|
BDソフト『ブレードランナー・ファイナルカット版』の音にじっくり耳を傾ける山之内氏 |
次に、プレーヤーをBD8002に変更してBDを再生し、HDオーディオの音を確認した。『ブレードランナー・ファイナルカット版』冒頭シーンはシンセサイザーの厚みのあるサウンドで幕を開ける印象的な場面だが、新しいマスターのTrueHDのスケール感と空間の広大なイメージは、DVDとはあまりにも印象が違う。緻密さを取り戻した映像のクオリティとともに、それこそ世界観の違いを感じさせるほどに深みがあり、次の展開への期待が高まる。今回は音の試聴に重点を置くため、ディスプレイは確認用の小型モニターを組み合わせただけなのだが、それでもリドリー・スコット監督が描こうとしている世界のスケールの大きさとテーマの深さはサウンドから存分に伝わってきた。名作をもう一度見直すときの動機は様々だが、ここまで音が変わるのなら、それだけでじっくり時間をかける価値は十分にあると思った。
次は『イノセンス』のおなじみの場面(食料品店のシーン)をリニアPCMで再生した。何度も聴いてきたきめ細かい効果音の一つひとつが初めて聴くように新鮮で生々しく、しかもそれぞれの音のフォーカスが非常に高い。特に、薬莢が落ちる音やガラスがくだけ散る音など、鋭い音を伴う効果音の生々しさは驚くばかりで、この作品のサウンドデザインへの強いこだわりがあらためて実感できた。ドアが閉まる音の余韻や静寂のなかから雨の音が聞こえてくる部分など、空間の大きさを表現するサウンドの巧みさにも強い印象を受ける。何度聴いても感心する場面だが、セパレートアンプで鳴らすと、さらに新しい発見が生まれるのである。
最後に音楽ソフトの代表としてメンデルスゾーンの『夏の夜の夢』を再生した。バレエの付随音楽の域にとどまらない名曲をPCMでサラウンド収録したオーパスアルテレーベルのBDである。このディスクを皮切りにバレエとオペラのBDが同レーベルから続々と登場しているが、内容はもちろんのこと、いずれも映像・音声ともに第一級の水準で収録されていることが嬉しい。筆者の私見だが、高品質の音楽ソフトを聴くと、映画以上にセパレートアンプのメリットが実感できると思う。この曲の再生では、細かい音符が連なる弦楽器の精密な動きと、途中で挿入されるソプラノや合唱の透明感を引き出すことがカギだが、どちらもまったく不安なく楽しむことができた。さらに、AV8003とMM8003の組み合わせで聴くと、舞台の動きとリンクした音楽の躍動感や木管楽器の表情の豊かさにも自然に注意が向いていく。
|