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「P42HHS10」の技術における優位点 執筆:松山凌一
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自然、かつ緻密な映像世界を構築するプラズマテレビ

P42HHS10は、「AVM Plus」というプラズマ専用のフルデジタル・ビデオプロセッサーと、「新ALISパネル」を採用している。では、そのAVM Plusと新ALISパネルが、具体的にどのような映像を作るのか、一例を示す。

まず『恋におちたシェイクスピア』では、非常に細かい細工のある女王の衣装に注目されたい。多くのディスプレイがどろんとした輪郭に縁取られ、ややもするとフリッカー状の不安定な表示になりがちな映像だが、本製品は、その衣装をすっきりとシャープに表示する。『シャンドライの恋』では、つぶれがちであった暗部に諧調があり、かつ、3D-NRの効果も加わって、ざわつきの少ない映像が実現できている。シャンドライの浅黒い肌も表示の難しい映像のひとつだが、色ムラも少なく、偽輪郭も見えにくい。『ことの終わり』の冒頭の雨も雫が失われず、自然だ。

「AVM Plus」+新ALISが高画質を作る

P42HHS10JSの高画質は、富士通ゼネラルが業界をリードすると自負する「AVM」に拠る。「AVM」とは、世界初のプラズマディスプレイを開発し、以来、長い経験をもとに作り上げられたプラズマ専用のフルデジタル・ビデオプロセッサーの名称である。

映像を統合的に最適化する「AVM Plus」により、上記の図のように補正くささを感じさせない輪郭補正が可能となる

一般的なプロセッサー回路においては、アナログ・デジタル変換、インターレース・プログレッシブ変換、レゾリューション変換(NTSCやハイビジョンで入ってきた信号をパネルにあわせて拡大、もしくは縮小すること)、カラーマネージングの処理を順次独立して行うため、必ずしも最良の画質を得られないという悩みがある。輪郭補正ひとつをとっても、拡大処理を行った後に補正をかけたのでは、非常に補正臭の強い輪郭となって、映像のクオリティを損なう結果となる。また、仮にそうした点に配慮したとしても、多くのプロセッサーはCRTディスプレイの偏向周波数変換を目的に作られたものの流用に過ぎず、プラズマの特性に適合させるには非常な苦労を伴う。

プラズマで世界に先駆けた富士通ゼネラルは、そうした様々なことを学んできており、プラズマに特化した専用フルデジタル回路の必要を感じ、その開発を早くから始めたのである。その意味で「AVM」は、必要な変換処理を互いに連携させ、入力信号の解像度、動画と静止画の違いに適応した演算パラメーター、処理手順を制御する回路となっており、同社ではこれを高精細デジタルマルチコンバージョン方式(HDDMC)と名付けている。

なお、このAVMは既にいくつかのヴァージョンを重ねてきており、本製品に搭載したAVMの場合、斜め輪郭の平準化に一日の長があるファロージャのDCDiプロセッサーをHDDMCに組み込み、DVI-D端子をHDCPに対応させ、ビデオデコーダー回路をリニューアルした「AVM Plus」としている。

加えてプラズマパネル自体も高輝度を実現したALISパネルを使用しており、高精細だが明所コントラストに劣るといわれる評価を根底から覆している。諧調表示についても本製品のパネルは10ビット処理を行っており、プラズマでは難しかった暗部諧調について長足の進歩を遂げている。