア」。ベース・ソロが故マイケル・ジャクソンの歌心をなぞるかの様な演奏。メロディラインが特に美しい。変化としては低音域の膨らみが抑えられ、深くタイトに伸びきるあたりか。
バーバラ・ハンニガンの「ジ・エピタフ・フォー・チャーリー・パーカー」。バーバラはソプラノ、そして指揮者。バードの楽曲のボカリーズだが、声の艶が増して発音が明確になる。さらにちょっと曇っていたサウンドステージが明確になり、音の仕掛けが見えるようになった。
猪俣 猛「ザ・ダイアローグ・ウィズ・ベース」。有名な菅野録音、そのSACD版。ベースのキレ、バスドラ迫力、ハイハットの雨嵐が一際スピーディになる。音量をグングン上げたくなってしまう気持ちよさ。
Sayuri Ishikawaの「ウイスキーが、お好きでしょ」。石川さゆりのラッカー盤経由のCDで独特のぬるっと滑らかな歌声が楽しめる。歌は言わずもがなだが、きれいな日本語が楽しめる。聴き所はバックのオーケストラのハーモニーと音場の広がりだ。
古いジャズを聴く。エリントン/ミンガス/ローチの「キャラバン」。ジャズの錬金術師とならず者のトリオ。不協和音と低音域のごりごりした表現を克明に描くが、若干冷色系の再現となる。低域のどすの効き方も含め純正に一日の長がある。
ジョン・ウィルソン指揮、シンフォニア・オブ・ロンドンの「ラヴェル/マ・メール・ロワ」。この明晰な英国式演奏での変化は大きかった。グロッケンシュピールや各種鳴り物の速度が早く輪郭も明確に鳴りまくる。ティンパニや大太鼓の響きも深く、ある種のラヴェルの醍醐味が大いに楽しめた。
最後はサブモーション・オーケストラの「プリズム」。電気系の現代ジャズである。超ヘビーなサウンドとマッシブな低域が部屋を揺すぶる。WTS-60HD4は歪んで聴こえがちなヴォーカルが聴きやすくなり、さらに激しい低域を支え揺るぎがない。
■まとめ
以上が試聴の感想だが、改めてスピーカースタンドが、スタンドマウントスピーカーの音質に大きく寄与すると感じた次第。WTS-60HD4でいうと冒頭のとおりの改善を確認した。音像をきりりと引き締め、不要な音を出さない、そしてタイトで奥深く伸びる低域再現などは、TAOCの制振技術の成果といえそうだ。
一方純正スタンドは、家庭に置いて落ち着くデザインであり、ケーブル配線もハイダウェイ化できるし、なによりバランスに長けた音質など手堅さが印象的であった。もしも試聴室と居間での2台持ちが可能であれば使い分けしたくなるが、それは贅沢すぎるか。
今回、TAOCからB&W 805 D4専用スピーカースタンドがリリースされるにあたり、オンラインミーティングでインタビューを実施した。彼らが40年間絶えず研究を続けていること、シンプルなアクセサリーであるスピーカースタンドを非常に丁寧に組み上げていることが印象的であった。
TAOCのお客様問い合わせ窓口は、マーケティング担当者や品質管理、時には生産管理や製品開発など、色々なセクションのスタッフが対応するため、お客様の声を製品企画に反映しやすい風土を自分たちで作っている。
今回発売された「WST-60HD4」のように、リクエストを発端にしたメーカーとユーザーのコラボレーションは非常に魅力的だ。TAOCのこだわりと独自の研究結果を反映した新製品が、今後もリリースされることを期待する。
B&Wの805 D4を愛用するオーディオファイルには、スピーカーの真価を知る上でもぜひWST-60HD4をチェックしてみてほしい。
WST-60HD4 スペック
●コンセプト:B&W「805D4」をネジ固定できる専用スピーカースタンド
●価格:150,000円/ペア・税込
●対応機種:B&W 805D4&805D4 Signature、805D3、805D2、805D
●質量:約18㎏(1台)
●高さ:600mm(スパイク受け部含む)
●カラー:ブラックメタリック艶消し塗装
●天板(3重制振構造):228W×300Dmm
●底板(805 D4の筐体に合わせたデザイン):258W×347Dmm
●支柱:B&W製スピーカー向けに調整した鋳鉄粉を充填したオーバル型
●脚部:スパイク支持、鋳鉄製スパイク受け付属
●製品のお問い合わせ先
アイシン高丘エンジニアリング株式会社TAOCチーム TEL:0565-54-1272
試聴音源(CD)
・マーカス・ミラー『ルネサンス』
・バーバラ・ハンニガン『オムニバス/パッション・オブ・チャーリー・パーカー』から
・猪俣 猛『ザ・ダイアローグ』
・Sayuri Ishikawa『トランセンド』
・エリントン/ミンガス/ローチ『マネー・ジャングル』
・ジョン・ウィルソン指揮、シンフォニア・オブ・ロンドン『ラヴェル』
・サブモーション・オーケストラ『カイツ』
(提供:アイシン高丘エンジニアリング株式会社)