新製品批評
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空間再現力の高さは“場の気配”まで明瞭に描き出す
Luletの5.1chセット「307TH」。これとAVアンプ、対応プレーヤーを揃えることで、マルチチャンネルオーディオの再生環境が構築できる

小口径で点音源に近いということは、マルチチャンネル再生にも有利だ。こうして5本のLulet307に囲まれても、音源の位置がそれと気づかないつながりのスムーズさが好ましい。不自然な定位など不要だからである。

SACDマルチやDVDオーディオはボーカル、インストルメント、あるいはシンフォニーなど何を聴いても自然な包囲感やライブ感たっぷりな雰囲気があり、リビングがまさに演奏会場になったかのような錯覚だ。まず「ザ・ルック・オブ・ラブ」だが、ここでのダイアナ・クラールは、リラックスしたボーカルを朗々としたテンポで楽しませてゴキゲン。遠近感が強調されるようなこのソフトにおいても、正面のステージに立つハスキーボイスとリアーまで回り込む楽器音、そして場の気配とのバランスがみごとに保たれる。観客のひとりになったようで、これはちょっと驚く体験だろう。Luletでは実際のスピーカーの位置よりもぐんと深く、広々とした空間再現力が得られるため、一層生々しさが増すわけだ。


スケールの大きな管弦楽も余裕で再生
「シューマン・ロマネスク」
ウラディーミル・トロップ=ピアノ
CD<ARCD-0001> \3,000(税込)
SACD<ARSACD-0001> \3,800(税込)
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確かにブラキシコ・グループの「ライブ・アット・ジャズ・スタンダード」でも、部屋自体が広くなったような印象だ。リアでの拍手や歓声も振り返りたくなるほどリアルだし、アグレッシブでビートの効いたジャズプレイに酔う。2003年最優秀録音の「シューマン・ロマネスク」は、その録音の鮮度を肌で感じとれるほどのスリリングなピアノのタッチが絶妙。打鍵が鋭く、ピークがピッと伸びる。減衰もきれいだ。これぞ生ピアノの音。トロップの深い響きはDSD録音ならではのものだ。また「悲愴」や「幻想」などスケールの大きな管弦楽ものも、意外だがサイズを思わせない余裕の再現性であった。小型スピーカーでも数の力である。だからマルチはよい。TDの性能がより生きてくる印象であり、ハーモニーが混濁せずみごとな透明度と色彩感をもって再現してみせた。