PRオーディオ銘機賞2025 〈特別大賞〉受賞モデル
エソテリック“最高峰”フォノEQ「Grandioso E1」を聴く。人に感動を与える “真のハイエンド・オーディオ”
エソテリックの最高峰 “Grandiosoシリーズ” 初のフォノイコライザーが登場した。独自の電流入力方式を備え、電源を別筐体とした完全バランス/完全ディスクリート構成を採用。ハイエンド・アナログ再生の核となるにふさわしい1台に仕上がっている。「オーディオ銘機賞2025」で “特別大賞” を獲得した実力を、角田郁雄氏がレポートする。
私にとってハイエンド・オーディオというものは単に高額というだけではない。グレードの高い技術を搭載しつつ、たとえ次のモデルが発売されようとも、気にも止めずに長く愛用できる製品であると考えている。そこには慈しむような佇まいや、素手では触れないほどのデザインの美しさも不可欠となる。真のハイエンド・オーディオは人に音楽の感動を与えるアートの域に迫るものとも考えている。
こんな想いが伝わってくるブランドの一つが、エソテリックのGrandiosoシリーズだ。ドイツのバウハウスのアートを感じさせる美しく彫りの深いデザインで、同社が取り扱うアヴァンギャルドのスピーカーともよく似合う。そしてここに搭載された技術と機能はまさに唯一無二と言えるところがあり、どこまでも愛好家に寄り添い、最新の技術と音をアップグレードしながら提供し続けている。
そんななかでGrandiosoシリーズは長い歴史を刻むレコード再生にも挑戦している。真のアナログマスターを聴くかのような音質を実現すべく、新たなフォノイコライザー「Grandioso E1」を誕生させた。本機は当然、先に発売された最高峰のアナログプレーヤーの「Grandioso T1」との組み合わせを想定している。
本機はメイン・ユニットと電源/コントロール・ユニットの2筐体で構成。MCのXLRバランスによる電流入力を重視し3系統を装備した上で、MM/MCのRCA電圧入力も1系統を用意。さらにこのほかに光カートリッジ入力にも対応した。
特筆すべきは最初に述べた通り、MCカートリッジの電流入力に対応していることだ。MCカートリッジにおいて、針がレコードをトレースすることによってコイルに流れるのは電流である。この電流は負荷抵抗で微小電圧に変換されるのが一般的な方式なのだが、電流入力ならばMCカートリッジの発電エネルギーを最も効率的にロスなく取り出すことができるのだ。まさにMCカートリッジ本来のピュアな音が再生できるはずだ。
さらに一例となるが、今回試聴で使用したプリアンプ「Grandioso C1X solo」と、ステレオパワーアンプ「Grandioso S1X」を使用すれば、アナログプレーヤーからパワーアンプまでES-LINKによる全段バランス電流伝送が実現することになる。これは大変魅力的だ。
そのほかの注目の機能として、デッカなどのオールドEQなど4種類のカーブがプリセットできたり、ゲインなど細かな設定も可能である。
さらに私はその内部技術に驚愕した。まさにハイエンドな回路構成で精密感がある。特にイコライザーの増幅回路は実に規模が大きい。L/R独立2階建て基板による完全デュアル・モノ・コンストラクションである。さらに入力から出力までを最短距離でUターンさせることで、ピュアな伝送も実現。これにより左右のセパレーションの向上や干渉も低減させている。
回路としては入力初段はディスクリート構成で、EQ部はCR型だ。デッカなどのオールドカーブにも対応するためリレーで抵抗とコンデンサーを切り替えている。出力段はもちろんスルーレイト。2000V/μsを誇る電流強化型バッファーHCLDを搭載し電流出力を可能にしている。この基板の横にはシールド板で遮蔽された光カートリッジ用バランス構成フォノイコライザー部も配置されている。
別筐体の電源/コントロール・ユニットにも目を向けよう。MC/MM用の電源部はL/R独立構成で、振動低減を図ったトロイダル・トランスを2基搭載。音質を吟味した大容量フィルター・コンデンサーも採用している。しかもL/R独立の2本の専用ケーブルで本体に電源供給する。徹底した設計である。光カートリッジ用の電源部も同じく高品位で、1本の専用ケーブルを使用する。
コントロール部にも独立した電源部が装備され、Rコア・トランスを搭載している。さらにこの電源/コントロールユニットで特筆すべきことは、本体内部のオーディオ回路へ微細なノイズが加わらないように、アイソレーター素子を介してコントロール信号を供給している点にある。まさにどんな微細ノイズさえも排除する徹底した電源構成を実現している。
今回はエソテリックの試聴室で、アナログプレーヤー「Grandioso T1」とMCカートリッジはフェーズメーションの「PP-5000」と組み合わせ、私のリファレンス・レコードを堪能した。2Lのヴォーカル曲で『クワイエット・ウインター・ナイト』とピアノ・ジャズトリオ『ポラリティー』だ。
その音をまず電圧入力(RCA入力)で聴いた。奏者や楽器の輪郭を空間にくっきりと浮かび上げるいかにもハイエンドという解像度と空間描写性の高い音が特徴だ。L/R独立の回路構成により、空間が広く奥行きも深い。実に高音質だ。
一方でXLRバランスの電流入力で再生すると、これが前代未聞とも言える驚くべき変貌を遂げる。それはベールを1枚も2枚も剥いだ極めて生々しい音だ。鉄心MCが空芯MCへと変化したような感覚になり、音の立ち上がりが極めて滑らか。録音場所の大聖堂にいるような感覚になり、残響や空気感もより鮮明になる。
ジャズトリオはさらに躍動する。ボトムエンドを撃つかのような低音や鮮烈極まるシンバルの響き。立体空間で演奏が迫ってくる。ピアノの余韻や弱音にはこの上ない透明感や深みも憶えた。まさに目に前でライブが始まっている。アルヴォ・ペルトのピアノを伴った弦楽曲の美しい響きにも深い感動を憶えた。聴き慣れたカートリッジから雑味を排した、ダイナミックレンジの広いピュアな音が聴ける。まさに生演奏だ。
光カートリッジでの再生では俊敏な音の立ち上がりと空間描写性に優れた骨格のしっかりとした音が聴けた。
本機を導入すれば愛用のカートリッジから、今までに体験したことのない多くの音楽的感動が得られることであろう。本当に次元を越えたアナログ再生なのだ。オーディオ的聴きどころを挙げるならば音の鮮度の高さと透明感、ワイドレンジ特性、ダイナミックな音楽の抑揚、そしてエッセンシャルな深い弱音と豊かな倍音である。これらの再現性はハイエンド・オーディオ・ファイルを必ず魅了することであろう。その佇まいはもちろん、音に関しても芸術(アート)の域に到達した傑作である。
(提供:ティアック)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.195』からの転載です
■真のハイエンド・オーディオは人に感動を与えるもの
私にとってハイエンド・オーディオというものは単に高額というだけではない。グレードの高い技術を搭載しつつ、たとえ次のモデルが発売されようとも、気にも止めずに長く愛用できる製品であると考えている。そこには慈しむような佇まいや、素手では触れないほどのデザインの美しさも不可欠となる。真のハイエンド・オーディオは人に音楽の感動を与えるアートの域に迫るものとも考えている。
こんな想いが伝わってくるブランドの一つが、エソテリックのGrandiosoシリーズだ。ドイツのバウハウスのアートを感じさせる美しく彫りの深いデザインで、同社が取り扱うアヴァンギャルドのスピーカーともよく似合う。そしてここに搭載された技術と機能はまさに唯一無二と言えるところがあり、どこまでも愛好家に寄り添い、最新の技術と音をアップグレードしながら提供し続けている。
そんななかでGrandiosoシリーズは長い歴史を刻むレコード再生にも挑戦している。真のアナログマスターを聴くかのような音質を実現すべく、新たなフォノイコライザー「Grandioso E1」を誕生させた。本機は当然、先に発売された最高峰のアナログプレーヤーの「Grandioso T1」との組み合わせを想定している。
■MCカートリッジからの電流入力にも対応
本機はメイン・ユニットと電源/コントロール・ユニットの2筐体で構成。MCのXLRバランスによる電流入力を重視し3系統を装備した上で、MM/MCのRCA電圧入力も1系統を用意。さらにこのほかに光カートリッジ入力にも対応した。
特筆すべきは最初に述べた通り、MCカートリッジの電流入力に対応していることだ。MCカートリッジにおいて、針がレコードをトレースすることによってコイルに流れるのは電流である。この電流は負荷抵抗で微小電圧に変換されるのが一般的な方式なのだが、電流入力ならばMCカートリッジの発電エネルギーを最も効率的にロスなく取り出すことができるのだ。まさにMCカートリッジ本来のピュアな音が再生できるはずだ。
さらに一例となるが、今回試聴で使用したプリアンプ「Grandioso C1X solo」と、ステレオパワーアンプ「Grandioso S1X」を使用すれば、アナログプレーヤーからパワーアンプまでES-LINKによる全段バランス電流伝送が実現することになる。これは大変魅力的だ。
そのほかの注目の機能として、デッカなどのオールドEQなど4種類のカーブがプリセットできたり、ゲインなど細かな設定も可能である。
■微細なノイズも排除徹底した電源構成
さらに私はその内部技術に驚愕した。まさにハイエンドな回路構成で精密感がある。特にイコライザーの増幅回路は実に規模が大きい。L/R独立2階建て基板による完全デュアル・モノ・コンストラクションである。さらに入力から出力までを最短距離でUターンさせることで、ピュアな伝送も実現。これにより左右のセパレーションの向上や干渉も低減させている。
回路としては入力初段はディスクリート構成で、EQ部はCR型だ。デッカなどのオールドカーブにも対応するためリレーで抵抗とコンデンサーを切り替えている。出力段はもちろんスルーレイト。2000V/μsを誇る電流強化型バッファーHCLDを搭載し電流出力を可能にしている。この基板の横にはシールド板で遮蔽された光カートリッジ用バランス構成フォノイコライザー部も配置されている。
別筐体の電源/コントロール・ユニットにも目を向けよう。MC/MM用の電源部はL/R独立構成で、振動低減を図ったトロイダル・トランスを2基搭載。音質を吟味した大容量フィルター・コンデンサーも採用している。しかもL/R独立の2本の専用ケーブルで本体に電源供給する。徹底した設計である。光カートリッジ用の電源部も同じく高品位で、1本の専用ケーブルを使用する。
コントロール部にも独立した電源部が装備され、Rコア・トランスを搭載している。さらにこの電源/コントロールユニットで特筆すべきことは、本体内部のオーディオ回路へ微細なノイズが加わらないように、アイソレーター素子を介してコントロール信号を供給している点にある。まさにどんな微細ノイズさえも排除する徹底した電源構成を実現している。
■バランス入力時の前代未聞の生々しい音に驚愕
今回はエソテリックの試聴室で、アナログプレーヤー「Grandioso T1」とMCカートリッジはフェーズメーションの「PP-5000」と組み合わせ、私のリファレンス・レコードを堪能した。2Lのヴォーカル曲で『クワイエット・ウインター・ナイト』とピアノ・ジャズトリオ『ポラリティー』だ。
その音をまず電圧入力(RCA入力)で聴いた。奏者や楽器の輪郭を空間にくっきりと浮かび上げるいかにもハイエンドという解像度と空間描写性の高い音が特徴だ。L/R独立の回路構成により、空間が広く奥行きも深い。実に高音質だ。
一方でXLRバランスの電流入力で再生すると、これが前代未聞とも言える驚くべき変貌を遂げる。それはベールを1枚も2枚も剥いだ極めて生々しい音だ。鉄心MCが空芯MCへと変化したような感覚になり、音の立ち上がりが極めて滑らか。録音場所の大聖堂にいるような感覚になり、残響や空気感もより鮮明になる。
ジャズトリオはさらに躍動する。ボトムエンドを撃つかのような低音や鮮烈極まるシンバルの響き。立体空間で演奏が迫ってくる。ピアノの余韻や弱音にはこの上ない透明感や深みも憶えた。まさに目に前でライブが始まっている。アルヴォ・ペルトのピアノを伴った弦楽曲の美しい響きにも深い感動を憶えた。聴き慣れたカートリッジから雑味を排した、ダイナミックレンジの広いピュアな音が聴ける。まさに生演奏だ。
光カートリッジでの再生では俊敏な音の立ち上がりと空間描写性に優れた骨格のしっかりとした音が聴けた。
本機を導入すれば愛用のカートリッジから、今までに体験したことのない多くの音楽的感動が得られることであろう。本当に次元を越えたアナログ再生なのだ。オーディオ的聴きどころを挙げるならば音の鮮度の高さと透明感、ワイドレンジ特性、ダイナミックな音楽の抑揚、そしてエッセンシャルな深い弱音と豊かな倍音である。これらの再現性はハイエンド・オーディオ・ファイルを必ず魅了することであろう。その佇まいはもちろん、音に関しても芸術(アート)の域に到達した傑作である。
(提供:ティアック)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.195』からの転載です