新製品批評
Phile-web >> 製品批評 >> ECLIPSE TD Lulet


ボーカルの弱音や繊細感を全くおろそかにしない
「Sabia」chie
VACL-0003
ビデオアーツミュージック
\2,854(税別)

「307」2本とタイトでハイスピードなサブウーファー「316SW」が織り成すサウンドはキビキビとして爽快。まずCDをかけよう。chieの「Sabia」だ。すっきりと淀みのないボーカルである。ボサノバのリズムが目の前をすり抜ける。軽々としたニュアンスで再生され感触はとても心地よい。ジャケット写真のまま……、そうブラジルの白い砂浜が目に浮かぶような音の景観である。これがゴスペラーズの「アカペラ」になると、5人の掛け合いやハーモニーが空気のように広がり、漂うような音場感を醸し出す。2チャンソースとは思えない音場の深さや立体感も、TDスピーカーならではのものだ。

このボーカル2枚ですぐにわかるのは、弱音や繊細感がおろそかにされずしっかりと聴こえてくることだ。応答の鈍いスピーカーなら作られた響きによって、音楽の微妙なところがマスクされるだろう。あるいは濁ったりにじむ。その感じがまるでなく、伴奏ギターや管弦楽まですべてがクリアーに感じられるのである。S/Nの深さは絶妙だ。


楽器音の生々しさを正確に再現する

ジャズ、フュージョンは大音量のビッグバンドは少々苦手だが、それでもふだんの家庭での使用には差し支えない。ご機嫌なのはトリオやアコースティック系のプレイだ。ドラムの皮の質感や、シャ〜ンとくるシンバルの波面。ウッドベースの指のかかる感触やはじける感じなど、おそらく生楽器に親しんでいる人ならポンと膝をたたく納得の生々しさである。そしてエンヤの「ザ・デイ・ウイズアウト・レイン」だ。こうした多重録音ソースは、妙にエコーがかぶって明瞭度が悪くなるものだが、それが反対。きれいに分離、きれいに空間融合。その調和がとにかくすばらしい。エンヤがひとつひとつの音階の積み重ねを大切にしてアルバム化していることもしっかりと伝わるし、ミュージカリティ豊かな表現力とはこういうサウンドであろう。

 

オーケストラの臨場感も十分堪能できた

最後にクラシック系は、Luletの品位がまさしくピタリである。ピアノの澄んだタッチとその余韻の美しさ、あるいは弦、木管の初々しい感触やブラスの表情。弱音域がきれいであるがゆえに引き立つDレンジの迫力など、オーケストラも十分に堪能できた。