新XTシリーズは、単に外装の生産安定を図ったモデルではない。音質のさらなる向上を目的に、スピーカーシステムとしての構成を根本から考え直している。シリーズ中最も大きな変更が加えられたのが、フロアスタンディング型のXT8である。
XT4はウーファー、ミッドレンジ、ドームトゥイーターの3ウェイ3スピーカーだったが、それが4スピーカーに変わり、ダブルウーファーとなった。ミッドレンジは新たにFST(フィクスド・サスペンション・トランスデューサー)技術によるエッジレスタイプのものを搭載し、振動板にはウォーブン・ケブラーを採用している。
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FSTミッドレンジユニットの構造 |
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本機のユニット構成を確認する大橋氏 |
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ウーファーは130mm径で2基をパラレル駆動する |
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クロスオーバーネットワークには高品位なパーツをふんだんに採用。コンデンサーは独ムンドルフ製 |
ウォーブン・ケブラーは硬化樹脂を埋め込んだ合成アラミド繊維の織布で、防弾チョッキにも使われるもの。B&Wは1974年から一貫して上級機に使い続けている。パラレル駆動のダブルウーファーは5インチ(130mm)のペーパーケブラーコーン。高域を受け持つのは25mmのアルミニウムドームトゥイーターで、ノーチラスチューブローデッド型である。
老婆心ながら説明すると、このノーチラス・トゥイーターはB&Wのスピーカーに搭載されている様々な技術の中でも特に大きな特徴を持つ。ドーム形式の振動板の背後に管楽器のような筒を繋いで、振動板背圧で発生する不要な音のエネルギーを緩やかに減衰・吸収し、音を曇らせる共鳴を最小限に抑えるというものだ。本機はこのユニットをエンクロージャーに内蔵せず、独立して上部に一体化させており、これは800系のオープントップ構造に準じた発想だ。音がバッフル表面に沿ってエンクロージャーのエッジに放射されて位相を乱す、いわゆる回析現象を回避しているのである。さらにこれらのドライバーは、フラグシップである800系用のドライバーを小口径化したものを使用している。
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ノーチラス・トゥイーターの構造図。チューブによって共鳴を抑える独自技術を採用 |
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トゥイーターはエンクロージャーに内蔵せず、本体上部に独立して配置している |
800系に準じるといえば、XT8には前面バッフルに2つのバスレフポートが開口しているのだが、触ってみるとゴルフボールのような無数のディンプルが穿たれている。B&Wのこの「レフレックス・ポート」は無数のディンプルが空気の流れの乱れを減少させ、高音に耳障りなノイズが混入することや、音の圧縮を低減する。
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バスレフポートに穿たれた無数のディンプルが空気流の乱れを整える効果を持つ |
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バスレフポートにウレタン製のポートチューナーを押し込むことで低音のチューニングを行える |
なお、このポートに発泡ウレタン製のポートチューナーを押し込むことで、低音のチューニングを行うことも可能。ダブルウーファーになり低域の再生能力が上がった分、XTを置く環境によっては、低音が過剰になることも考えられる。このチューナーは中央部分が抜けて竹輪のようになるので、2つのポートにこれをそれぞれ「使わない」「使う」「真ん中を抜いて使う」、つまり9通りの低音のアレンジができる。
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